大切な人「マスター!!」
ガルの視線の先には、夥しいほどの血を流して倒れ込むエイトの姿があった。慌てて駆け寄ろうとするガルの前に、大きな熊の魔獣が立ちはだかる。
「くっ……!」
魔獣が腕を振りかぶった。鋭い爪が空を裂き、既のところでガルが飛んで避ける。
小柄で俊敏なガルにとって、避けるだけなら問題はない。しかし、今は一刻も早くエイトのもとへ辿り着かなければならなかった。なんとか進もうと焦るガルの行く手を魔獣が阻む。
「マスター……!」
魔獣の攻撃を避けつつ、エイトの様子を確認する。……いない。いつの間にか、倒れているはずのエイトの姿が消え、ただ大きな血溜まりだけがそこにあった。
「え、マ、マスター!?」
エイトを襲っていた魔獣が、こちらを向く。その太い爪にはエイトの服の切れ端と、血液がこびりついていた。それを見た途端、ガルに衝撃が走る。頭から冷水をかけられたような感覚に、無意識のうちに全身が震えた。
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