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    ⚔️勝利の厚焼き玉子⚔️

    @bwgenryu

    曲擬の進歩絵や色々ぶん投げる所。自宅の世界観の話やキャラ、キャラにまつわるバックストーリーとか設定多め。
    ※独自の解釈で曲擬をしているため独特な世界観や設定で作ってます。

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    POIPOI 40

    ある目的地に向かうプレアデス号。突然の嵐にリィミンとドランは二人で立ち向かう。だが、リィミンに思わぬアクシデント…。そこへドランはある決意を決めることになる。
    ハラハラドキドキ、そして深まる二人の絆……

    嵐の中の絆遺跡での碑文の謎を解いて数日後。リィミンは四つの碑文のうち二つの場所を特定していた。舵輪を回し舵を切りながら海の上を進む。どちらから先に向かうか迷っている時、舵輪の側に置いてあるストームグラスの結晶が『ある事態』を予測していた。
    「この結晶の形……、嵐の予兆のだわ暴風雨と高波が来る前にドランを避難させないと…先の雲行きも怪しいし、直ぐにでも来そう。」
    航海士としての勘が冴える。その直後、マストの上で見張りをしていたドランが慌てた様子で操舵室に入ってきた。
    「なぁリィ、進行方向の雲が怪しい…。これ嵐の雲か?」
    「ちょうどドランを呼びに行こうかなと思ってた所だったけど…そう、ほらストームグラスの結晶を見て…。この形嵐の兆候なのよ。ドラン、船は大波と風で揺れるけど覚悟は大丈夫?」
    「勿論だ嵐の中の操舵は大変かも知れないけど、僕はリィの操舵を信じるし応援する。なにかあれば僕も手伝うよ。」
    「ありがとう。私もドランが一緒なら頑張れるプレアデス号の船長として嵐なんかには負けないわ」
    強い意思を持ちながらも、リィミンはにこりと笑顔を見せた。ドランは操舵室の中を見回し自分が掴まれそうな所を探す。そうこうしているうちに空は暗くなり、雨が降り雷も鳴り始めた。嵐特有の打ち付ける様な激しい雨だ。風も出てきたのか張ってある帆が「ボッ」と大きな音を立てる。波も次第に高くなる。リィミンは舵輪を左右に回し、船を安定させ航海を続ける。その手には気合いが籠っていた。風は更に強くなり暴風雨となって高波と共にプレアデス号の行く手を阻む。
    「(いつものリィとは違う雰囲気で目付きも必死だ…。嵐の海を渡る緊張感が伝わってくる。命懸けで大変だ。)」
    ドランは壁に張り付き足に力を入れて爪を立て、必死に堪えながら嵐の海の中を必死に操舵するリィミンを見つめる。三方向から見える窓から、次に来る高波を見定め舵輪を回し船を安定させるリィミン。時より歯を食い縛る。約一時間の間緊張感と戦いながら彼女は嵐の海を航行した。額には汗が滲み、前髪が張り付く。突然暴風雨と高波が弱まり、船の揺れが小さくなる。
    「おっ、船の揺れ治まった?」
    「はぁ……、風と波が弱まった?緊張で喉乾いたし、水飲みたいと思ってたからちょうど良かったわ。」
    「リィ、凄く汗かいてる…。僕何もできなくて壁に張り付きながらリィ見てたけど必死だったよ。」
    「ふふ、嵐の航行は何回も経験してるけどやっぱ緊張はするわね。心配ありがとう。」
    リィミンは操舵室の隅に置いてある水の入った小さな樽を取りに行こうと歩き出す。ところが突然の高波にプレアデス号は煽られる。歩いていたリィミンはバランスを崩し転倒、鈍い音を立て床に左肘を強く打ち付けてしまう。
    「おい、リィ大丈夫か」
    心配したドランは、揺れる操舵室を足の爪を立てて転ばない様に彼女の傍へと駆け寄った。
    「ドラン…。心配ありがとう…、私なら、痛っ」
    起き上がろうにも痛みは酷く、苦痛の表情を浮かべるリィミン。再び風雨は強くなり、高波も襲いかかる。
    「…ぐっ、そ、操舵に戻らなきゃ…。舵を切っていかないと…転覆しちゃう…。」
    操舵手としての強い思いが彼女の心を動かす。だが、起き上がれず悔しい気持ちでいっぱいだった。
    「…なぁリィ。リィの代わりに僕が……操舵する。」
    「えっ、ドラン」
    それはリィミンも驚くドランの強き決心だった。
    「わはは、この船はリィにとって大切な船なんだろ?だったら僕がこの船とリィを守りたい」
    「えっ…。」
    ドランの目は何処か優しく、その瞳にはやる気を滾らせ、リィミンを励ます様ににこりと笑顔を見せる。そして彼女の上半身をゆっくりと起こす。
    「……うん、分かったわ。熱意は伝わったわよ。私の代わりにドランに操舵を任せる。私がドランをサポートするわ……ふふ、船長命令、今から貴方をプレアデス号の『操舵手』に任命する」
    「わはは、『操舵手』了解したリィが教えてくれるなら心強い。…んっ、その前に水飲む?さっき取ろうとしてただろ?」
    「うん。…操舵で緊張して喉乾いて飲みたかったの。」
    「僕が取りに行くよ。」
    ドランは立ち上がると、操舵室の隅に置いてある小さな樽を一つ持ちコルク栓を片手で抜いた。それをリィミンの元へ持っていき、左手が使えないリィミンの為に小さな樽を持ちながら少しずつ水を飲ます。
    「…ぷはっ、えへへ、ドランありがとう。とりあえず喉は潤ったわ。」
    ドランに向けてお礼を込めて微笑むリィミン。
    「僕が立つのを手伝うけど大丈夫かい?」
    「えぇ、問題はないわ。」
    ドランは床に膝を付き、肩を貸し彼女の体を支えながらゆっくり立ち上がらせる。二人はそのまま歩き舵輪の前に立った。ドランは不安な気持ちがありながらも舵輪の取っ手に手をかける。
    「…リィ、よろしく頼むよ。」
    「えぇ勿論。私達でこの嵐を越えていきましょ私が風と波を読むからドランは私の言う通りに舵輪を回して」
    「あぁ、分かった。」
    リィミンはドランに引っ付いて右手を背中に回し、彼の上着を握り締める。両足に力を入れ、波の揺れに備える。
    「予定変更になったけど、北東に舵を切ってくれる?」
    「予定変更って?」
    「とりあえず先にこの肘の怪我診てもらいたいの…。骨折はしていないと思うけど心配で…。一番近い島が北東にあって、そこは大きな街があるから病院もあるはず…。」
    「よし、了解そうだよな、僕もリィの怪我が気になるよ。でも治るまでは色々任せてくれ…北東はどっちかな?」
    「今は真西に向かってるから、面舵…右へ回して。この波だから急旋回すると危ないからゆっくり回して。」
    「右だね。了解」
    ドランはリィミンの言われた通りに舵輪をゆっくりと右に回していく。
    「これでいいの?」
    「うん。徐々に船の進路は変わるんだ。大丈夫、私がいるから心配しないで。」
    「わはは、そうだね。リィの言うことは安心するよ。」
    面舵を切りプレアデス号の進路は少しずつ右へと進路を変えていく。高波で揺れる操舵室で嵐の海と戦うドランとリィミン。これ以上船が傾かないよう舵輪を左右に回してバランスを保つように言われたドラン。
    「…なるほど、僕が今まで乗っていた船より操舵は大変だな。」
    彼は今までとは違う船の操舵に始めは戸惑っていたが、リィミンのおかげで驚くべき対応力を見せ慣れていく。緊張感と戦いながら荒波を越え航行していくプレアデス号の前方に大きなうねりが現れる。
    「あのうねり高いわね…。越えなきゃいけないけど船のバランスを保ちながらになるけど、ドラン大丈夫?」
    「リィがいるなら大丈夫だ」
    うねりは速く近付いてくる。遠くで見た目時より高めであり、二人は驚く。するとドランは自分の上着にしがみついていたリィミンを左腕に抱え、守るように自分の胸の中に抱き寄せる。
    「怪我に響いてたらごめんな。あの波を越える時に転んだら大変だと思って…。」
    「ううん、大丈夫だよ。ドランの腕の中…とても大きくて安心するわ。」
    「そっか、わはは。」
    ドランはリィミンを抱えながら右手で舵輪を細かく回し、進路と船を安定させる。うねりが近付き船は波の力で持ち上がる。両足に力を入れ右手に舵輪の取っ手を握りしめ、波による揺れに耐えていた。リィミンも右手でドランの上着を掴む。うねりの頂点を越え、元の海面に戻るとドランは「ふぅー」と息を吐いた。
    「大丈夫だったか?」
    「うん。」
    リィミンを気にかけたドランは安堵の表情を浮かべるがまだ嵐の中。高波と荒波の中の航行を続ける。北東へ進路を変え右手だけで操舵をするドラン。リィミンの言う通りに舵輪を回して約二時間程、波は高いが風は弱まり雲の色がオレンジ色に染まりゆく。操舵室の左の窓から夕陽が射す。嵐の海を『操舵手』として乗り切ったドランは、緊張の糸が切れたのかふらりとその場にゆっくり座り込む。
    「わ、はは…、嵐を乗り越えた…。波は少し高いが風も穏やかになってるぞ。」
    「ドラン……。」
    舵取りの指示をしていたリィミンはドランの頑張りぶりを感じ、涙を浮かべながら抱き締める。
    「……リィ?」
    「…お疲れ様。ドランカッコよかったよ。…私の代わりに操舵手を申し出た時、私とこの船を守りたいと言ったの嬉しかった。」
    「あの時は僕がやらなきゃと思ってたんだ。初めて舵輪を回したけど、リィが傍にいて風と波を読んで指示してくれて安心したよ。…リィは僕にとって……大切なパートナーだよ。」
    「えっ…」
    リィミンを優しく抱き締め、彼女の頭を撫でる。ドランの腕の中でニコリと笑顔を浮かべ一筋の涙が頬を伝う。
    「…そういえば薬箱って寝室にあったよな。リィ、左肘痛むだろ?とりあえず応急措置しよう。」
    「うん。薬箱は寝室にあるよ。ふふ、私の為に色々ありがとね。」
    リィミンを壁に凭らせ、操舵室を出たドランは雨と波で濡れた甲板を滑らないように爪を立て慎重に歩く。船の後方にある寝室に入り、部屋の隅に置いてある薬箱を取りに行く。5分もしないうちに戻ってきて、薬箱から薬草が染み込んだ湿布と包帯を取り出しリィミンの左肘に貼り付け包帯を巻き、応急措置をしていく。
    「んー、ちょっと不恰好だけどできたかな?」
    「ふふ、ありがとう。包帯もしっかり巻いてあるから大丈夫よ。」
    「良かった…。そうだ、外に出て夕陽見ようか?さっき見たら綺麗だったよ。」
    「うん、見てみたい。」
    ドランはリィミンを慎重に立ち上がらせ右手を握り、操舵室を出る。
    「滑ると危ないから気を付けて。」
    操舵室を出て西の方角を見ると水平線に沈みゆくオレンジ色の夕陽が輝いていた。
    「あの嵐を乗り越えたんだね…。私は旅に出て何度も嵐を乗り越えてきたけど今回は心配だったんだ。……でもドランがいてくれて安心したよ。」
    「僕もリィが嵐の中を舵輪を回してる姿を見て、いつもと違う緊張感と勇敢さを感じた…。僕に風や波を読んで教えてくれたリィは凄い航海士だよ。」
    「ふふ、なんだか照れるわね。……ドラン、私は貴方のこと……大好きよ。」
    「リィ……わはは、僕もリィのこと大好きだ」
    オレンジ色の夕陽に照らされながらドランはリィミンを優しく抱き締める。

    その日の夜は波の穏やかな海域まで船を進め停泊し、ドランが夜ご飯を作った。疲れた体を癒す栄養満点の肉料理だ。ドランはニコリと笑顔を見せながらリィミンに振る舞い、彼女は美味しく料理を食べる。
    「…うん、美味しいわ。疲れた体にはちょうどいいわね。」
    「リィに褒めてもらえて僕嬉しいよ。…その怪我治るまで僕が料理作る。」
    和気藹々とした二人の時間が流れる。嵐の航海で疲れた二人はこの日は早めにベッドに入る。

    翌日、停泊していた場所から錨を引き上げドランが舵輪を手に取り目的の島に向けて舵を取る。隣にはリィミンがドランにしがみ付きながら指示を出す。穏やかな大海原を航行した後、目的地である島に着いた。嵐の中を航行したプレアデス号の船体に傷みがないかとドッグに預け入れ、修繕をお願いする。そしてリィミンは街の病院で左肘を診てもらうが幸い打撲で済み、一週間程の安静が必要と診断された。そこから一週間、ドランはリィミンの買い物に付き合い荷物を持って宿に運んだり、自慢の太鼓で演奏を披露し路上ライブで人々を盛り上げてお金を稼いでいた。時よりリィミンも演奏に参加し歌を歌ったりしていた。宿で宿泊している間は湿布や包帯を変えたり、料理を作っていた。
    それから一週間後、リィミンの怪我は完治し、ドッグに預け入れていたプレアデス号の修繕も終わり久しぶりに舵輪の前に立つ。
    「船の修繕も終わったし、怪我も治った…。ドラン、貴方には色々迷惑をかけたけどありがとう。」
    「わはは、リィの怪我が治って安心したよ。僕は大丈夫さ。昨日話したあの事はいいのかい?」
    「ふふ、勿論。船長である私があの時決めたことだからドランは操舵手よ。慣れるまで私が色々教えるわ。」
    「この先も何があるか分からないし、交代で操舵をしていこう。よし、僕は頑張って覚えるぞ、リィ」
    「そうね、よろしく頼むわよさぁ、出港よ。ドラン、錨を上げてもらえる?」
    「あぁ、大丈夫だ」
    錨を上げ、港を出港するプレアデス号。マストの頂上に掲げた縁が焦げた紫色の旗が風にたなびく。久しぶりに舵輪を手にしたリィミンは、操舵手として凛とした雰囲気で舵輪を回し地図とコンパスを見ながら次の目的地へ向かう。そこへドランが操舵室に入ってきた。
    「わはは、やっぱりリィは操舵手が似合う。」
    「あら、嬉しいわね。」
    「ところで次の行く場所…、特定してた場所じゃないけどいいのか?」
    「うん。でも地図で調べたら一つの目的地のルートにもなるし、行こうと前から決めてたの。…………『スカイハイ ビジター』のお墓へ」


    『……これも何かの導きかしら。私は待っている……。』
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