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    ぞうに

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    ぞうに

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    こっそり書いてたやつ
    すずちゃんとさらさんのおはなし

    #プリチャン
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    その先の誰かに伝わりますように「身近な人の似顔絵を描きましょう」
    先生は言う。身近な人って誰だろう。答えは明白で、それは紛れもなくまりあだった。
    すずは普段ダンスに打ち込んでいる。クラスメイトからは一目置かれているような状況だけど、そんな感じだから誰も彼も上部の関係だけ。だからすずにたとってまりあは中学校で知り合った人の中では唯一気兼ねなく話せる人だった。出会いこそプリチャンがきっかけであれどあくまでそれはきっかけでしかない。中学校という狭く短いのに無限に感じる世界においてそのような存在がいかに貴重か、1年生である身分ながらよくわかっている。だからこそクラスメイトの顔ではなくまりあを描きたいと思った。しかし、まりあは1つ学年が違う。じゃあどうやって描けばいいんだろう。教科書を見たとしても答えはない。顔の描き方なんて読んでもわからない。人の顔の描き方を知ったところでまりあにはならない。仕方なく頭の中のまりあを描く。意外とすらすら描ける。目は大きく、髪はふんわりと、そうだ、そんな調子だ。できるだけかわいく、かわいく。すると、あるクラスメイトがすずに声をかける。
    「すずちゃん、それ誰?」
    「まりあを描いてるんだ」
    「……あんまり似てないね」
    あまりにもショックだった。すずの中ではこれは立派にまりあなのに、伝わらなかった。自信作なのに!確かに冷静になって見てみるとクラスメイトの言うことは間違いではなかった。まりあはこんな顔じゃない。そこにいたのは目が大きいもじゃもじゃヘアーの何かでしかなかった。そうなると急に恥ずかしくなった。思い切り消しゴムで消したら紙がぐしゃぐしゃになってしまった。ああ、ついてない。絵って難しい。ダンスならなんだって表現できるのになあ。


    放課後、ひとり美術室へ足を運ぶ。似顔絵の続きを描かないといけない。気が進まなくて仕方がないけれど描かないといけないのだ。仕方なくえんぴつを手に取ったところで声をかけられる。
    「すずくん、どうしたんだい?」
    「さら先輩!すず、今授業で身近な人の似顔絵を描けっていう課題があるんですけど終わらなくて……」
    「そうか、ボクも美術の課題が残っていてね。よかったら一緒にやろうじゃないか」
    「はい!」
    さら先輩は絵を取り出す。そこにあった絵はすずの描いた絵とは比べ物にならないくらい上手だった。あんな先輩が空想の世界で煌めく蝶々や熱帯魚と戯れている幻想的な絵。一瞬見ただけでどんな絵かがわかった。伝わる絵だった。美術館に並んでも見劣りしないその絵に衝撃を受けた。そういえば、さら先輩は芸実家一家として有名な緑川家の長女だった。どこまでこの人は完璧なんだろう。
    「先輩、それでまだ完成じゃないんですか?」
    「ああ。まだあんなの可愛さを最大限引き出せていない。学校の課題であれ、緑川家において芸術に妥協や諦めは許されないんだ」
    どこまでもかっこいい。この人には敵わない。すずの絵を見せるのも恥ずかしい。
    「……先輩、どうしたらそんなに上手にかけるんですか?」
    「すずくん、本当は芸術に上手も下手もないんだ。強いて言うなら、なぜそれを描きたいか。それをはっきりすることが大事なんじゃないかな?」
    「なぜそれを描きたいか……」
    「すずくんは似顔絵を描かないといけないんだっけ?」
    「はい」
    「ボクの似顔絵、描いてみるかい?」
    「いいえ!すずはまりあの似顔絵を描きたいんです!」
    「どうして?」
    「それは……。まりあがすずにとっていちばん身近な人で、そして何より魅力的な人だからです。そしてなによりその似顔絵をなによりまりあに見せたいと思ったから、まりあを喜ばせたいと思ったからです!」
    「それだよ、まりあくんを喜ばせたい。その気持ちさえあれば大丈夫」
    思えばすずはずっと課題をこなすことに必死だった。だからさら先輩のいう大事なことを見落としてしまっていた。もう一度まりあを描く。
    「うん、素敵だよ、すずくんの描くまりあくん」
    お世辞に見てもそれはまりあとは思えないものだった。その面白さに思わず吹き出しそうになってしまったけれど、不思議と恥ずかしさはなかった。でも、もっとできる。そんな気がする。誰かを思って描くと不思議と妥協や諦めは許されない、そんな気がしてくる。まりあの魅力がまりあだけじゃない誰かにも伝わるように筆を躍らせ続けた。
    「すずくん、そろそろ帰らなくていいのかい?」
    気付けば時間を忘れていた。もう陽も暮れる頃。
    描いた絵をしまってふたり校舎を出た。
    「さら先輩、本当にありがとうございました。やっぱさら先輩はすごいです、カッコイイです」
    「ありがとう、すずくん。すずくんもすごくかっこいいよ、帰り気をつけてね」
    優しくウインクをするさら先輩。夕陽も相まってなおさらかっこよく、美しく見えて危うく間違った感情を抱きそうにもなった。写真に収めたいくらい素敵だった。やっぱりすずはさら先輩みたいにかっこいい人になりたい。そして、さら先輩みたいな表現力や説得力が欲しい、そう思った。
    まずは、似顔絵を完成させよう。そしてまりあに見せよう。喜んでくれるかな、喜んでくれたらいいな、喜んでくれますように。
    まりあの喜ぶ顔を想像して心を躍らせながら帰途についた。
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    ぞうに

    DONEこっそり書いてたやつ
    すずちゃんとさらさんのおはなし
    その先の誰かに伝わりますように「身近な人の似顔絵を描きましょう」
    先生は言う。身近な人って誰だろう。答えは明白で、それは紛れもなくまりあだった。
    すずは普段ダンスに打ち込んでいる。クラスメイトからは一目置かれているような状況だけど、そんな感じだから誰も彼も上部の関係だけ。だからすずにたとってまりあは中学校で知り合った人の中では唯一気兼ねなく話せる人だった。出会いこそプリチャンがきっかけであれどあくまでそれはきっかけでしかない。中学校という狭く短いのに無限に感じる世界においてそのような存在がいかに貴重か、1年生である身分ながらよくわかっている。だからこそクラスメイトの顔ではなくまりあを描きたいと思った。しかし、まりあは1つ学年が違う。じゃあどうやって描けばいいんだろう。教科書を見たとしても答えはない。顔の描き方なんて読んでもわからない。人の顔の描き方を知ったところでまりあにはならない。仕方なく頭の中のまりあを描く。意外とすらすら描ける。目は大きく、髪はふんわりと、そうだ、そんな調子だ。できるだけかわいく、かわいく。すると、あるクラスメイトがすずに声をかける。
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