「せーんせ。俺の事好き?」
「ああ、好きだよ」
恋人同士が顔を突き合わせて愛を囁きあう。額に口づけを落としハグなんてものまでしてくる。ああなんて健全で美しい光景なのだろう。片方が椅子に手首を縛られ足首に鎖が繋がれていなければ、の話だが。
椅子自体の座り心地はいい。だが柔らかな生地を張った背もたれに体重を預けようとすれば手首にかけられた手錠が音を立てるのが大変よろしくない。
「アゼム」
「どうかした? あっ、鍵は外さないからな?」
「はぁ……。喉が乾いた」
「うん。冷たいのでいいか?持ってくる」
アゼムがキッチンの方へ向かう足音を聞きため息を吐く。明日が平日なら私の姿が無いことに近所の誰かが怪しむこともあるだろうが、あいにく世間は今日から三連休で、遊びに行っているのだろうと思われるのが見て取れる。
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