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    ⚔️勝利の厚焼き玉子⚔️

    @bwgenryu

    曲擬の進歩絵や色々ぶん投げる所。自宅の世界観の話やキャラ、キャラにまつわるバックストーリーとか設定多め。
    ※独自の解釈で曲擬をしているため独特な世界観や設定で作ってます。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🐲 ⚔ 🌅 🎶
    POIPOI 40

    森の中でリィミンとドランを待ち受けるのは人間に「憎悪」を抱く青年。それは戦いとなり、ドランが『裏』の力に覚醒し新たな技を繰り広げる。
    そして二人の絆は更に深まり……。
    ドラリィなので"ラブラブ"な展開に♡♡♡

    憎悪打ち砕く竜の咆哮人々が行き交う大きな港街。荷物を積んだ商船や旅客船が波止場に並ぶ。そこへプレアデス号が入ってくる。リィミンとドランは操舵室から出て、波止場にいる人達に縄を投げ船の繋留のお願いを頼んだ。慣れた手付きで波止場の金具に縄を縛り、プレアデス号は小波に揺られながら繋留された。
    「ありがとう」
    リィミンは手を振りながらお礼を言う。後方の船室から荷物を詰めた鞄を背中に背負い、船の側面にある縄梯子をゆっくりと降り桟橋に立つ。
    「大丈夫か、リィ?僕が持つよ。」
    「ありがとう、今回は大丈夫よ。スカイハイビジターの墓からその先の場所へは街や村を通って行くの。宿に泊まるから野営程荷物は少ないわ。」
    「そっか。リィも力持ちだな、わはは。…で、どうやってスカイハイビジターの墓へ行くんだ?」
    「この街から出てる汽車で終点まで乗って、そこから『黒い森』を抜けて幾つかの町や村を通って行くのよ。地図を見るとそんな感じかな。」
    「おっ、汽車に乗るのか⁉楽しみだ」
    嬉しそうにはしゃぐドラン。リィミンはそんな彼に優しい笑顔を見せる。二人は船着き場を後にして駅へと向かう。交易で賑わう街中をはぐれないようにリィミンはドランと手を繋いだ。暫くすると駅に着いた。終点までの切符を二人分買い、売店で小腹が空いた時に食べる軽食や飲み物を其々買って出発を待つ汽車に乗り込んだ。向かい合う様に座り、リィミンは鞄を、ドランは太鼓を下ろし隣に置いた。暫くすると汽車は汽笛を鳴らし動き出す。
    「うぉぉ動いた今回はどんな景色が見れるのかな?」
    ドランは窓に張り付きワクワクしている。はしゃぐドランを見ながらリィミンは売店で買ったサンドイッチを膝の上に置き、一つ手に取っては美味しそうに頬張る。景色を見ていたドランも買った干し肉を取り出し、牙で千切りながら美味しく食べていた。
    「ふふ、ドランはホント肉が好きね。」
    「肉は美味いし力が出る。リィも食べる?」
    「そうね。じゃあ、私のサンドイッチと交換しよ」
    リィミンとドランはお互いが買ったサンドイッチと干し肉を交換し、にこやかな笑顔を浮かべながら食べる。その間にも汽車は走り続け約一時間程で終点の駅に着いた。荷物を持ち、汽車を降り改札を抜けると自然に囲まれた田園風景の広がる小さな町に着いた。
    「んー、いい空気。木が多い町ね。」
    「今までとは違う空気だな。陸にはこんな場所もあるのか…」
    「海も場所によって気候も違うし、陸も気候に違いがあるのよ。これから向かう『黒い森』は冬になると雪が降るわ。」
    「雪この前絵本で読んだよ。へぇ、ここは雪が降るのか」
    「雪が降ると寒いし、歩くのも大変だから暖かい時期に来れて良かった。…えーっと『黒い森』に続く道は…あっ、あれね。」
    二人は『黒い森』へと続く道を進んで行く。町の中では石畳が敷き詰められていたが町を出ると土が剥き出しの道になっていた。静かな田園風景が広がる道を和気藹々と話ながら歩いて行く。時々ドランはリィミンを気に掛け、代わりに鞄を持ったりしていく。遠くの山が見え出す頃、『黒い森』の高い木々が二人の目の前に現れる。「ふふ、そろそろね。」
    リィミンはにこりと笑った。そんな中、道は森の手前にある小さな集落に差し掛かる。何処か長閑な田園風景の小さな集落。歩いていたリィミンとドランに、民家の軒先で座っていた老人の男性が話し掛けてきた。
    「そこのお二人さん、あの森へ行くのかい?」
    「え、えぇ…。この先の街へ行くのに通らなきゃ行けないから…。」
    「……あの森は数ヶ月前からこの辺りでは見かけない食人花が現れてな。迷い込んだ家畜が食べられたり、旅人が襲われ、救出しようとした戦士のパーティ達が食人花と戦い酷い怪我を負ったという話がある。無理して通ることはない。先の街に行く道なら他にもある。」
    「食人花は厄介ね。でも私達は『黒い森』を抜けなきゃ目的地まで早く着きたくて…。」
    少し心配するリィミン。だがドランは強気でいる。
    「わはは、大丈夫。僕がいるどんなモンスターでも僕の『音』と身体能力でやっつけるぞ」
    ドランは自信ありげに牙を見せながらにこりと笑った。
    「そうか…、あの森を抜ける気満々な者は久しぶりに見た。噂では普通ではないレベルの食人花と聞く。…まぁ、気を付けて行きなされ。」
    「気を付けて行きます。情報ありがとうございます。」
    老人の男性は心配そうにしながら、森へ向かうリィミンとドランを見送った。小さな集落を後にして20分程歩くと『黒い森』の入口に着いた。背の高い針葉樹が生えた深い森。真昼の太陽が燦々と降り注いでいるが少し先の道は薄暗く、木漏れ日も僅かに差すだけであった。
    「気を引き締めて行くわよ」
    「おう」
    先程聞いた食人花への警戒を怠らずに気を引き締めて『黒い森』の道を進むリィミンとドラン。ドランは太鼓を左腕に抱え、右手にバチを持ち『音』による攻撃ができるように準備をしている。落ちている枝や落ち葉を踏みしめながら道なりに歩いて行く。約一時間くらい経った頃、小さな崖から泉が湧き出している場所に着いた。二人は一度、休憩を取る為に側にある倒木に腰を掛け、荷物を下ろし泉の水を飲んで喉を潤す。リィミンは革の水筒に水を入れ、先でも飲めるように準備をした。
    「ふぅ、とりあえず一つ目の休憩場所に着いたわね。まだ先は長いし、休みながら進みましょ。」
    「わはは、そうだな。僕も食人花を警戒していたし、少し疲れたなぁ。……なぁ、リィ。」
    「どうしたの?」
    「森の中なのに鳥の鳴き声が聴こえないんだ。僕が住んでた森には普通に鳥はいて賑やかだったし、他の場所でも聴こえてたからさ…。」
    「言われてみればそうね…。こんなに深い森なら鳥がいるはずなのに…変ね。」
    ドランの些細な疑問にリィミンも不思議に思っていた。二人が考えていると、近くの茂みからガサガサという音が聞こえてきた。ドランは咄嗟に太鼓を持ち、臨戦態勢を取る。
    「キューン」
    茂みの中から可愛い鳴き声で鳴きながら、丸い頭に幾つかの太い蔦が生えた植物モンスターが現れた。
    「あら、可愛い。見たこともない植物モンスターね。この森の固有種かしら?」
    リィミンが興味津々に見ていると、同じような植物モンスターが茂みから何匹か現れる。ドランは警戒は解かず、寧ろ妙な危機感を感じ取っていた。
    「リィ、他に何かいる。気をつけろ…。」
    「ん?ドラン⁉」
    茂みから再び音がする。先程より大きな音を立て、大型の植物モンスターが蔓を伸ばしながら二人に向かって来た。
    「なんだコイツ、こっちに来るぞ。気を付けろリィ。」
    「私こそ小さい方に気を取られ…」
    蔓を伸ばした植物モンスターはリィミンに巻き付き、自らの体の方に引き寄せる。そしてその場から去ろうと向きを変えた。
    「えっ、ちょっと……、何?ドラン、助けて!!」
    「リィ…まて、リィを返せ。」
    リィミンを拐った植物モンスターは森の奥へと逃げていく。ドランはリィミンを助けに行こうとすると目の前にいた小さな植物モンスター達が大きくなり、その行方を阻む。可愛い姿から凶暴な姿に変わり、口には鋭く細い牙が並び体から生えた蔦は太く力強いものになっていた。だがドランは臆することなく攻撃の態勢に出る。それはリィミンを助ける為に――
    「相手は植物だけど音は聞こえてるって言ってた。なら、音による攻撃は多少効くかもな…。」
    ドランは右腕に力を込め、バチで力強く太鼓を叩く。体に響くビリビリとした音の振動が辺りの空気を揺らがせる。ドランを足止めしていた植物モンスター達は音の振動で一時的に怯んでいたが、再び動き出すとドランに向かい一斉に突進してきた。動きを見切り、素早いフットワークで躱しながら背後から回し蹴りで反撃していく。足の鋭い爪で植物モンスターの表皮を切り裂く。
    「この数を一人で相手してたらリィが危ない。」
    ドランはリィミンを助けることを優先し、力を温存する作戦を取った。残りの植物モンスターは蔓で攻撃をしようと襲いかかるが彼はひらりと躱し、リィミンが拐われて行った方向へ走り出し、森の中を駆け抜ける。
    一方、リィミンは植物モンスターに拐われたまま森の奥の少し開けた場所に着いた。何とか逃れようともがき続ける。
    「離しなさいよ。私を拐って何するつもりなの?私に何かあったらドランは怒るわよ。」
    リィミンを黙らすかのように巨大な口を開け「シャーッ」と威嚇する植物モンスター。その後何かを呼ぶような鳴き声を出し始めた。
    「…ドロセナか。何かあったのかい?」
    近くの木の上から声がする。5m程の高さから背の高い何者かが降りてくる。 人間に近い姿だが耳は尖り、口には鋭い歯が生え、黒い反転目には緑色の虹彩が怪しく輝いていた。どうやら亜人族の青年のようだ。
    「ははは、人間を連れてきたんだね。生きのいい女だ……。」
    「誰よ、貴方?このモンスターの仲間なの?」
    「あ?それはボクの仲間。ボクはキミを食べたりはしないよ。食べるのはボクの仲間達だ。」
    「な……私、餌にされちゃうの?美味しくはないわよ。それにドランが私を助けにくるわ覚悟した方がいいわよ…。」
    「……ドラン?まだ人間がいたのか…。ならちょうどいい二人とも餌にしてやる。」
    亜人族の青年は呪文を詠唱し魔法陣が幾つか現れる。指を鳴らすと魔法陣の数だけ異形な植物モンスターが現れる。
    「もしかして集落の人が話してた『食人花』って…」
    「ボクらの噂は森の外に広がっているのかい?はは、この森に入ったからには生きたものは仲間の餌だ。」
    鋭い歯を見せながら不気味に笑う亜人族の青年。その時金属を打ち鳴らす様な音が森の中から聞こえてきた。茂みの奥からドランが走ってくる。
    「リィ」
    「ドラン助けに来てくれたのね。」
    「わはは、勿論。」
    リィミンに向けてニコリと笑うドラン。だがリィミンのおかれてる状況に怒りが込み上げてくる。
    「ぐっ……、何の音だ。…それにキミは誰?」
    「僕はドラン。リィを助けに来た。」
    「さっきその女が助けを呼んでた人間か…。いや、キミは人間じゃないな。角と鱗がある…さしずめ竜人族といったところかい?」
    「僕は竜人族の血が入った人間だ。」
    「ふぅん、人間なのに竜人族の血…。つくづく気に入らないよ。」
    「何故よ?ドランは何も悪くはないのよ。もしかして人間が嫌いなの?」
    グッと歯を食いしばり鋭い目付きでリィミンを睨み付ける亜人族の青年。
    「……人間にボクの何が分かるんだい。ボクは人間に村を襲撃されボク以外惨殺されたんだ。それ以来人間には憎しみしか湧かない…。人間の汚れた血が混ざった竜人族なぞ竜人族を汚してるものと同じ。」
    「過去の事件で人間に怨みを持ち続けていたなんて…。でも、人間だって悪い人ばかりじゃないし、それにドランのこと、馬鹿にしないで。」
    「僕もリィに会うまでは島の住民から怖がられていた。けど偶然来たリィは、僕を怖がらずに接して仲間にしてくれたんだ。人間は悪くないぞ。」
    「人間がなんだ…キミ達の話は虫酸が走る。二人まとめて餌にしてくれる。…ドロセナ、その女をネペンテスに入れておけ。」 
    蔓にリィミンを巻き付けたドロセナは、近くで口を開けた巨大なウツボカズラに似たモンスターに近寄っていく。その様子を見ていたドランはドロセナに向かって走り、ジャンプして蹴りを食らわす。足の鋭い爪はドロセナの表皮に深い傷を作る。「ギャ」という鳴き声と共に蔓が緩み、その隙にリィミンはサッと地面に着地をする。
    「よくもボクの可愛いドロセナを…。許せない…、みんなまとめて二人を喰らい尽くせ」
    周りにいた巨大食虫植物モンスター達がドランとリィミンに襲いかかろうとしていた。その時、とてつもない威圧感が空気を変える。
    「なんだ…。あの竜人もどきから何か異様な威圧感が。」
    ドランは深呼吸をし、力いっぱい太鼓を叩く。すると音圧で空気が揺らぎ、亜人族の青年や周りの巨大食虫植物モンスター達が怯む。ドランはリィミンの傍に駆け寄り声をかける。
    「リィ、大丈夫か?」
    「うん。…ドランありがとう……あれ、肩の鱗…逆立ってる?」
    「これか?わはは、リィにはなにも危害加えないよ。僕は怒っているんだ。アイツは僕を馬鹿にした…。」
    「ドランも『裏』になる素質を持っていたのね。ふふっ、私はドランを信じてる。それにあの人には『私のあの歌』は効かない…。」
    「わはは、ありがとなリィ。僕はアイツらをなんとかするからリィは隠れてて。」
    「えぇ、分かったわ。無理しないで…。」
    リィミンはドランを優しく抱き締め、その後近くの茂みに隠れた。ドランの音圧で怯んでいた亜人族の青年はゆっくりと我に返る。
    「(クソっ、なんなんだあれは…。あの竜人もどきの背後にドラゴンの幻覚と威圧感。それにあの音…まるでドラゴンの咆哮だった…。)……ぐっ、なかなか効いたよ、今の音…。キミからドラゴンの威圧感を感じたせいでボクの可愛い植物達が怯えてるよ。ははっ、変わりにボクがキミ達を懲らしめる。…ボクはレプグナ、竜人もどきのキミには負けない」
    レプグナは巨躯を不気味に揺らしながら手を伸ばす。腕から何本もの蔓が伸びてドランに遅いかかる。だがドランはサッと躱す。力強く地面を蹴りレプグナの懐に入ろうとする。だが、地面からトラップの如く別個体のドロセナが蔓を伸ばしドランを捕縛し動きを止める。
    「地面から?何処からでも現れるのは厄介だな。」
    「厄介?それがボクの戦略だヨ。……厄介ナのは寧ろキミだ。“Vix“ヨり厄介だよ、音なんか見えないからネ。」
    「離せ」
    体を巻き付かれもがくドラン。リィミンは茂みの仲間から心配そうに見ている。
    「……あァ、そノ太鼓鳴らサれるトとても厄介。キミノ腕ヲ使えナくしよウか?」
    先程とは違う姿になったレプグナは背中から生えた棘の蔓をウネウネと動かす。その間にもドランは、巻き付いているドロセナの蔓に噛み付くがびくともしない。
    「はハは…、キミの腕ト体は後デ餌になルよ。」
    長く伸びた棘の蔓は鞭のようにしなり、ドランの右肩を狙う。
    『ピシッ…』
    「ぐぁぁぁぁぁ」
    右肩に物凄い衝撃を受け痛みに叫ぶドラン。だが、右肩からは血も出ず、傷一つ付いてはいなかった。
    「なンだと?ボクの蔓なラ人間ノ肩ぐらイ切れるノに…。」
    「…ぐっ、オマエ勘違いした。ハァ…ハァ…、ドラゴンの鱗は、刃物も通さない…。衝撃は凄かったけど、僕の肩は切れなかった…わはは。」
    受けた衝撃の痛みに耐えながらもニヤリと笑うドラン。予想外の展開に歯を食いしばるレプグナ。そこへドランを捕縛していたドロセナの蔓に三発の球が当たる。それは小さく爆ぜドロセナの蔓を落としていった。
    「ドラン、ごめん…。」
    「リィ⁉」
    茂みの中に隠れていたリィミンが何かを投げ、ドランを助けたようだった。
    「貴方を助けたくて出てきちゃった…。今のは『斬撃弾』よ。…肩大丈夫?」
    「ありがとう、リィ‼僕は平気さっ。わはは、リィが助けにくるのは驚いた。」
    「ふふっ、さっき私を助けてく」

    「虫酸ガ走る、二人とモ許さナい…。ははハ、ソうだ…二人に『花束』ヲあげルよ……人間ヲ食らウ花束をネ。」

    怪しく光る緑色の眼光がドランとリィミンを睨み付け、ニタニタと口角が上がる口からは鋭い歯が見える。レプグナは再び呪文を詠唱すると幾つかの魔法陣が二人を囲む様に現れる。指を鳴らすと紫色の花を咲かせた巨大な植物モンスターが現れる。
    「何これ、巨大な花…⁉」
    「たダの花じゃナいよ…。ピングイキュラ…葉ニ触れタら獲物は動ケなくなり、獲物ノ体を溶かス。ははハ、キミ達は囲まレた。ピングイキュラから逃げラれないヨ」
    魔法陣から現れたピングイキュラはジワジワと動き、二人の逃げ場を無くす。その葉からは溶解液が流れ落ち、雫が地面に落ちると落ち葉や枯れ枝が溶けていく。周りを囲まれ、逃げる場所がなくなり戸惑うドランとリィミン。この状況下でドランはあるとっておきの作戦を言い出した。
    「なぁリィ…、この状況から逃げる方法考えたぞ」
    ドランは太鼓を叩き音色を奏でると、奏でたメロディが五線譜と一緒に宙に現れる。それは虹色に輝く不思議な五線譜だった。
    「えっ、これドランの力なの?メロディが形になるなんて…凄いわ」
    「わはは、僕も不思議だよ僕にはまだ知らない力が眠っているかもね。さぁリィ、ここから逃げるぞ!」
    ドランはリィミンの手を握り、現れた五線譜を走り抜ける。ピングイキュラの頭上を越え、少し離れた場所に降りる。
    「またドランに助けられたわね。ありがとう。」
    「わはは、どうってことないさ。…僕はアイツを『気絶』させる…。僕の本当の力、今なら出せる」
    「無理しないでね…。」
    「あぁ。」
    ドランは優しくリィミンを抱きしめ安心させる。そして紅い鋭い眼光はレプグナを睨み付ける。再び太鼓を叩き始める。奏でたメロディは具象化され、音符を描いた虹色の五線譜が縦横無尽に宙に現れる。ドランは五線譜の上を走り出しピングイキュラに近付く。
    「ハはは、自ラ捕らワれにきタのかイ?ピングイキュラ、竜人もドきを喰らウがいい。」
    「わはは、そうはいかないぞ。僕の自在な音楽は僕の力になるさぁ行くぞ」
    ドランを喰らおうとするピングイキュラ達を張り巡らせた五線譜を飛び回り躱しながら、楽しく演奏を始める。ピングイキュラ達は戦意を無くし、ドランの奏でたメロディに合わせその巨体で踊り始める。
    「オい、何ガ起きテいる?ピングイキュラ?…ボクの言ウ事を…」
    レプグナは想定外の事態が飲み込めず唖然としていた。そこへ牙を見せ不敵に笑うドランが走り寄る。
    「…僕はオマエを許さない。リィを危険な目に合わせたり僕をバカにした。人間だっていい奴いるのに……吼えろ『ドラゴン・ロア』」
    力強く太鼓を叩くと周りにドラゴンの咆哮が響き渡る。至近距離で聴いたレプグナはドランの背後にドラゴンの幻覚を見る。
    「うワぁぁ、ボ、ボクが竜人モどきに……。許さナい、許サ…こ、こっちニ来ルな、ドラゴンめ……ボクを食べテも意味ハ無イ……。」
    物凄い音量により幻覚を見たレプグナは気を失い、膝から崩れ落ちる。バタリとその巨体が地面の上に倒れた。レプグナが気を失った事で周りにいたピングイキュラやドロセナ達は魔法陣の中へと帰っていく。辺りは静かな空気に包まれた。レプグナを『気絶』させたドランは無邪気な笑顔になりながらリィミンの元へ駆け寄る。
    「わはは、リィ、やったぞ僕頑張ったよ」
    「お疲れ様…。ドランの不思議な力に驚いたわ。あの時ドランに力強いドラゴンの姿が見えたの太鼓の打音もドラゴンの咆哮そのものだったわ。」
    リィミンは疲れているだろうドランを気遣い優しく抱き締める。
    「…リィのおかげだよ。君を守りたいと思っていたら力が発揮できた。わはは、あの五線譜を走るのは楽しかったよ。またリィと走りたい」
    そっとリィミンの頭を撫でる。
    「ふふっ、そうね。私もビックリしたけど素敵な能力だわ。また走りたいわ。……ねぇ、レプグナが気絶しているうちにあの場所に戻りましょ。」
    「そうだね、荷物を置いてきちゃったし…。」
    「陽が沈む前にこの森を抜けて、宿のある村に着きたいから…。」
    「よし、行こう」
    ドランはリィミンの右手を握るとその場を後にして森の中を走り出す。20分程走ると休憩していた場所に戻ってくる。
    「ねぇ、ドラン、右肩大丈夫?」
    「鱗のおかげで傷は付いていないけど少し痛むかな。」
    「そっか、じゃあ後で薬を塗ってあげるわ。」
    「わはは、ありがとう」
    少し泉の水を飲み喉を潤し休憩をした後、リィミンは荷物を背負い二人は森の中の道を進み始める。何回か休憩を挟みながら陽が沈む前に『黒い森』を抜けた。森に一番近い村で宿を取り、体を休める。戦いでお腹が空いたドランは夜ご飯をモリモリ食べる。近くの温泉で体を癒し、宿に戻るとリィミンはドランの右肩に万能薬を塗ってあげた。
    「…これはどんな傷でも火傷でも治す薬。勿論筋肉に受けたダメージも治るわよ。」
    「わはは、ありがとう。この鱗のおかげでダメージは少し防げたけど痛かったよ。」
    「…無理して戦っていたのね。私の方こそお礼を言わなきゃ。……ありがとう。」
    「リィ…、わはっ。リィも僕を助けようとして道具を使ったのには驚いたよ。僕はリィの強さ、好きだなぁ。」
    「…ん、ドラン⁉……一生懸命私を助けようと頑張ったドランのこと、だ、大好きだよ。」
    リィミンは頬を赤らめドランの優しい紅い瞳を見つめた。
    「リィ…」
    リィミンの青い瞳に見つめられたドランの心が揺らぎ、そっとリィミンと唇を重ねた。
    「……ドラン⁉」
    「ごめん、ビックリさせちゃって…。」
    「ふふ、そんなことないわよ。だって私もドランもお互い…好きなんだから……でしょ。」
    「わはは。あぁ、リィは大好きだよ」
    突然な事で驚くリィミンも優しく微笑む。絆が深まった二人は翌日に備え、その日は早めにベッドに入り、疲れたのか直ぐに深い眠りに入る。

    翌日、いつもと変わらず夜明け頃にリィミンは起きる。体を伸ばしベッドから降りると窓から外を見る。薄紫から青に変わる空にストームグラスをかざした。
    「今日も天気は大丈夫そうね。スカイハイビジターの墓のある場所まであと少し…、ワクワクするわね」
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