この肉体で動き出す以前のことを、オレはあまりよく覚えていない。
そのくせに、もう手の届かぬものと振り切ろうとすれば、その記憶は立ちはだかる。
無関係な時代の事情で困らされたら嫌だろう、と逃げようとした。
「それは、お前の顔を見るのに体は邪魔だっつって、首だけ持ってくみたいな話じゃねーか」
よくわからない例えで反論され、逃してはもらえなかった。
胸と頭と目の奥が痛くて、少しクロウが嫌いになった。
城の頂点、屋根の先。
王の名に相応しき威厳を纏い、夜に君臨する。
クロウ。
オレの主。
幼き父にして、孤独な我が子。
今夜もご機嫌な様子で、先日手に入れたばかりの『あいぼう』を掻き鳴らしている。
昼間に戦闘があった。
時々、よくわからない理由で侵入してくる輩がいるのだ。
1363