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    まっぴーの残念創作

    @mappitsuki

    久しぶりの創作のリハビリ代わりにいろいろと。

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    【楽の日記 5日目】

    書きたいこととキャラへの想いが大きすぎてなかなか上手くまとまらないつらさ…!
    端々に伏線なども散りばめてあるので、個人的は今後回収していく楽しみができました。

    相変わらずの残念クオリティですが、一瞬の暇つぶしくらいにはなりますように!

    楽の日記 5日目 昨日は颯と一晩焚き火を囲んでの野宿になった。

     別れてからの半年のことをお互いあれも伝えたいこれも伝えたいと、気付けばあっという間に朝方。颯は睿様のことをとても気にかけているらしく、僕は止むことのない質問攻めに次々答えていた。きっと睿様のことが大好きで尊敬しているんだろうなとわかった。僕と同じだ。

     東の空がだんだんと明るくなってきた頃、目に染みるようなその朝焼けに忘れていた眠気が僕を襲った。大きな欠伸と共に颯を見るとはっとした顔をする。
    「ごめん楽。まだ先が長いのに。少し眠らないとだめだね」
    「一日くらい寝なくても平気」
    「だめだよ。少しだけでいいから横になって。見張りは私が」
     早く早くと促され、それならと颯の隣で横になった。
    「おやすみ」
     パチパチという焚き火の音と微かな風の音だけが耳をかすめる静寂に、僕はあっという間に眠りに落ちた。

     夢を見た。
     まだ幼い僕が、理由はわからないけどとにかく悲しくて涙も鼻水もだらだらとただ泣きじゃくっている夢。困ったような顔をした夜番の先輩方が声をかけたり撫でたり抱き上げたりして必死に宥めようとする。でも涙は止まらない。なんて聞き分けのないガキなのかと自分にがっかりする。
     そこに泣き声を聞きつけたらしい睿様が来る。今より少し若い。睿様は何も言わず先輩の一人に布を渡すとそっと僕の頭をひと撫でし抱き上げ背負った。すると先輩が渡された布で手際良く僕を睿様の背中にくくりつけた。まだ泣き止まない僕。隅の方に颯がいる。心配そうにこちらを見ていた。そういえばいつもあんな目をして何か言いたげに僕を見守っていたな颯は。
    「休みなさい」
     睿様は颯にそう声をかけると音もなく静かにその部屋を出る。夜番の先輩が颯の手を引いて寝床へ連れて行くのが見えた。
     睿様はまだぐずぐずと泣き止まない僕の尻あたりをとんとんと優しくあやしながら、ただ黙って中庭を歩いてくれた。睿様の背中のあたたかさと風が頬を撫でる心地よさを感じながら、幼い僕は次第に落ち着いてきたみたいだった。
    「がくはどうしてなくのですか?」
     落ち着いたところでの第一声。我ながらバカみたいな質問をしている。
    「悲しいことがあったのかな」
    「わかりません。でもなみだがでてしまうの……です……」
     語尾が尻すぼみにまた涙声になってくる。お願いだから睿様を困らせないでと強く思いながら拳を握りしめた。いや。これは夢でここに実体はないだろうから握りしめたつもりなだけだけれど。
    「楽の心はきっと人より大きくて人よりたくさんの気持ちをしまい込んでるんだろう」
    「がくはいちばんちいさいですよ」
     睿様はははっと小さな声を出して笑った。
    「そうだな。楽は小さいな。小さいのにみんなと同じように頑張れているから偉いぞ。でも心の大きさは体の大きさとは違うから、もしかしたら一番大きいのかもしれないな」
    「がくはちいさくないのですか?」
     僕のバカみたいな質問はまだまだ続きそうだ。
    「体だってこれからどんどん大きくなるぞ。たくさん食べて学んでいたらすぐだ」
     この頃の僕はみんなから小さい小さいと揶揄われていて気にしていたのを思い出した。だからこの幼い僕は睿様からこれから大きくなると言われて少し気をよくした。あまり期待するなよ。たいして大きくなってないぞ僕は。
    「こころにたくさんのきもちがあるとないてしまう?」
    「たくさんあると心も疲れてしまうんだよ」
    「でもこころとはなんだかがくにはよくわかりません」
    「胸の中にあるから目には見えないが、嬉しいでも楽しいでも悲しいでも悔しいでも自分の気持ちを入れておく宝箱みたいなものだよ。好きな時に入れたり出したりできるんだ」
    「わぁ」
     さっきまで泣いていたとは思えないほど、幼い僕は満面の笑みで感嘆の声を上げた。そして何を思ったのか短い両腕を伸ばし、睿様の首あたりにぎゅうと抱きつき背中に頬を擦り寄せた。赤ん坊みたいなその仕草に我ながら恥ずかしくもなり、だけどとても羨ましくなった。
    「明日は楽に日記の書き方を教えてあげよう」
    「にっきとはなんですか?」
    「その日あったこと見たこと聞いたこと思ったこと。失くしたくない気持ちや心に入りきらない気持ちを書くことだよ」
    「めいにいさんがくれたおかしがおいしかったこともかいていいのですか?」
    「もちろん。美味い菓子のことは特に大事なことだ」
    「えいさまのこともかいていい?」
    「私のこともか?それは嬉しいな」
     そして僕は思い出した。初めて日記を書いた日のことを。睿様が僕に筆を握らせ、一文字一文字根気よく一緒に書いてくれたことを。胸が熱くなり視界が揺らめく。涙のせいか、あるいは目を覚ましかけているのか……

    「ねぇえいさま。こころがないひともいるの?」
     涙も引っ込んで調子に乗った幼い僕に、僕自身はらはらしてしまう。本当ならもっと睿様が喜んでくれるような言葉をかけたいのに。止めようがないもどかしさ。
    「なぜそう思うのかな」
    「きょうきていたひとのことをにいさんたちがいっていました。こころがないからひどいことをすると」
     無邪気にそう言った僕の言葉に睿様の歩みが止まり、軽く後ろを、僕のほうを振り向いた。その表情は空気も凍りつくような見たこともない怖い顔に思えた。
    「みんな心はあるものだよ」
     次の瞬間。
     そう答えた睿様はもういつもの穏やかな睿様の表情に戻っていた。あの怖い顔は見間違いだったのかも。あんなに怖い顔をしている睿様を見たことがなかった。そうだ。たぶん影が差してそう見えただけ。
     揺らめく視界はますますぼやけ出しいよいよ何も写さずに真っ暗になった。睿様はまだ幼い僕に話しかけてくれていたけれど、視界と共にその声もだんだんと小さくなり遠くなっていく。
     らしくない怖い顔の睿様だけが目に焼き付いて離れない。目が覚めるならそれを夢の中に置いていかせて……

    そして夢は終わる。戻らない時間のように。
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    REHABILI【楽の日記 7日目】

    いよいよ7日目。本編前のリハビリ、楽ちゃんの日記もラストです。
    幼なじみ颯ちゃんとの不穏な別れですが、ふたりがこの後どうなるか本編でじっくり書いていきたいと思ってます。

    お付き合いいただきありがとうございました😊
    よかったらいいねとか、気が向いたら感想などくれても…!いいんですよ…!
    楽の日記 7日目 睿様の夢が現実のように付き纏う一日だった。あれはただの夢だったのか。あるいは本当にあったことなのか。心配して声をかけてくる颯にも、たぶんまともに返事ができなかったかもしれない。うわの空だった。まだ何日かしか経っていないのに僕は東土が恋しくなってしまったのかな。子供みたいだ。
     颯と二人ひたすら駆け、時々休憩のために馬を降りる。辺りを見渡せる小高い丘の上。小川のせせらぎの心地良い森林。颯は毎回眺めのいい場所を休む所に選んだ。野宿も二日続いたけれど、必要なものはたいてい用意されている。小腹が空けば菓子を、汗をかけば香を焚き込めた手拭いを、夜になれば干し肉と干し果物を、寝る前は風よけの外套を。とにかく颯は僕の世話を焼いた。僕はそんなに頼りないんだろうか。でもそのいつも通りの世話焼きが心地良くて、思えば僕は小さい頃に出会ってからずっと颯に甘えっぱなしだ。もしかしたら年寄りになって文使を引退しても颯は僕の世話を焼き続けるかもしれない。そんなことを考えながらの道中はとにかく楽しかったけれど、それも今日で終わる。今日はいよいよ西火に入る。
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    REHABILI【音の覚書】

    今回は楽の先輩、音兄さんのお話です。
    本編にも登場させているのでキャラ作りのために書きました。
    自分の作品のキャラは全員愛していますが、彼は特にお気に入りのキャラなのでもっと理解してあげたいなと思って。
    楽ちゃんや颯ちゃんよりだいぶ大人なので思考も多少大人…なはず。
    お暇つぶしになりますように。
    音の覚書このところ睿様がどうにもよそよそしく、何か隠し事でもあるのかと不安になることがある。

     しかしながら。世話役が下の者に全てを話す義務も義理もない。本来こちらがいちいち気にかける必要もないことだ。だが、そうとわかってはいても不安になるのは側で仕えているからこそのものだと直感が告げる。尋ねるべきか。気付かぬふりを続けるべきか。その僅かな戸惑いさえ睿様に気付かれていようものだが、お互いあえて普段通りを装う。
     そんな他人行儀を平静で覆い隠したままの日々を過ごすのにももう慣れたものだ。

     その日は楽が西火へと旅立つ日であった。早朝から用意しておいた饅頭を紙で包み、小さかった頃の楽を思い出す。文使の弟子入りは5歳からだが、おそらく楽は3歳かそこらだったのではないか。先輩がどこからともなく連れてきた当時の楽は体も小さかったが言葉もまだたどたどしく、とにかく手がかかる子ではあった。しかし愛らしい顔立ちが幸いしたのか兄姉弟子たちがこぞって世話を焼き、常に誰かしらに手を引かれて過ごしていたものだ。ここへ来る前のことを思い出すのか夜中にわんわんと泣き出すこともあった。そんな時は夜番の先輩に抱かれてあやされていたり、時に睿様に泣き疲れるまで背負われていたりもした。そんな楽を遠目で眺めながら、私も背負う時がきたら子守唄でも歌って庭を歩いてやろうと思っていた。だがそんな日はこないまま楽はどんどん成長していった。他の子供たちと同じように。時は待ってはくれないものだ。
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    REHABILI【楽の日記 6日目/颯の闇】

    楽の日記というタイトルではありますが、今回は楽ちゃんの幼なじみで同期で兄弟弟子でもある颯ちゃんの日記です。楽が思う颯と颯が思う楽のすれ違いが書いてみたかったので。

    本編に直結している内容なので、ひとりで勝手に切なくなってしまいました。今回も暇つぶしになれば。
    楽の日記 6日目/颯の闇 私には自信があった。

     馬術も武術も読み書きも全てにおいて同期たちより卒なくこなせ何でも一番である自信。睿様や先輩方もそのように認めて下さるし、兄弟姉妹たちからは羨望の眼差しを向けられる。いつからなのか。その心地よさに慣れてしまっていたといえば否定できない。だが当然だと思った。事実私は優秀だ。否定できる者がいるか?

     しかし物心ついた頃から私の隣にいた楽は全くの正反対だった。体も小さくて自分たちより少し幼く見えた楽は何をやっても上手くできない。いつも私の後にぴったりとくっついて離れず、何をやるにも見よう見まねで私に食いついてきた。そして人よりずっと遅れて出来た時覚えた時、彼はまず私に報告をしてきたのだ。満面の笑みで。最初は鬱陶しかった。私まで不出来に見えるのではと思った。しかしそれが私の引き立て役になると気付いた時、初めて兄弟弟子としての愛情が沸いた。だからそう割り切ってからは楽の隣はとても居心地が良かった。優越感からだとわかっている。私はなんと狡い男なんだろう。
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