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    かつら

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    かつら

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    👟のi!b配信に影響されたやつ。
    自己満作品です
    ship要素はほぼ無いです

    美術館で怖い目に遭う🦊👟「私の美術館で最近不審なことが起きるから調査して欲しい」
    そんな依頼が来たのが3日前。
    依頼してきたのは隣街でそこそこ有名な美術館の館長で、どうやら夜な夜な不可解なことが起きているらしい。
    警備員の話によると
    閉館後、展示室から小さい子供のような話し声が聞こえて覗いてみるも誰もいないとか
    ふと通り過ぎる人影は見えるのにいくら探しても誰もいないとか
    極めつけには、展示物がいつの間にか移動しているだとか

    そんなの人が起こしている可能性は低いだろうとか、そんなのそっち系の、それこそシュウみたいな専門家に頼めばいいのにとか、正直思わずにはいられなかったけど、もしかしたら、万が一ではあるが、
    人が起こしているのならば。
    まぁ、ギリギリオレの仕事の範疇ではある。
    誰かの嫌がらせの線も捨てきれないし、かなり報酬もいいからつい引き受けてしまったんだけど


    「……まぁじで…受けなきゃ良かったなぁ…これ……」


    固い床に向かってひとりそう呟く。
    薄暗い美術館で一人歩き回ることがこれ程まで恐ろしいものかとしみじみ思った。
    誰かいるかもしれないって思ってるのもあるんだろうけど、それ抜きでもアホみたいに怖い。今すぐにでも帰りたい。
    でも、依頼はこなさないといけない。
    そんな思考に板挟みにされ、オレは唸りながら、ゆっくり歩を進めることしかできなかった。

    昼間は静かではあるが人が多く賑わっている館内だが、閉館後は恐ろしく静まり返っている。
    なんというか美術品たち特有の圧迫感というか、無機物に見つめられているような
    そんな気さえしてきた。
    時間をかければかけるほどだんだんとそんな恐怖は肥大していった。
    とにかく早く終わらせて早く帰ろう。それがいい。
    足早に歩を進め、館内を見て回る。
    そうだ、なにか歌でも歌えば気も紛れるかも、なんて思って口を開きかけたときだった。


    コツン


    「ぁぉ"っ……!!?」


    突然の物音に爆音の悲鳴をあげそうになるも、手のひらで口を覆い、なんとか押し込める。
    カツン、カツンとリズム良く少し先の曲がり角から足音と思わしき音が響いてくる。
    バクバクと耳に響く心音と地面に繋がったように動かない足。
    震える指先に呼応するようにカチカチと自分の歯がぶつかる音がする。


    ウソだ、なんだ、こわい、だれ、こどもか?、いや、そんなわけ、ちがう、足音が大人のそれだ、でも、警備員かも、逃げないと、ちがう、誰も入れてないって言ってたし、なんで、こわい、どうする、誰か、

    あまりの恐怖に思考も体も固まってしまった。
    しかし、そんなもの知らぬ存ぜぬと足音は確かに近づいてくる。
    逃げるか?でも、もし盗人だったら?迷い込んだ人だったら?
    依頼を達成しないとなんて、こんなところで変に真面目な気持ちが湧いてくるのが恨めしい。
    通路のど真ん中に石像のように固まるオレは、件の主の姿を捉えれば、きっと向こうも自分に気づくだろう。


    コツン、コツン


    長い影が角から見えて、直ぐにつま先が曲がり角から覗く。

    ぁ、やば、オレ、もうダメかも

    全てを諦めかけたとき、それは姿を現した。
    それはひどく見慣れた姿かたちだった。


    「……は…え、……シュウ…………?」


    キョトンとした顔。
    オレを射抜くアメジスト。


    「あれ?ミスタ、なんでここに?」

    「っ、ぅッはぁ〜〜〜〜〜ーーーーー…………!!!」

    「え、なに!?」


    どっと安堵感が押し寄せて、膝から崩れ落ちる。
    詰まった呼吸が再び始まって口から息が抜けていく。
    そんなオレを見て心配そうに駆け寄ってくるシュウ。
    かなり驚いた様子で目をぱちくりさせて、あわあわと俺のそばで立ち往生している。
    そんなシュウを見たらもうダメだった。


    「シュウ"〜〜〜……」

    「えぇ?なに、どうしたの…??ぇ"、ちょっ!?なんで泣くの!!??」


    栓が抜けたように涙が溢れて、恥も捨ててシュウに抱きついた。
    そんなオレを突っぱねることなく、シュウはオレを優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。
    情けないと思わないで欲しい。ほんとに怖かったんだって。こんな状況誰だってこうなる、絶対。
    ほんとに、ほんとに安心したんだ。

    しばらく泣いて落ち着いてから、シュウに事の詳細を話した。


    「なるほど、僕も似たような感じだよ。」

    「シュウに頼めばって思ってたけど、既に頼んでたのか……」

    「うん、いろんな人に依頼してたみたいだよ」

    「ふ〜ん…まぁ、ちょっと怪異的だもんなこの依頼」

    「そうだねぇ。あ、でも、じゃあなんでミスタはこの依頼引き受けたの?」

    「え?あ〜…まぁ、イタズラだったりするかもだし?もしかしたら人が起こしている可能性もあるだろうし」

    「え」

    「え?」

    「………」

    「は?!!え、ちょ、なんで黙んの!?え!?なに?!」

    「いや………気づいてるんだと思ってたよ……」

    「へ?」

    「…あ"〜〜ー……っとぉ……つまり…………
    …僕がここに来てるってことは…ね……?」

    「………………WTF……」


    シュウの顔は驚き半分、同情半分みたいな顔して目を伏せている。
    いや、嘘だろ。俺は信じないぞ。
    だって、普通の美術館だったし。
    美術品も普通だったし、雰囲気だって不気味だけど人がいなけりゃこんなもんかもしれないし
    いや、ほら、もしかしたら子供だまし的な、そういうやつかもしんないし?
    とにかくシュウに聞けばわかるよな、うん、大丈夫
    大丈夫、だい


    「ッミスタ!!!!」


    ガシャンッ!!!


    シュウに呼ばれて顔を上げようとするよりも早く腕を強く引かれ、そのままシュウの胸板に飛び込む。
    そのすぐあと、後方から何か割れたような、そんな音がした。
    恐る恐る振り返るとそこには、粉々に割れた焼き物のような何かが無惨にも砕けた痕。
    あれ、確か、さっき見た美術品じゃないか


    「ミスタ!!大丈夫!!?」

    「ぇ、うん………ぁ……シュウ……」

    「まずいな…僕の存在に気づいたみたい、早く出ないと」

    「え、なに、どういうこと」

    「ここはいわく付きの美術品が紛れてるとかもうそんな程度じゃなくて、この美術館自体が呪われてるの」

    「だから、できる限り刺激しないように呪力を抑えて入ってきたんだけど、さっきミスタを見た時に術式が緩んじゃったみたいで」

    「とにかく、ミスタだけでも急いでここから出ないと」


    焦った様子のシュウに呆気にとられていると、グンッとシュウが俺の腕を引っ掴んで走り出した。
    早口で説明されたけど、つまりそれって化け物の腹の中にいるのと変わりないってことじゃないか?
    そう思った途端、どっと冷や汗が流れる。

    ガシャン!バタン!バリン!

    通り過ぎた道から音が響く。
    後ろを振り向くと絵画や骨董品が俺たちに向かって飛んでくる。間一髪で避けながら走るけど、
    これはさすがにヤバイ、なんて思考が体の動きをどんどん鈍くする。
    恐怖で足がもつれそうになる。
    でも、ギュッと強く握られたシュウの手の温もりがオレを正気に引き戻す。
    ハッとしてシュウの顔を見ると、すごい形相で。
    多分オレを外に出すのに必死なんだと気づく。
    そんなシュウを見ているとだんだんと恐怖よりも
    オレだけじゃだめだ、シュウも一緒に出ないといけないなんて意識が強くなる。
    そうだ、大事な兄弟をこんなとこに置いていっちゃいけない。
    一緒に逃げないと。
    その一心で恐怖を押さえ込み、震える足を動かして出口へ向かう。


    「ミスタ!あそこ、出口だ!」

    「!!」


    走り続けたおかげで、見知った扉が見え始める。
    取っ手に手を伸ばし、扉を開けようとすると、シュウが歩みを止めて後ろを振り返る。
    くそ、やっぱりオレだけ逃がしてここに残るつもりかよ!!!


    「ッ!!シュウも一緒に出ないと!!」

    「ダメだよ!!まだ美術館の呪いは解けてないんだ!僕が残ってこの呪いを解かないと被害者は増える一方だろ!?」

    「でもッ……!!!」

    「いいから!!!必ず僕も無事に外に出る!!だから!!」

    「ッ……!!そんなの信じられるわけないだろ!!!」

    「!!!」

    「いつも無茶ばっかしてんの見てるから、どれがホントでどれがウソかなんてお見通しだっつーの!!」

    「オレは…!!」

    「オレは、シュウだけ置いて逃げるなんてできない!!!」


    バッとシュウを庇うように前に立つ。
    目の前に絵画の額縁が迫ってるのが見える。
    やっぱオレここで死ぬのかな、なんて呑気に思った。
    キィンと、シュウの声が少し遠くに聞こえて、だんだんと目の前に絵画が迫る。
    全てを覚悟してギュッと目を瞑った。


    「ッ!!!!!」


    息を止めて衝撃を待つ。
    が、来るはずの痛みも衝撃も一向にやってこない。
    不思議に思って、ゆっくりと瞼を開ける。
    すると、さっきまで宙に浮かんでいた全ての美術品たちがまるで死んだように床に転がっていた。
    オレは何が何だかわからなくて呆然としていたけど、突然ドンッ!と後ろから予期せぬ衝撃を受けた。


    「う"ぉ!!!?」

    「ミスタッ…!!!!!」

    「ぇ、あ……シュウ」


    そういえばシュウのこと庇ったっけ…
    すっ転ばずにはすんだけど、依然後ろから強く抱きしめられる。


    「……もう二度と…こんなことしないで…」

    「…………それは無理…かも…」

    「…………」

    「いででで!!!!?ちょっ、シュウ!痛いって!!!!」

    「っ……ぐす……ぅ……」

    「え、…ぁ"〜…………」

    「……ぅ"…………すん……」

    「……ごめん……心配かけた……」

    「でも、シュウが犠牲になるの…オレはやだよ…」

    「だから、シュウもあぁいう無茶はもうしないでね……」

    「…………ぅん……」


    一度シュウの腕を解いて、前に向き直り今度はオレから抱き締める。
    ぎゅうっと痛いほど抱きしめられて、体温とかシュウのすすり泣く声とかに安心感とさっきまでの恐怖が全部今追いついてきて
    ボロボロと本日二回目の号泣
    しばらく二人で泣き続けた。

    とりあえず、今回のことはもう大丈夫だろうと、シュウは結論づけたらしい。
    正直なんで、あそこで美術品たちが止まったのかはわかんないけど、オレもシュウも無事だからいっかなんて、呑気に考えながら共に帰路に着く。


    「ふは、ミスタ酷い顔だね」

    「はぁ〜?シュウも同じ顔してるけど?」

    「通行人に痴話喧嘩でもしたのかって思われてるかも?」

    「かもね」

    「ふはは」

    「へへ」


    こんな仕事はもうこりごりだし、出来ればもう二度とお化けやらなんやらには関わりたくない
    けど、シュウと同じ仕事できたのはちょっと嬉しかったななんて


    「……」

    「……?ミスタなんかご機嫌だね…?」

    「……なんでもないよ」


    ま、シュウが無茶しないように見張り役くらいなら引き受けてもいいかな
















    「あ」

    「ん?」

    「そういえばボックスにこれ貰ってたわ」

    「あぁ〜……今度二人でご飯でも奢ろっか」

    「……そだね」






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