とんだ闇夜の烏撃ち 暗澹たる夜空は、多く鳥目のリト族にとっては憂鬱なるものだが、リーバルにとってはそうではない。
正確には、リーバルのよく知るリトの戦士にとっては、だ。
その男は、夜の青い闇を指して美しいとさえ言う。そのことを聞くとき、リーバルは胸のあたりがうずくような感覚を覚える。苦々しいものと心地よいものと、行き来するような不思議で落ち着かない心地がするのだ。
飛行訓練場のバルコニーから、リーバルは暗い夜空を見上げて、ふっとそんな男の言った言葉を思い出していた。
『リーバル様の翼は夜の色に似ています』
リーバルは夜がどんな色をしているのか知らない。けれどそんな見えない夜が、美しい色をしているらしいことは、その男の言うとおりに信じていた。
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