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    たんごのあーる

    遅ればせながら、久方ぶりに沼入り。
    夏+五。幸せだったら、それでいい。

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    たんごのあーる

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    「君と羊と青」

    呪専に入学したての、さしす。前向きな青い春を書きたかった。あと、爺や。
    BGM:RADWINPS/君と羊と青

    #腐術廻戦
    theArtOfTheRape
    #さしす
    point
    #夏五
    GeGo
    #五夏
    GoGe

    正直、呪術高専なんて行きたくなかった。学ぶ、なんてことが必要だなんて思えなかった。事実、呪術なら誰にも負けない自信はあったし、机にかじりついて勉強なんてかったるい。どう考えても、群れて囲われているだけのあの場所に行く意味があるとは、とても思えなかった。でも、爺やが文字通り泣いて頼むから、まー行ってみるか、嫌ならすぐに辞めればいいし、ぐらいの気持ちだった。
     入学式にいたのは、小柄な女が一人と変な前髪のデカい男が一人。
    「変な前髪。」
     と思わず口に出したら、
    「これだから、お坊っちゃまは。口の聞き方も知らないのかい?」
     と、売り言葉に買い言葉、挙げ句の果てに大喧嘩になって、教室を半壊させて大騒ぎになった。で、早速初日から夜蛾先生にがっつり怒られた。もちろんしばらくお互いに口もきかなかった。
     
    「なのに、なんで一緒にいるかねー。」
     校舎の屋上で、硝子が煙草片手に俺を見上げる。昼休みに決まって喫煙している二人を見つけてからは、置いてかれないように、もしくは先回りしてここに来る。右手側に傑、左手側に硝子、真ん中に俺、が定位置となっていた。
    「ほんとだよ。煙草臭いの嫌だー、とか言うくせに。一服すれば戻るんだから、教室に居ればいいのにね。」
     傑も咥え煙草でチラッとこっちを見る。
    「俺だけ仲間はずれにしよーったって、そうはいかねぇからな。」
    「いや、答えになってないから。さびしんぼか。」
     呆れたように俺とは反対側を向いて煙を吐き出す傑の横顔は、いつの間にか見慣れた表情のひとつとなっていた。
    「ソイツと会話出来ると思ったら大間違いだぞ、夏油。小学生でももうちょいマトモに返事ができるのにな。キャッチボールどころか、打ちっぱなしだから。」
    「あぁそうだったね。でも、それだと小学生レベルっていうより、ただのオヤジじゃない?」
    「誰がオヤジだ、俺みたいなグッドルッキングガイ、目の前にして。」
     学校が始まって、まもなく一ヶ月。
     くだらない話をしながら、三人でいることにも馴れてきた。学生生活は始めてみれば思っていたよりも、いや思っていた以上に楽しいものだった。傑も硝子も、歯に衣着せぬ物言いで、今まで周りにいた奴らとは全く違っていたし、垣間見たそれぞれの実力も、特異な、あるいはたぐい稀なる能力で、俺の興味を惹き付けていた。
     ここに来るまでは、本当に退屈な毎日だった。言葉にしなくても、欲しいと望めばどんなものでも大抵は手に入ったけれど、気まぐれに手に入れたモノは、すぐに飽きて放り出した。媚びへつらい、愛想だけの付き合いばかりで、周りの大人たちも腫れ物にさわるように接するだけ、あるいは下らない下世話な話を吹き込んでは袖を引く連中もいた。心も身体も疲弊し過ぎないよう、そんな関わりから一線をひいて過ごしてきた。
     けれど、知らない事がまだまだあることを知った。知ることを、覚えることを今は楽しいと思う。何かに期待する事を覚えた。名前を呼ばれることを、そして、呼べば応える声があることを、嬉しいと思った。心から笑っている自分がいた。白紙だったページにどんどんと色が増えていく。毎日が、毎分毎秒がなんだか楽しくって仕方がない。
     
    「悟、今日はずいぶんと機嫌がいいね。何かあった?」
    「にやけた面してんぞ、五条」
     いろいろ考えてたら、硝子にも突っ込まれるぐらい、顔に出ていたらしい。
    「やー、別に何もないけど、もうすぐ交流会だなぁ、って。ねぇ、どこで何すんだっけ?」
    「悟、昨日の夜蛾センの説明聴いてなかったのかい?」
    「別に俺が聞いてなくても、傑が聞いてるだろ? 何にも問題なしっ。それより俺の足、引っ張んなよ。」
     煙草を吸い終わった傑の肩に、頭を預ける。
    「お手並み拝見、ってとこだね。悟こそ、足元掬われないように気をつけなよ。」
     にんまりと笑う気配の傑に、むぅ、となるけれど、自分よりも肉厚な大きな手に頭をぽんぽんとされると、モヤモヤとしたものは、どうでもよくなって、やっぱりなんだか愉しい。
    「だから、私はなんで四六時中一緒にいるのか、って聞いてんだけど。」
    「それは『友達』だからじゃない?」
     傑が事も無げに言う。硝子は心底イヤそうな顔をした。
    「誰が? 誰と? お友達?
     だとしたら、そっちのその距離感、バグってないか?」
    「そうかなぁ。」
     二人で顔を見合わせて、笑い合う。
    「とりあえず天下無双、だな。」
    「何が?」
    「俺たちが。」
    「何の話?」
    「これから、の話。俺達最強! ってこと。」
    「つまり?」
     
     雲ひとつない穏やかに晴れた青い空の下、爽やかな風が髪を揺らす。
     今は何でも出来る気がしていた。世界を変えることだって出来そうだ。
     何があったって大丈夫。
     さあ、お楽しみはこれからだ。
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