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    アスカ

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    アスカ

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    五夏/悟がマウントをとる話/高専/付き合ってはいない/悟(→→→)傑

    #五夏
    GoGe

    全力マウント 少し明かりを落とした寮の部屋のなかで、悟はおもむろにポテトチップスに手を伸ばし口に運んだ。視線はテレビに向けたままだ。画面はアクション有りミステリー要素有りぶっ飛んだ設定もうまく生かしていると話題になったエンタメ映画が山場を迎えていた。
     果たして主人公達は危機を乗り越えられるのか。ついに追い詰めた犯人の正体は一体、という手に汗握るシーンだ。いままさに、というシーンで、こつんと左肩に衝撃があった。小さな画面に釘付けになっていたため反応が遅れてしまったが、え、と思いながら悟が思わず隣を見れば、しなやかな黒髪があった。
    「え……傑?もしかして、寝た?」
     絞られた音量で声をかけてみるが、案の定返事はない。そっと顔を覗いてみると、瞼はぴったり閉じられ、傑は穏やかな寝息だけを繰り返していた。傑が寝ている、と認識した途端、悟の心臓はどくどくどくと馬鹿みたいに速度を上げていく。
     傑の寝顔を見たことなど、数え切れないほどある。一緒にゲームをして寝落ちしたこともあるし、移動車のなかでも傑はたまに昼寝をしていた。それなのに悟が自分でも驚くほど動揺しているのは、こうやって悟の肩によりかかるようにして傑が寝たことなどいままで一度もないからだ。
     よくわからない感情が腹の中をぐるぐるとして、吐き出したくなって、けれどどうしたらいいのかわからない。衝動のままに傑のことを抱き締めて、ぐりぐりと顔をいじってやりたい。傑が起きてしまうのが勿体ないので絶対にやらないけど。
     本人の意志に関係なく自然と緩んでいこうとする表情筋を引き締めるように、ぐっと力を入れる。おかげで変な顔をしている自覚があったが、誰も見ていないのだからいいだろう。
     映画はいつのまにか終わったらしく、小さな画面はエンドロールが流れていた。犯人どうなったんだろ、だとか、傑が見たいって言ったからレンタルしてきたのに、だとかを思わないでもないけれど、それよりも悟はいまのこの貴重な時間を大切にしたかった。
     見たかった映画の最中に完全に気を抜いてリラックスして、悟の肩にもたれかかって眠っている。信頼しているのだと、行動で示されている。その事実に悟の心臓がきゅうきゅう鳴って眩暈さえしてきた。なんだこれ。
     傑を起こさないように慎重な動きで、悟はテレビを消した。映画はまた見れば良い。
     悟がもう一度横目で傑を確認すれば、難しい顔をしていることが多い傑が穏やかでリラックスした顔をしていた。気を許していますと、表情と寄りかかる重さが言っている。
     傑が自然と起きるまで、このままいてやろう。俺って超いい友達。逸る心臓の音を聞きながら悟がそう思った瞬間、携帯電話が震えた。悟の物ではなく、傑の携帯だ。
     見ようと思ったわけではないが、そのへんに無造作に置かれていたため、自然と目に入った。ディスプレイに表示されたのは知らない人間の名前。長いバイブレーションは、どうやらメールではなく着信のようだった。
    「…………」
     傑には傑の交友関係があるのはわかるが、なんとなく面白くない。緩んでいた自分の表情が、徐々に強張っていくのがわかった。画面睨み付けて名前を記憶したところで、着信は途切れた。
     ふうと細く長い息を吐き出す。すこし、緊張していたのかもしれない。
     肩にかかる重さに変化がないことを感じながら自分の携帯を目的もなくいじっていると、傑の携帯がもう一度震えた。さきほどと同じ名前がディスプレイに表示されている。
    「………………」
     傑のことを確認すれば、まだ静かに眠っていた。一定のリズムでやわらかな寝息が繰り返されている。よっぽど疲れていたのか、思った以上に深く寝入っているらしい。
     傑は疲れている。眠っていて起きない。けれど電話が鳴っている。悟の知らない人間からの着信。ぐらぐら煮える、謎の感情。
     魔が差した、のだと思う。悟は肩を動かさないように腕だけで傑の携帯をたぐり寄せると、迷うことなく着信のボタンを押した。
    「もしもーし?だれー?」
     声量を落としながらも、絶対に傑がしないような語尾を上げた話し方で問いかければ、電話の向こうで戸惑った空気を感じた。
    「え、間違えた?これ夏油のじゃ?」
     聞こえたのは同じくらいの年であろう男の声。相手が誰かは知らないし、誰でもいいけれど、傑のことを夏油と苗字で呼んでいるのだと知ってにんまりと口角が持ち上がった。
     もう一度眠る傑を確認する。起こさないように静かに、しかし確実な動きで悟は傑の腰を抱き寄せると、抵抗することなく悟に体重を預けてくる。心地よい重さだ。
    「傑なら、俺の隣で寝てるけど~?」
     一切の誇張がない、純然たる事実だ。けれど、その事実を突きつけただけで心臓のあたりに巣くっていた重たいものが、すっと消えていくのが自分でもよくわかった。むしろ気持ちいいまであった。背中がぞくぞくする。なんだこれ。
     電話の向こうで、息を飲んだ音がした気がした。また連絡すると口早に電話の男は言って、通話は切れた。傑はまだ眠っている。
     いったいなんだったんだとは思ったが、通話が切れたならそれでいいし、もう着信もないだろう。
     いまだに寝息を立てている傑のことを見ながら、悟はいつもより早いリズムを刻んでいる自らの心臓の音を聞いていた。



     しばらくして起きた傑は、携帯を確認するなり難しい顔をして「なにか言ったか?」と詰め寄ってきた。悪いことをしたとは思っていない悟は、素直に言った。
    「傑は俺のものってこと」


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    「なのに、なんで一緒にいるかねー。」
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