ifififiif「始音くん、受け取って下さい!」
女の子が綺麗にラッピングされた箱を俺に差し出してきた。
今日はこれで四回目だ。
バレンタインデーという日は、去年まで縁の無い催し事だった。
しかし去年、何となくメイコと参加したら一定期間限りの文化祭の出し物の為のバンドに参加して、大人数が見つめる体育館のステージに立った以降、よく女の子に告白されるようになり、バレンタインデーもこんな感じにチョコレートを贈られる。
その度、大好きなあの子の笑顔が頭の中に過ぎる。
「悪いけど、俺、恋人いるから、受け取れない」
胸をギュッ、と締め付けられる感覚に耐え、偽りなく断れば、女の子は一瞬顔を歪ませたが、無理して笑顔を繕った。
「ううん、平気、えっと、彼女って咲音さん?」
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