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    まっぴーの残念創作

    @mappitsuki

    久しぶりの創作のリハビリ代わりにいろいろと。

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    【楽の日記 2日目】

    キャラクターを動かしながらのリハビリ2回目。書きながらキャラが勝手に動き出すのは楽しい作業。
    気が向いたら感想とかいいねとかください🙏

    楽の日記 2日目 配属先は西火の地。

     残念ながら東土からは遠すぎるほどに遠い。一年中暖かくて過ごしやすいと聞いているし、かつて送り出した先輩方が何人も赴任している。困ることはきっとないだろうとただ楽観的にそう思っていた。
     そうやって任地へ思いを馳せながら1日馬を走らせているうち昼になり夕方になる。陽も落ちてきたところでようやく文使用の無人宿舎に到着した。荷を下ろし馬を休ませ、まずは宿帳を開く。宿帳には他の文使たちがそれぞれの思いを綴っていたり、誰か宛ての伝言がそれとなく書かれていたりした。その中に目を引く一文を見つける。
    『今年の西火は珍しく暑い。腹を下さぬように』
     日付を見ると数日前のものだ。それは東土へ来るたび僕たちを可愛がってくれた先輩の見慣れた文字に思えた。きっとこれから西火へ向かう僕へ向けての忠告だろうと自惚れながら、僕も宿帳に初めて筆を走らせる。
    『楽は無事に西火を目指しております』
     緊張のあまり出だしの文字が震えてしまったことにふっと笑いがこみあげた。何が無事にだ。まだ1日しか経っていないじゃないか。
     でも自分の足跡を残したかった。僕たちは、僕は文使だ。あらゆる情報を伝え合うことが仕事。そう睿様から教わってきた。無駄な情報などない。無駄かどうかを決めるのは伝える側ではない。伝えられる側だと。僕が無事だと知りたい誰かのためにそう記しておくのは、だから間違っていない。そう言い聞かせながら少し粉っぽい饅頭を水で流し込む。たぶん音兄さんが作ったやつだ。お世辞にも美味いとは言えなかったけれど、僕にはこれは故郷の味だ。また食べられる日は来るだろうか。
     眠りに着く前に壁に掛けられた地図を眺め、明日からの行程を見直す。任地へ一人で移動するのが僕たち文使の初任務。先輩方のお供をしたり、同期たちと集団で宿舎を巡る訓練をしたりはあっても一人は初めてだった。早駆けや野宿はまだしないよう言われている。とにかく無事に確実に任地へ到着することが先決だと。早駆けはできるだろうが、正直野宿はしたくなかった。山狼や盗賊に襲われるのは怖い。身を守るための武術訓練も当然受けてはいるけれど、僕はいつも落第ギリギリだった。
     西火への近道は山越えになる。さすがにまだ一人で山越えをする自信もなかったし北方経由で迂回することにする。出発前からそう決めていた。小さい頃から一緒に学んできた仲間のひとりが半年前に北の関所に配属されたはずだ。顔を見てから西火へ向かうくらい大目に見てほしい。三日も駆ければ着くだろう。
     睿様は言った。
     文使は時に孤独だ。だから辛い時は一歩先に希望を楽しみを持て。時にそれが先に進む力となるだろうと。
     確かに北の関所で友に会えるという楽しみがあれば、初めての一人の夜も少しはましに思える。まだ酒は飲めないけれど、友と杯を交わす夢を見ながら僕は眠りにつくことにした。

     先はまだ長い。
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    REHABILI【楽の日記 7日目】

    いよいよ7日目。本編前のリハビリ、楽ちゃんの日記もラストです。
    幼なじみ颯ちゃんとの不穏な別れですが、ふたりがこの後どうなるか本編でじっくり書いていきたいと思ってます。

    お付き合いいただきありがとうございました😊
    よかったらいいねとか、気が向いたら感想などくれても…!いいんですよ…!
    楽の日記 7日目 睿様の夢が現実のように付き纏う一日だった。あれはただの夢だったのか。あるいは本当にあったことなのか。心配して声をかけてくる颯にも、たぶんまともに返事ができなかったかもしれない。うわの空だった。まだ何日かしか経っていないのに僕は東土が恋しくなってしまったのかな。子供みたいだ。
     颯と二人ひたすら駆け、時々休憩のために馬を降りる。辺りを見渡せる小高い丘の上。小川のせせらぎの心地良い森林。颯は毎回眺めのいい場所を休む所に選んだ。野宿も二日続いたけれど、必要なものはたいてい用意されている。小腹が空けば菓子を、汗をかけば香を焚き込めた手拭いを、夜になれば干し肉と干し果物を、寝る前は風よけの外套を。とにかく颯は僕の世話を焼いた。僕はそんなに頼りないんだろうか。でもそのいつも通りの世話焼きが心地良くて、思えば僕は小さい頃に出会ってからずっと颯に甘えっぱなしだ。もしかしたら年寄りになって文使を引退しても颯は僕の世話を焼き続けるかもしれない。そんなことを考えながらの道中はとにかく楽しかったけれど、それも今日で終わる。今日はいよいよ西火に入る。
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    REHABILI【音の覚書】

    今回は楽の先輩、音兄さんのお話です。
    本編にも登場させているのでキャラ作りのために書きました。
    自分の作品のキャラは全員愛していますが、彼は特にお気に入りのキャラなのでもっと理解してあげたいなと思って。
    楽ちゃんや颯ちゃんよりだいぶ大人なので思考も多少大人…なはず。
    お暇つぶしになりますように。
    音の覚書このところ睿様がどうにもよそよそしく、何か隠し事でもあるのかと不安になることがある。

     しかしながら。世話役が下の者に全てを話す義務も義理もない。本来こちらがいちいち気にかける必要もないことだ。だが、そうとわかってはいても不安になるのは側で仕えているからこそのものだと直感が告げる。尋ねるべきか。気付かぬふりを続けるべきか。その僅かな戸惑いさえ睿様に気付かれていようものだが、お互いあえて普段通りを装う。
     そんな他人行儀を平静で覆い隠したままの日々を過ごすのにももう慣れたものだ。

     その日は楽が西火へと旅立つ日であった。早朝から用意しておいた饅頭を紙で包み、小さかった頃の楽を思い出す。文使の弟子入りは5歳からだが、おそらく楽は3歳かそこらだったのではないか。先輩がどこからともなく連れてきた当時の楽は体も小さかったが言葉もまだたどたどしく、とにかく手がかかる子ではあった。しかし愛らしい顔立ちが幸いしたのか兄姉弟子たちがこぞって世話を焼き、常に誰かしらに手を引かれて過ごしていたものだ。ここへ来る前のことを思い出すのか夜中にわんわんと泣き出すこともあった。そんな時は夜番の先輩に抱かれてあやされていたり、時に睿様に泣き疲れるまで背負われていたりもした。そんな楽を遠目で眺めながら、私も背負う時がきたら子守唄でも歌って庭を歩いてやろうと思っていた。だがそんな日はこないまま楽はどんどん成長していった。他の子供たちと同じように。時は待ってはくれないものだ。
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    REHABILI【楽の日記 6日目/颯の闇】

    楽の日記というタイトルではありますが、今回は楽ちゃんの幼なじみで同期で兄弟弟子でもある颯ちゃんの日記です。楽が思う颯と颯が思う楽のすれ違いが書いてみたかったので。

    本編に直結している内容なので、ひとりで勝手に切なくなってしまいました。今回も暇つぶしになれば。
    楽の日記 6日目/颯の闇 私には自信があった。

     馬術も武術も読み書きも全てにおいて同期たちより卒なくこなせ何でも一番である自信。睿様や先輩方もそのように認めて下さるし、兄弟姉妹たちからは羨望の眼差しを向けられる。いつからなのか。その心地よさに慣れてしまっていたといえば否定できない。だが当然だと思った。事実私は優秀だ。否定できる者がいるか?

     しかし物心ついた頃から私の隣にいた楽は全くの正反対だった。体も小さくて自分たちより少し幼く見えた楽は何をやっても上手くできない。いつも私の後にぴったりとくっついて離れず、何をやるにも見よう見まねで私に食いついてきた。そして人よりずっと遅れて出来た時覚えた時、彼はまず私に報告をしてきたのだ。満面の笑みで。最初は鬱陶しかった。私まで不出来に見えるのではと思った。しかしそれが私の引き立て役になると気付いた時、初めて兄弟弟子としての愛情が沸いた。だからそう割り切ってからは楽の隣はとても居心地が良かった。優越感からだとわかっている。私はなんと狡い男なんだろう。
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