猫のような男たち①ペロ、と、肩の後ろ側を舐められて目が醒めた。
柔らかな唇が、優しく肉を食む。唇でやわやわとはさまれて、ちゅ、ちゅ、と、吸い付かれる。時々軽く歯を立てて、滑らせるように甘噛される。
ごつごつとした大きな手は、俺の腹の傷のところを撫ぜている。べつに、労っているわけではないように思う。ただそこに皮膚の他の部分とは違う凸凹があるから、その皮膚と別の平らな部分の感触の違いを楽しんでいるのだ。やらしい触り方ではない。探究心旺盛な子供が、飽きるまで同じことを繰り返しているような。
まるで、母猫の乳を吸いたがる子猫のようだな、と思う。子猫はとても執念深い。自分の食欲が満たされるまで、執拗に母猫の乳をまさぐり吸いつづける。俺はそんな母猫の苦労を思いながら、己を後ろから抱き込むようにして褥に横たわっている。ただ、相手のするがままに、その行動に身を任せている。
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