過去に囚われている三途とそれを見ていい気がしない蘭お話今迄で、俺が手に入らないものなんて数える程しか無くて、『欲しい』と思った物は何がなんでも手に入れなくては気がすまなかった。
それは『物』にしても、『人物』にしてもそうだ。手に入れたいと思った人も、物も、どんな手段を選んででも手に入れた。
それが当たり前だと思っていたし、誰も俺のやり方に口を出すものなんて居なかった。
弟の竜胆さえも、兄貴の俺のやり方に口を挟んだことなんてほとんど無い。
だからこそ今回、初めて簡単に手に入れることの出来ない事実に直面している。
そもそも俺が誰かに恋愛感情を抱くことも無ければ、強い興味を持ったことも殆どなかった。もちろん初めはこの恋愛感情は嘘だと思っていたし、信じてなど居なかった。
しかし、アイツが楽しそうに他人の話をする事も、過去に囚われて涙を流しているのを見るのも無性に腹が立った。
この感情がよくわからなくて、ふと酒を交わしながら竜胆に愚痴ったことがあった。
竜胆はどこか驚いた表情を浮かべつつ「恋でもしてんの?」とからかうように言われた。
俺があんなヤク中に恋心なんて抱いてるわけがない。大体いい年した大人が…?ありえない。しかも相手は男だ。尚更有り得ない…
でも、アイツが他の奴と楽しそうに話すのも、過去に囚われているのを見るのも気分が悪くて、つい手を出した……
アイツは薬キメ中で殆ど覚えてなんてないだろうと思ってたし、別に覚えて無かろうがどうでもよかったんだ。
だから……
「ねぇ、三途…そんなに過去が辛いのなら今だけでも忘れさせてやろうか?」
相変わらず薬をキメてメソメソしてる三途。普段の姿からは想像できないくらいに弱々しくて、少しでも強く言えば簡単に勝てそうなくらい。そんな三途にわざと優しく甘い言葉をかけて近づいて、そっと頬を撫でた後に相手の唇に口付けをした。
驚いた表情をし目を見開きつつも、強く抵抗する様子は見られなかった為そのまま自身の舌で相手の唇をこじ開けると相手の口内へと舌を侵入させ、クチュリと水音を立てながら舌を絡めあわせていく。そこまでされても抵抗する素振りは見せず、ビクリと肩を震わせると甘く鼻にかかったような声が漏れた。相手に抵抗する気がないと分かればそのまま三途の後頭部を手で抑えると自分の方へと引き寄せ、先程よりも深く深く口付けていく。
「んぅっ…ッふ…」
大きく開かれた瞳はキュッときつく閉じられ、目尻には涙が溢れポロポロと零れている。その涙がまるでキラキラと光っているように見えて綺麗だ、なんて思った。