狸寝入り『タヌキは銃声などに驚くと気絶してしまい漁師が仕留めた、と思い銃を下げ近づけば目覚めて逃げる。寝たふりをしたタヌキに騙された──』
『事ををやり過ごし騙す為に寝たふりをする。そこから狸寝入りという言葉が出来たと言われております』
カルデア内。藤丸立香のマイルームで本日も道満法師のためになるおはなしが始まる。(笑)
「寝たふりをして相手を油断させて騙しちゃうって事か」
『西洋ではfox sleepという説もありまして、狐は寝たふりや苦しむふりをし、相手を油断させ、だまくらかし、獲物を狙う、とも言われており──』
『そう、狐は狡猾でずる賢く厭らしいモノなのですよ!ンンンン…』
眉間にシワを寄せ道満の顔つきが険しくなる。
(何か雲行きが怪しくなってきたな…)
『だいたいあの化け狐や女狐…』
尚もぶつくさと呟く道満の言葉を遮るように立香が声を上げる
「あっ!せっかくだからお茶にしよう!おやつ貰ってくるね。今日のおやつは何かな~?私がコーヒーも入れてあげるから大人しく待っててね!」
その場を誤魔化すようにそそくさと部屋を出て食堂に向かう立香
(狐って清明さんが狐の子って言われてるからかなぁ?あとはコヤンスカヤの事か…)
そんな事を思いながら食堂でおやつを受け取り部屋に戻る。
「ただいまー、って…」
部屋に戻ってみれば道満がベッドに横たわっている。
おやつをテーブルに置き、道満に話しかける。
「おーい。どうしたの?道満」
道満に近づけばすぅすぅと小気味良く定期的に寝息をたてている。
「え?寝ちゃったの?」
(周回で疲れちゃったのかなぁ…)
道満の顔を覗き込みツンツンとその頬を軽く指で突っつく
──刹那──
ガバリと起き上がった道満に抱き寄せられ身体がくるりと反転しベッドに押し倒される。
「ちょっ…!!」
目前に道満の顔が近付く。
『先程の話にもありましたように獲物を狙う獣を前に油断してはなりませぬぞ、立香』
そして道満にくちづけされる。
「んっ…」
(それって道満がさっき嫌ってた狐の話なんじゃ…)
とは思っても決して口にはしまい。と考える立香であった。
~了~