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    エリンギ猫

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    エリンギ猫

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    妄想の賜物。えっ、こんな文章でいい?

    テイワット応援合戦〜〜👏👏👏雲一つない快晴の下、ジリジリと肌を焼く太陽の光を一新に浴びながら流れ出る汗を乱雑に手の甲で拭った。身に纏った真っ黒な学ランが陽の光を吸収しているような気さえする。

    内側から炙られるような熱に何度目かのため息を吐き出したディルックの隣でガイアの猫目が弧を描く。ディルックと違い比較的熱に強いガイアの額には薄らと汗が浮かぶだけだ。それが腹立たしくて口をへの字に曲げ、心底楽しそうなガイアの顔を睨みつけた。

    「ふふ、そんなに睨むなよ」

    「暑い」

    「俺だって暑いぜ?」

    肩を竦めてケラケラと笑うガイアの髪が揺れる。そもそも夏が大好きな男なのだ。これくらいなんて事ないのだろう。

    「ほら、そろそろ行かないと順番が来るぞ」

    「…分かってる」

    「頑張って、義兄さん」

    ニッコリと音がつきそうなほどの万遍の笑みでディルックの背をガイアが優しく押す。随分とご機嫌な事だ。押されるまま黙って歩き出し、指定の待機場所で合図があるのを待つ。

    ドォン

    辺りに響き渡る太鼓の音が一度鳴り、ディルックは汗で張り付く前髪を掻き上げ、キッと前を向く。どうせやるのなら、本気で。

    ドォン、ドォン

    続け様に2度、太鼓の音が鳴り響く瞬間に走り出した。入場の瞬間から周りの人間は見ているのだそうだ。指定の場所へ立ち、服装に似合わず優雅な仕草で片膝を地面に着き俯く。ガイアはその様をジッと場外から見詰めた。

    太鼓が力強く、その反面軽快な音を刻む。

    ディルックの晒された真っ白な足が敷き詰められた砂利を踏み付け、大きく脚を開き重心を落とす。微塵もブレない背筋が美しかった。
    普段とは違い真っ白な手袋がゆらりと揺れ、鋭い眼光が正面に向けられる。照り付ける太陽の光でルビーのような瞳が煌めいていた。

    脚を振り上げ、拳を前に突き出し、かと思えば優美なほどその手がしなやかに舞う。ふわりふわりと揺れる普段よりも高く結い上げられた赤髪と額に巻いた青い襷からガイアは目が離せなかった。飛び散る汗まで輝いていて、ディルックの乱舞を際立たせる。

    グッと力を込められた右足を軸に左脚が振り上がり、体を捻らせて地面に脚が着く前に右脚もぐるりと回される。それでも体幹の良いディルックの軸はブレない。その横顔は何処までも真剣だ。
    赤い髪と青い襷のコントラストが、少しだけ、ガイアの心を擽る。

    陽射しの暑ささえ忘れて、ただディルックの姿を目で追ってしまうのだ。すると、ガイアの視線に気がついたディルックと目が合う。一瞬きょとりとしたのが分かった。しかし、すぐにフン、となんとも雄臭い笑みを浮かべその視線は正面へ戻ってしまう。

    「……はぁ、可愛い顔してる癖に…」

    なんとも可愛くない男だ。ため息を吐き出して、額に浮かぶ汗を拭った。名残惜しく思いながらもディルックの姿から視線を外し、自身も待機場所へと移動した。


    ⿴⿻⿸


    ぽたりぽたりと落ちる汗を拭う間もなく、ディルックはなんとか踊りきった。着慣れない学ランは伸縮性がなく動きづらいし、裸足で踏みしめる砂の熱さで足の裏がヒリヒリしている。
    先ほど入場した場所へ小走りで戻っていると、少しだけ頬を赤くしたガイアが立っていた。
    すれ違いざまにガイアの髪をくしゃりと混ぜて、その肩を叩く。「うわっ」と声を上げたガイアがディルックを振り返ってジトッと睨み付ける。

    「頑張れ、ガイア」

    ガイアは何も言わずにまた前を向いてしまったが、やはりその顔は少しだけ赤い。ふふ、と小さく笑みを零しながら、唯一日陰になっている木の下に座り込んだ。空気すら暑いが陽射しがないだけでだいぶマシになった。

    ドドド、と地を這うような重低音。ガイアの番が始まったようだった。青い髪をたなびかせて躍り出たガイアを視線で追う。ディルックとは違って立ったまま腕を組み、真っ直ぐ前を向いていた。
    眼帯と前髪でディルックには表情が分からない。

    ガイアは今、どんな顔をしているのだろうか。

    そんなことをぼんやりと考えていると、ガイアがゆらりと動き出した。ゆっくりと片腕を上げ、もう片腕を下げる。見慣れない真っ白な手袋に包まれた指先までもが綺麗に伸ばされている。
    いっそ優雅なほどゆらりゆらりとガイアのしなやかな腕が揺れ動き、次いで勢い良く脚が前へ踏み出された。膝をばねに飛び上がり、閉じた脚をまたしても開く。
    瞬時に脚を入れ替え、その場でくるりと回る。
    その動きに合わせて舞う青い髪と赤い襷を視線で追ってしまう。

    快活に舞うガイアは綺麗だ。

    指先から脚先まで緩むこと無く全身の力の使い方を理解している動きに、ディルックは感嘆した。
    徐にガイアが少し駆けて隅の方へ移動する。
    ディルックが意図を理解し、目を見開いたと同時にガイアの剥き出しの素足がトンッと地面を蹴った。

    器用に空中で一回転、更に一回転に加え身体を捻ることでスピンをかける。

    ようやく見えた空中を舞うガイアの表情は、眉をキュッと寄せながらも楽しげに口角を持ち上げていた。そんなガイアにディルックは心臓を鷲掴みにされた気分だった。あれは、狡いだろう。

    「…空中技が許されるなんて聞いてないぞ」

    額を手でおさえ、ため息と共に独り言ちる。じわりと滲んだ汗がディルックの頬を伝い落ちた。
    またしても見えなくなってしまったガイアの顔を残念に思いながら、活き活きと揺れ動く指先をジッと見つめていた。






    弊ワット旅人「2人とも1位でいいよ……(ギャン泣き)」




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