流れ交わる「手合わせ?」
それは突然の申し出だった。
遠征を終えて部屋に戻ってきた膝丸に、待ちかねた様子の薄緑が声をかけてきたのだ。見れば非番だというのに戦装束を着こんでいて、すっかり支度を整えていたことが窺える。
「別に構わないが……」
「では、道場に」
迷いなく先導する薄緑は、すでに道場の使用許可も得ているようだった。その準備の良さに、後に続く膝丸は内心で首を傾げる。
彼がこの本丸に来て二年、実のところ手合わせを行うのはこれが初めてだった。もともと薄緑の方が練度が高かったとはいえ、段位は同じ特二同士。今ではその練度差も少し縮まって、薄緑はすでに上限、膝丸も上限まで十を切っている状態だ。
――なぜ今になって、というのが膝丸の正直な感想だった。
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