積もりて傾ぐ「すまない、買い忘れがあった。すぐに戻るから、君はそこで待っていてくれ」
うす青い空がよく見える、冬晴れの昼下がり。膝丸と薄緑は、連れだって万屋街へやってきていた。今日の近侍として買い物を頼まれた膝丸に、非番の薄緑が同行を申し出たのである。
「万屋街には数えるほどしか行ったことがないのだ。よければ同行させてくれないか」
この本丸に来てから今日まで、何度か近侍を任されたことはあったが、万屋街への用を申し付けられたことはなかった。嗜好品の類にも興味がなく、身の回りのものは本丸の備品で事足りていたので、そもそもひとりで行ったこともない。
「いつまでも不慣れなままではいけないと思っていた。それに、荷物持ちくらいはできるだろう」
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