秘密〜黒の誓い〜💛🧡バカだと思われるかも知れないけど、今日オレは天使を拾った。
うわーやっぱ天使って全員美男美女ばかりだな…と彼を一目見たとき思った。
天使の象徴とも言える真白い羽と頭上に浮く光の輪。
太陽を連想するほど眩しく輝く金髪、整った顔立ちに澄んだ瞳。スーツの上でもわかる体格の良さと締まってる筋肉に神秘感がある入れ墨。
うわおっp…だ…
ていうかこいつのこのスペックなら絶対ハレムとかできるじゃん?!嗚呼羨ましいーと内心で負け犬宣言をしつつ、まあどうせオレには関係無いけどーと離れようとしている時だった。
「やあ!俺はルカ!急で悪いけど、ちょっと泊まらせてくれない?」振り向けば、そこには爽やかな笑顔をした彼がオレを見つめていた。
元々人見知りだから知らない人から話しかけられること自体は苦手だし、急にそんなこと言われたって困るし応じるわけがない!
…はずだった。
何があった?なんで断らなかった?オレってこんなにチョロいだっけ?
オレは眉間に皺を寄せながらばれない様に何こともない様に着いてくるルカを観察していた。
するとルカはこちらの視線を敏感に気付き、オレに見返してにっこりと笑った。
くそーこれはイケメンバフだ…天使にホロモン付けるなよ…てかオレじゃなくて、女の子に使えや…
つーかこれってオレが天使を拾ったじゃなくて、天使が勝手についてきたじゃん??
確か当時は心の中でめっちゃ愚痴っだけ…と思いながら振り返ってみると、アガスタスにお気に入りのチーズポテチを奪われて仲良く鬼ごっこするルカがそこにあった、が…
「おい!待ってお前らそれオレが食べようとしたやつじゃん!!やめろ!!」
「ふははは!バレたははは!逃げろ!POG!!」
なんやかんやでルカがうちに泊まることはもうすぐ二週間になる。ご覧の様に毎日騒がしいが案外楽しい。
自分もびっくりするくらい、ルカはいい奴だった。気使いがよくて、何より共通の話題が意外に多い、彼といると珍しく笑顔を作る必要もなく自然と笑った、いやむしろめっちゃ爆笑したわ。毎日夜になるまで二人で馬鹿騒ぎした。
こんなに自分と気が合う人と話すのは初めてかも知れない。
でもこの楽しい時間も終わるだろ…
もうすぐにあの日が来るから。
「ミスター!どうしたその服?めっちゃお洒落でPOGだ!黒とは珍しいじゃん?なんかのパーティか?」
「違う!…いや、違わないけど今日はまだ試着だ。」
「大丈夫だで!本当に似合ってる!俺が保証するよ!」
「ありがとうな!…あのさ、ルカ。話があるんだ。」
「ん?いいぜ!どうした?」
「あのさ…オレ、もうすぐ結婚するんだ。」
「結…婚?ミスターが?相手は?」
「まだ顔も会ったことないけど、家が決めたことだから受け入れるしかない。」
「そんな…ミスターはちゃんと好きな人と結婚したいでしょう?!」
「だから断れないってば!できるならそうしてるわ!」
「じゃあこうしよ!家が決めた結婚式までまだ日にちがあるでしょう?じゃあその前にミスターが好きな人を見つけて、結婚式前に結婚すれば良いじゃん!相手は流石に既婚者には手を出せないだろ!」
「婚約者が既婚者…ははっははは!!めちゃくちゃだけどルカらしいな!天才かよ!それ乗った!」
「よし!!じゃあ早速だ!ミスターの好み教えて!」
「はあ?!いや確かに…えっと…急に言われてもなー…まあ、とりあえず一緒にいる楽しい人かな?多少は相手に合わせるつもりだけど共通の話題とか価値観が同じならいいな…スタイルのいい美人ならなおよし!…流石にそんないい相手がいる訳ー」
「俺は?」
「ん?ルカが?…そうだな、ルカと一緒にいるとめっちゃ楽しいからルカみたいな子がいいな!」
珍しく真剣な顔をしているルカを見って、オレは一応ちゃんと考えて答えた。
すると急に引っ張って、反抗する暇もなく、気つけばルカの柔らかい唇は優しくオレのを塞ぐ。
やっと反応できるオレはルカを押しのけた。
「ルカ?!お前なにを?」
「好きだミスター。ミスターのタイプは俺なら、オレと結婚してください。」
「違う!おかしいよこれ…それはきっと何かの間違いだよルカ!お前の好きはダチのやつ、恋愛感情とかそういうじゃあなー」
ルカはまたキスでオレの言葉を塞いだ。
「ミスター、これは紛れもなく俺の愛、ごまかさないで。」
真剣に愛を語るルカの目はもう涙で潤んでいたが真っ直ぐオレを見ずめていた。
「…ごめん、ルカ。だめだ。こんなの許される訳がないよ…」
「…ミスター、それでも俺はおまえを愛していることは変わらない。それだけは覚えてね。」
彼はとっても哀しい笑顔でオレを強く抱きしめて言った。
オレはルカを抱き返すことが出来ず、彼が離すまで呆然と彼の温もりに包まれていた。
「またね、ミスター。愛してる。」その一言を置いて、ルカはオレの世界から消えていた。
同性の親友から急にキスされたこと自体はもちろんびっくりするが、オレが断った理由はそこじゃない。問題はこの話の主役がオレとルカだからだ。
自覚はあった。嗚呼、オレは多分お付き合いには向いていないと。
家事や片付けもろくにできない。
料理は何回かしたことはあるが周りからは不評。
人と長く話すと体と精神にもストレス。
一番の難点は仕事。そんな立派な仕事じゃないけど、自分が好きな仕事だから恋人より優先する可能性が高い。
そんなオレを受け入れるのは神さましかいないじゃない?と思うくらいオレは多分向いてない。
むしろオレなんかが愛されてもいいの?
こんないいことがあるなら、この世はとっくに世界平和だわ!!
要するに、こんなオレじゃあルカには釣り合わないんだ。
あいつはルックスだけじゃなくて、
話せやすいし、とにかく一緒にいると楽しい。
だから「ルカみたいな子がいい」のは本音。
でも「ルカみたいな」じゃなくて「ルカ」なら?オレはルカが好きか?
…もう訳わかんねよ。
ともかく流石にあれは言い過ぎだろと自分も思った。
もっと違う言い方で、傷つかない様にオブラートに包んで…
今さらおせーよ…
これだからオレの側にはいつも誰もいないだよと、また自己嫌悪に陥った。
「ルカ…」
いつも元気よく返事してくれる彼の声はもうどこにも聞こえない。
彼に出会う前大好きだったこの心地良いはずの静寂さ、今はなぜか寂しく感じた。
ルカのことで頭がいっぱいで気づけば結婚式の日になった。
嗚呼、これでいいだろ。これでルカと普通のダチに戻れるから…また会えるよね?
こんな式なんて憂鬱だ…オレは式が始まる前に教会の近くで散歩しようと歩いた。
急に風が強く吹き、思わず目を細めた。
その時一瞬だけ視線の端っこに入ったキラキラ輝く金色の髪がオレの注意力を奪った。
バカな真似はやめろミスターリアス!金髪なんて珍しくもないし、そんな都合よく今日に限って現れるはずがない!
何度も自分に言い聞かせたが、体が自然とその方向へ追いかけて行った。
「ルカ!!!」
「あら?わたしはルーシー、もしかして人違いかしら?」
「…失礼、人違いのようです、失礼しまー」
「お待ちなさい!」
「はい?」
「貴方に一目惚れしまいましたわ。どうかわたしと結婚してくださいまし。」
彼女の金髪は日の光で眩しく輝いでた。
どこかで見覚えのある笑顔で求婚してきた彼女を見て、オレは惑わされたように本来の式を後にして、ルーシーについて行った。