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    ダイエットを始めたアズと健康監視のフロが夜に行ってきますおかえりなさいしてるうちに、アズははっちゃけてぶっ倒れるしフロの世話も雑(大意)になるよねってフロアズ。

    寮長就任前後、ラウンジ開店準備中、VIP部屋、四人部屋なのか二人部屋なのか、調理場の様子、どの段階で学園長を脅したかやらわからなくて話を進められない。ポイピク試そうと思ったらあれこれわからない。公開方法どれがなんだ。たすけてアズえもん。

    フロアズ 『live on a diet of A』 一拍置いてドアノブが回る。暇潰しに開いた雑誌をベッドに押し付け、腕を軸に身をよじって床に降り立つ。裸足を駆ればドアが迎え入れるように開いて駆け寄るフロイドと向き合った。
    「おかえりぃ」
    「ただいま戻りました。また勝手に部屋に上がり込んでたんですね、フロイド」
     首から下げたタオルの端で汗を拭いながら、アズールは諦めた表情で、後ろ手にドアを閉めて微笑みかけた。もはや叱られることのなくなった当たり前が心地よくも、施錠の案配で悟られてしまって驚かせられないもどかしさをも感じて、複雑にため息をこぼしてしまう。

     経営ノウハウを間近に見てきたアズールにとって、店を構えることは魔法を極めるよりも困難で未知が強く、それゆえに開拓ばかりの続くゲームのようで未熟を焦りつつも楽しそうだった。学園長への駆け引きを控えて、卸業者への最終確認、カフェサロンの改築工事の段取り、外注費用と資金繰り、諸々、オクタヴィネル寮は悪戯っぽく騒がしい。
     特にメニューは未だジェイド預かりで止められている。曰く「良家の子息が足しげく通う店に仕上げてこその勝利でしょう」
     提案書とレシピと見積書と料理と請求書がアズールの前を行き交い、ジェイドが気つけの紅茶を淹れ、フロイドが内装の草案に落書きをする日々が続いた。三日前にアズールが暗く肩を落として談話室に来るまで。
    「三百グラム増えてしまいました……」
    「もしや心臓をひとつ増やしたのですか」
    「元の心臓、もう毛の生えるとこなさそーだもんねえ」
     *こぢんまりとソファにかけて頬に指先を添える顔は蒼褪め、少しでも軽くなりたい気持ちの表れか踵を浮かせて床を踏んでいる。にこにこと、けれど目元は計算に焦れつつ、ジェイドが新しいティーキャディーの封を解く。ソファの後ろから頬を摘まみ、振り返る首筋に心地よい強さで指圧を施して、フロイドが凝り始めた肩を開かせる。
     立ち上る軽やかな甘さ、巡る血流、緊張がほぐされていく喜びに、アズールの表情もやや緩む。
    「ここのところ事務作業に忙殺されてカロリーに気をかけてなくて……試食も一皿食べての満足感を確認したり、飲み物との組み合わせをあれこれ試して……」
     半泣きで己の罪を数え上げる姿に兄弟は目を合わせる。
    「食事を摂る時間も惜しんでいたので若干カロリーオーバーした程度でしょう。継続していい生活ではありませんけれど」
    「このままだとストレス過食になんじゃね? 夜中のラーメンとかーホットミルクにロシアケーキとかーキッシュとかフレンチポテトとか」
    「ああ、キッシュは思い付きませんでした。早速明日のランチに作りましょう」
    「ではジェイド。そのキッシュは実食までに材料卸値レシピ販売価格アレルギー表カロリー計算きちんと揃えて企画書を上げてください。石窯をピザだけに使うのは惜しいと思っていたので、店に出せるレベルなら、候補に入れてもいいですよ」
     経営者の威厳が茶化す空気を切り裂き、先程まで泳いでいた瞳が刃の冷たさを宿して爛々と輝いている。真っ向から受け止めてジェイドが口の端を歪める。
    「おや。僕の許で保留されたままのメニューに一品加えるつもりですか? 時間がないのをわかっておいでで?」
    「はっ。まさか採用される見込みのない提案をしたわけではないでしょう? それとも僕がキッシュを前に震えて逃げるとでも?」
    「いいえ。アズールが1ピース試食できるか不安なので先に伺ったまでです」
    「ご心配なく。健康管理も兼ねて軽い運動を始めます。明日のランチを楽しみにしてますね。それではおやすみなさい」
     *足早に自室へ向かった背を見送り、聞こえよがしにフロイドが大きく息を吐いた。
    「なぁぁんで喧嘩買ってんのさあ。アズール泣いちゃうかと思った」
     出しそびれた紅茶のカップを定位置に据え、だらしなく背もたれに抱きつくフロイドの正面半身横に腰掛けて、向けられる呆れた眼差しにジェイドは力なく笑った。
    「現状、食事をまともに摂れていませんし睡眠も疎かになっていて、余裕がないのでしょう。常のアズールならあの程度は挑発とも感じないところですよ。試食は僕が目を光らせるので、フロイド、貴方は生活を見ていてくださいますか?」
    「オレにどーしろっての。子守唄歌えって?」
     適当に言っておきながらそれは面白いかもとにわかに浮き足立つ。
     フロイドの浮わつきを感じ取り、これは一安心と、屈託のない笑みを目元に纏う。
    「よく寝てよく食べよく遊ぶ。僕たちの基本では?」


     小競り合いのあったその晩にはアズールは一日のスケジュールにランニングを加えていた。スポーツウェアを身につけて柔軟を行い、適度なペースで寮周辺を動いている様子だった。かつて運動と食事制限と自己管理で体積を半分に減らした実績もあるので口を出すつもりはないが、そうなれば本当に子守唄くらいしか傍で見張ることもないだろうと、フロイドは退屈の予感に身震いした。
     *しかし三十分後、ぐったりと前屈みで廊下を歩く姿を見かけた。実技以外で走る機会のない体には相当な負担だったと推し量られる歩みに睨まれるほど喜んでしまった。脱水状態の存在を知らない人魚がよく陥る初歩的なミスだ。部屋まで送り、言われた配分で補助ドリンクを作って飲ませた頃には、アズールも自身のミスを笑うまで落ち着いていた。
     *シャワーブースへ向かう足取りが確かなのを見届けてフロイドはその夜は部屋をあとにした。
     翌日、ランチに振る舞われたキッシュはアズールの舌を楽しませ、メニューでも上位の候補に据えられた。昨日の口論は互いを讃える言葉に変わり、夕方の打ち合わせでは、三人が三葉に意見を述べては賛否の交わされる賑やかな時間を過ごしていた。
     *軽い夕食を済ませて課題や予習のために各々自室に戻ったが、廊下の気配でフロイドは外しかけのベルトをそのままに、ドアを開け放った。
    「フロイドっ、驚かさないでください」
    「こそこそ動く気配してんだもん。今日も走んの?」
     首元にタオル、腰にボトルホルダーを着けた、前夜より備えた出で立ちのアズールが、ばつの悪そうに佇んでいた。やましいことはなかろうにと呆れつつひらりと掌を差し出す。
    *「部屋の鍵貸して」
     *居たたまれず俯いていた顔が疑問を向ける。ベルトの金具を鳴らしながら歩き寄り、ウェアのファスナーを開いて、内ポケットに手を突っ込む。
    *「戻るまで待ってるね。眠くなったらベッド使うからいーとこで切り上げてね。はいよーいどん」
     *有無を言わさず見送りもしないフロイドに戸惑いながらも、プレランニングで廊下を静かに小走りで通り抜けた。規則的な足音を耳に、早速襲ってきた眠気を欠伸で逃がして、アズールの自室に侵入する。
     *整頓と雑多が混沌とある。忙しくて片付けもままならないのか、デスク周りはインクの羅列の美しい書類が整然と並んでいるが、授業のノートは予習に備えて開かれた状態で置いてある。制服は掛けてあるがクロゼットが開け放たれていた。
     *ベッドは珍しく整えられていない。きっと最近の朝はぎりぎりに起きて身支度に手一杯なのだろう。その無造作な有り様が自分の部屋と似ていて、フロイドは操られるようにシーツの波へ倒れ込んだ。
     枕に顔を埋める。溶ける柔らかさ。整髪料にはない芳しさ。インクの苦み。染み付いている海の息吹き。布に感じる人魚のアズール。

    「フロイド、起きて」
     肩を叩く手を反射で掴む。掌に指同士が骨ごとぶつかり合う不快な感触。瞬間目覚めて、跳ね起きた勢いで横壁に頭をぶつける。
    「んでぇっ?!」
    「うわ!」
     放さなかったがためにアズールをベッドに引きずり込む体勢になっていた。くらくらと定まらない視界に、怒りを滾らせる剣呑な表情がある。
     
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    DsavvyV

    CAN’T MAKEダイエットを始めたアズと健康監視のフロが夜に行ってきますおかえりなさいしてるうちに、アズははっちゃけてぶっ倒れるしフロの世話も雑(大意)になるよねってフロアズ。

    寮長就任前後、ラウンジ開店準備中、VIP部屋、四人部屋なのか二人部屋なのか、調理場の様子、どの段階で学園長を脅したかやらわからなくて話を進められない。ポイピク試そうと思ったらあれこれわからない。公開方法どれがなんだ。たすけてアズえもん。
    フロアズ 『live on a diet of A』 一拍置いてドアノブが回る。暇潰しに開いた雑誌をベッドに押し付け、腕を軸に身をよじって床に降り立つ。裸足を駆ればドアが迎え入れるように開いて駆け寄るフロイドと向き合った。
    「おかえりぃ」
    「ただいま戻りました。また勝手に部屋に上がり込んでたんですね、フロイド」
     首から下げたタオルの端で汗を拭いながら、アズールは諦めた表情で、後ろ手にドアを閉めて微笑みかけた。もはや叱られることのなくなった当たり前が心地よくも、施錠の案配で悟られてしまって驚かせられないもどかしさをも感じて、複雑にため息をこぼしてしまう。

     経営ノウハウを間近に見てきたアズールにとって、店を構えることは魔法を極めるよりも困難で未知が強く、それゆえに開拓ばかりの続くゲームのようで未熟を焦りつつも楽しそうだった。学園長への駆け引きを控えて、卸業者への最終確認、カフェサロンの改築工事の段取り、外注費用と資金繰り、諸々、オクタヴィネル寮は悪戯っぽく騒がしい。
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