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    Traveler_Bone

    骨。

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    POIPOI 42

    Traveler_Bone

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    休日が出来て、
    色んな所に旅をすることにした旅骨のお話。
    そこでは、様々な人との出会いがあって...


    友情出演(敬称略)
    1d,ヤコフ先生(かったん)
    2d,文月先生(文月)
    2d,葛谷先生(  )
    3d,シアン先生(夜色シアン)
    4d,リク先生(リョック)
    4d,あめ。先生(あめ。)
    6d,コン先生(コン)
    7d,白角ロリ(白角リリ)

    旅骨の旅<一日目>
    ...昼の騒ぎから逃れて。
    すっかり日が暮れ始めて...ようやく、旅を始める。
    まさかああして襲撃が来るとは予想していなかったが...
    ...まあ、予定がすべて潰れたというわけではない。
    今は夕方。
    今から行くとして、一番良いのは...
    ...レッドウィンターか。
    まあまあここから遠いレッドウィンターは、
    到着するころにはちょうど夜...いや、深夜に近いだろう。
    いつもは賑やかなレッドウィンターだが...
    夜らへんであれば、とても静かになっている。
    少し寒いが...淹れたてのコーヒーがあれば大丈夫だろう。

    旅骨「...行くか」

    誰にも気づかれぬように帽子を深く被り、
    レッドウィンター方面の駅へと向かった。
    そうして乗り込んだ電車が、ゆっくりと動き出し...数時間。
    電車の窓から見える雪景色を見ながら、
    コップに入っている液体を少し飲む。
    ...寒くはなっているが、震えるというほどではない。
    ずっと外に居続けることはできないだろうが...
    ...どこかのカフェで休憩でもすればいい。
    レッドウィンターで見れる景色。
    雪景色はもちろんのこと、
    その中で静かに照らされる街道も良いのだ。
    どういう顔を今回は見せてくれるか、
    その想像の風景に心を躍らせて...
    停止した電車から、レッドウィンターの地へと足を踏み出した。
    ――――万年雪が降るレッドウィンター。
    だからこそ、外気はとても冷えていた。
    たとえ夏の昼でも涼しいくらいらしく、
    春の夜となればやはり少し肌寒かった。
    コップにあったその液体を全て飲み、
    また新しく入れるコーヒーを探していると...

    ヤコフ「おや、同志菓変!寒そうじゃないか!ここまでどうしたのだ?」

    片眼鏡をつけ、その優しい微笑みをした伯爵...
    ...いや、レッドウィンター担当のヤコフ先生は、
    こちらに気づいてピクリと眉を上げていた。
    そちらに手を振り、さくさくと雪を踏んで近づく。

    旅骨「どうせだから旅をと思ったんだ、が...やっぱり、ここは寒いな」

    はあ、とそうため息をついてしまう。
    雪は降っていないものの、
    冷たい外気は容赦なく体温を奪い取っていく。
    いや、スケルトンの姿になれば、寒さは感じないのだが...
    一方のヤコフ先生は、はははと笑った。

    ヤコフ「それもそうだろう!ここは年中雪が降る学園だからな!」

    そう話すと、せっかくだと言って
    近くのおすすめのカフェを教えてくれた。
    コーヒーはあまり嗜まないらしいが...
    その代わりにプリンが好みなんだと。
    チェリノによる影響が強いのだろうが...
    中々にギャップがある。
    少し話をした後...ヤコフ先生は腕時計を見て、
    おや、と声を漏らした。

    ヤコフ「そろそろ時間だな...では、また会おう!同志菓変!」

    そう手を振って、ざっざっざっ...と駆け足で雪を踏み
    街灯だけが頼りの街の中へと消えていった。
    それは残っている仕事のためか、
    それとも眠るチェリノのためか。

    旅骨「...まあ、模索しなくていいか」

    そう思うと共に、端末で教えてもらったカフェの場所を探し...
    ...深夜でも開いている、人の少ないカフェへと歩を進めた。
    一部の店はやはり閉まっており、
    店の明かりすらもない...静かな街道を歩く。
    そうして、一つ...道を照らす別の光を確認して。
    ちりんちりんという鈴の音と、
    温かい空気が...訪問者を歓迎する。

    店員『いらっしゃいませ』

    そのロボットは電子の微笑みを浮かべ、
    そのまま奥の方へと進んでいく。
    外の景色が見えるカウンターへと座り、
    遠くにある一筋の光...サンクトゥムタワーを眺める。
    空には、光り輝く星々が存在していて。
    ...来た甲斐があった。

    店員『ご注文は?』

    それに見惚れていたせいか、
    店員が来ていたことすら気づいていなかった。
    そちらを見やり...持っていたコップを出して。

    旅骨「ブラックコーヒーを...これにお願いできるか」

    そう伝えると...店員は嫌がる素振りも見せず、それを了承した。
    普通であれば"それはちょっと..."などと言われるのだが...
    ...チェリノの我儘に慣れてしまったというのもあるのだろうか。
    しばらく暗闇を眺めていると...電子の声が、こちらに気づかせた。

    店員『おまたせしました』

    ことりと置かれたそれには、暖かな液体が入っていて。
    それを手に取り、会計でそのまま支払いをして。
    未だ明るさの変わらない、凍える街へと足を踏み出したところで...
    ...一つの連絡が入ってきた。

    ヤコフ『同志菓変よ、まだレッドウィンターにいるか?
        この際だ、見ていってほしい場所を送っておくぞ!』

    その通知とともに、一つの場所が書かれていて。
    少し距離はあったものの、十分に時間はあった。
    その方向に駆け足で、零さぬように向かう。
    冷えていた体も少しずつ温まっていき、
    その暗い高台へ着くころには...十分な体温になっていた。
    ...そして、そこを見上げれば。

    旅骨「...こりゃ、すごいな」

    夜空には、綺麗なオーロラがあって。
    その奥には、カフェで見た時よりも...輝いていた。
    持っていた端末でその素晴らしい風景を切り取り、
    それと共にヤコフ先生にメッセージを送る。

    旅骨『こいつはすごいな...ありがとう』

    そのまま時間を忘れて、それを眺めていて。
    ...気が付けば、カップのコーヒーは全て飲み切ってしまっていた。
    こうも素晴らしいものに出会えるとは...
    ...もし、こちらに来た時は...良いプリン店を教えよう。
    そう決意をして、高台から去って。
    少しずつ明るくなっていく空を見ながら、電車に乗り込んだ。



    <二日目>
    ...あの後に眠って...起きたのは昼過ぎ。
    いやいつもそうだが...
    こういう時間帯を気にするうえで昼に起きると、
    なんだかとても損をしたような気がしないでもない。
    ...さて。
    今から行くとしたら...夕方か、夜になるだろう。
    夕方の日が落ちるところもいいとは思うが...
    ...今は、夜景。
    夜景が見たい気分だ。
    そうなれば...一番良いのはミレニアムだろう。
    常に煌びやかで、いつだって飽きさせない。
    情報量が常にあり続ける場所だ。
    あそこにいればしばらくは暇にならないくらいだ。
    場所は...案外近い。
    それなら少し...別の事をしながら行けそうである。
    ミレニアムは常に発展していく。
    だからこそ、行く度に何かしら面白いものが見つかる。
    その部分も、ミレニアムの醍醐味と言える。
    ...準備をし終えて、立ち上がる。
    今回は何を見せてくれるのだろうと心を躍らせて、
    その発展の産物の電車に乗り込んだ。
    ――――常に切り替わり、新しきを生み出し続ける学園、ミレニアム。
    こうして、電車から出た時には...
    大きなスクリーンに、過去見た物とは別の物が映っていた。
    どうやら...新しい素材が生み出された、らしい。
    その供給過多な駅内を歩き、外へと足を速める。
    そして、改札を抜けた場所は...
    ...夜が照らされるほどに、明るい。
    どこもかしこも情報を主張していて、
    それを追うだけで時間が溶けていく。
    ...しかし、今回はそうはいかない。
    そうしてにぎやかな街から少し抜けて...路地裏に入る。
    眩しい街から一転し、
    静かで涼しい雰囲気へと切り替わり。
    その暗闇で一息つくと...

    文月「...死神、ここまで何しに来たんだ?」

    黒いフードを被った執行部長、文月先生が目の前にいた。
    どうやら、ここら辺をパトロールしているらしい。
    何やら、また指名手配が追加されただとか。
    休日だというのに、文月も相変わらず仕事らしい。
    こいつに余暇という概念は存在するのだろうか...
    アリスにはだだ甘だから、そのための休みぐらいはありそうだが。

    旅骨「私は旅だよ。何か新しい物はないかなってな...
       ...と言っても、いつも新しいものしかないだろうけど」

    そう苦笑いすると、文月先生はため息をつく。
    そして、その暗い路地裏の中で光を放つ端末を開くと...
    素早く何かを打ち込み、その光を消した。
    そのまま路地裏を曲がろうとして...こちらに振り向く。

    文月「...少しだけ時間があるから来い、いい場所を教えてやる」

    旅骨「そりゃどうも」

    そのまま闇に紛れて文月先生を追うと...
    ...ぽつりと明かりが見えた。
    そこは...そこだけ時間が切り取られた...というような場所で。
    キラキラとして近未来的な表とは違い、
    ぼんやりとした木造の建物だった。
    その中に入っていくと...
    ...ゆったりとした、年寄りの犬の店主が奥から出てきた。

    老犬「...おやぁ、いらっしゃい」

    店内を見渡すと、どうやらそこは駄菓子屋のようなところだった。
    そこらに様々なお菓子があり、
    それを見ていると...なんだか、子供のような気分になれる。
    過去にタイムスリップしたかのようにさえ、錯覚してしまう。
    文月先生は、その錯覚を邪魔しないように出入り口の方へと向かい。

    文月「...またいつか、お前とは剣を交わしたいものだ」

    旅骨「それは二度とごめんだ」

    それを聞いた文月先生はふ、と少しだけ笑って...
    そのまま路地裏の闇の中へと消えていった。
    たまたま執行部の活動途中で知ったのか、
    アリスにでもお菓子を買ってあげるために探したのか...
    ...聞くだけ野暮だろう。
    少しだけ見て...一つの物が目に留まった。
    ...それは、気持ちを落ち着かせるための、
    たばこのようなお菓子で。
    それを2つ手に取り、店長の方へと歩く。

    老犬「合計、60クレジットだよ」

    そう言われ、持っていた財布から小銭を渡す。
    そのまま優しい手でぽすりと手渡しして、店長は微笑む。

    老犬「また来てね」

    その温かさに、少し驚いて。
    こくりと頷き、そのまま暗闇の中へと足を踏み入れる。
    そうして、手にある箱を開けて...中の一本を、口に咥える。
    ほのかな優しい甘みが、気分を落ち着かせ...過去のことを思い出させる。
    そうして、思い出に耽っていると...一人、こちらに歩いてきた。

    葛谷「おっ、骨じゃん!こんなとこでどうしたんだ?」

    手にビニール袋を提げる、葛谷先生だった。
    どうやら晩飯を買いに行った帰りらしく、
    その袋の中には弁当とペットボトルが見えた。

    旅骨「旅の途中。こんな路地裏で会うなんてな」

    頻繁にここの路地裏を利用しているらしく、
    それで何も起きてないということは...
    それは文月先生のおかげ...ということなのだろう。
    葛谷先生は旅骨の咥えている物を見て、ぴくりと眉を動かす。

    葛谷「あれ?タバコなんて吸うのか?」

    旅骨「タバコは吸えんよ...お菓子だ」

    そう言って1箱それをぽいと投げると、
    葛谷先生は、ぱしっと受け取ってそれを眺め始めた。
    やがて眺め終えると...そのままビニール袋の中に入れた。
    ...まあ、だろうと思ったが。
    しかし、その代わり...一つこちらにぽいと投げてきた。
    同様にこちらもキャッチすると...
    それは、どうやら小さなガムのようだった。

    葛谷「代わりにこれやるよ。んじゃ、あたしは忙しいんで」

    そう葛谷先生は笑うと、そのままどこかへと消えていった。
    ちょうど咥えていたそれを食べ終え、
    そのガムを開けて口に放り込む。
    ...味は...イチゴ味、だろうか。
    何気なくその包装紙を見ると...
    そこには、"明日の運勢は大吉"と書いてあった。
    ...昨日も今日も大吉な気がするが。
    そんなことを思いながら...
    今日の旅の幕を下ろすため、
    駅の方面へと向かった。



    <三日目>
    目が覚めれば、いつの間にか昼だった。
    いや、昼というにはまだ早い。
    軽いはずの重い体を起こし、
    いつもの服へと着替えて気持ちを切り替える。
    さて、今日はどこに行こうか...と、端末を操作して...
    ...アビドスの天気が良いことを知った。
    アビドスはいわば砂漠地帯。
    風が強いときなんかは、砂嵐が酷すぎて電車が停止するくらいだ。
    だから、行く時期は少し限られるのだが...
    どうやら、今日は晴れ...しかも、無風らしい。
    砂埃などを気にする必要がないというのは非常に良い点だろう。
    今日はアビドスにでも行くとしよう...
    いつもの黒帽子を深く被り、
    (アビドスは何があるっけな...)と端末を弄る。
    柴関ラーメンはアビドスの生徒達と行ったから覚えてはいるものの...
    調べていくと、砂祭りなどがヒットするが、
    それも数年前に終わっているものばかりだ。
    やはり、砂漠化によって撤退してしまった住人は多いのだろう...
    だが、過疎化してしまったとはいえ、まだまだ魅力はあるはずだ。
    レッドウィンターとは真反対な景色に期待しながら、
    アビドス行の電車へと乗り込んだ。
    ...アビドス地域。
    最初に来た学校の中で、一番過酷であろう場所。
    飛んでくる砂によって道は埋もれ、
    アビドス砂漠に近い場所であればあるほど被害が酷い場所。
    それ故に管理が難しく、
    ゲヘナやトリニティのように治安を守る者がいない。
    精々、いるとしてもヴァルキューレなどだろう...
    ノノミも、"ショッピングモールまでかなり遠いんです"と言っていたため、
    やはり生活する上では大変そうだ...
    外を見れば、そこは青と黄だけで作られた景色がある。
    いや、灰などもあるにはある、が...
    あまりにも砂漠が多すぎる。
    そして、電車の中へと目線を戻せば...
    そこにいるのは、両手で数えられるほどのロボットや犬だった。
    アビドスに好んで行く者はやはりいないのだろうか、
    ほとんどは仕事の服装をしていたり時計を確認したりしていた。
    ...そのせいか、私服の自分が浮いている気がしたが、
    その事実からは目を背けることにした。
    気が付けば、電車も終わりへと近づいていた。
    自分の肌を焼く太陽も、少しずつ空を橙色へと染め上げていて...
    帰るころには夜になってそうだと思いながら、
    砂の都市に足を踏み入れた。
    ―――――駅から出ると、砂は少しあれどしっかりとした都市が広がっていた。
    周りをよく見ると、口に布をつけた者もいる。
    恐らくは、飛んでくる砂対策なのだろう...
    名は...確か、シュマグと言ったような。
    ともかく、予報であったとしてもこうしてつけているということは、
    もはや必需品ということなのだろうか。
    そんなことを思いつつ、
    一風変わったものを求めてショッピングモールへと向かった。
    少し探索をしていくと、知らないブランドなどが目に付く。
    中には、どういう店かもわからないものまで存在していて...
    ...いや、本当に何の店なのだろう。
    どういう店なのか遠目から見て思案していると...
    ふと、喉が渇いていることに気が付いた。
    たとえ魔法で変えられた姿とはいえ、
    やはり人間の体だ。乾燥地域であるアビドスでは乾いてしまう。
    何か良い飲み物、と思い...
    そういえば、今日はコーヒーを持ってきていなかったのだ。
    飛んでくる砂が入ってきたらと考えたのだが...
    ...仕方ない。何か買いに行こう。
    そうして中のスーパーへと向かい、
    アイスコーヒーを探していると...ふと、気になる人をちらりと見かけた。
    その姿を少し追ってみると、
    何やら食材コーナーで人参とにらみ合っていた。
    それに近づき、声をかけてみる。

    旅骨「よう」

    シアン「っ!?」

    びくりと肩を震わせ、こちらを向くシアン先生。
    何故か物凄い警戒をされている気がするが...それは置いておき。
    どうやら、夕飯の買い出しに来ていたらしい。
    それで、今日は肉じゃがにでもする予定だ、と言っていた。
    ...家に突撃するわけではないので、それはいいのだが。
    今欲しいのは晩飯のメニューではなく、
    アビドス地域の情報なのだから。

    旅骨「シアン先生、このあたりで何か良いのってあるか?」

    しかし、この手の質問で返ってくることはほぼない。
    魅力というのはあくまで第三者が見ることで発見できるのであって、
    その地域に住む人たちはそれが"普通"と認識してしまうからだ。
    だから、出来ればという気持ちで聞いてみたのだが...
    意外にも、答えが返ってきた。

    シアン「...えと、お土産に、アビドス砂饅頭があります」

    ...食えるのかを疑ったが、多分食べれるのだろう。
    それ以外にも、柴関ラーメンのパックのことや、
    日の入りを見られる場所を教えてもらった。

    シアン「...あ、そろそろ時間なので...失礼します」

    そうぽつりとシアン先生は小声でつぶやくと、
    ぴゅーんとレジの方へと飛んで行った。
    やはり苦手に思われているのかもしれない...と、頭を掻きつつ...
    アイスコーヒーのペットボトルを手に取り、別のレジへと向かった。

    ...砂のせいで覚えにくくなった街の道を、
    迷いながらも教えてもらった土産を買って。
    いつの間にか、日はかなり落ちてきていた。
    まだ時間はある。
    急いでその展望台へと向かい、エレベーターで上っていく。
    平日だからか、やはり人はほとんどいなかった。
    ざり、と薄くある砂を踏み...その景色を目の当たりにした。
    赤く光る太陽が、空を紫と赤で照らしていて。
    砂の山がその光を遮り、砂漠に影を生み出していて。
    少しずつ赤と黒へと変化していくその光景は、
    何か感慨深いものを抱かせた。
    ...そして、その日は落ち切って空はやがて闇に包まれていき。
    いくつもの星が、輝いていた。
    どんなところでも、やはり星空は良いものだ。
    それを見終え...踵を返し、エレベータで下る。
    そして、レッドウィンターとは違い砂が積もる道を走り、
    少しずつ冷え行き風が吹き始めた世界から逃れるように、
    サンクトゥムタワー行の電車へと駆けこんだ。



    <四日目>
    空白の夢を引きずりながら、
    今日も今日とて起き上がる。
    せめてこう、夢なら何か出てほしいものなのだが。
    時計を見れば...時間は10時を過ぎたあたりだろうか。
    なんだか生活リズムが治りつつあるような気がするが、
    今はそれよりも旅する場所を決めなければ。
    昨日はアビドス、その前はミレニアムで、
    さらにその前はレッドウィンター...
    まだ行っていないところと言えば...トリニティか。
    今から向かうとして時間はちょうど昼頃。
    それ以外の候補は...百鬼夜行、ゲヘナ、山海経。
    どれも今から行くにしては少しばかり遅い...
    やはりトリニティが一番だろう。
    トリニティと言えば...あるのはスイーツやら紅茶やらだろうか?
    いや、他にもあるかもしれない...
    ...とにかく、情報はあっちで探せばいい。
    昼の時間なのだ、人気の場所など一瞬でわかるはず。
    わからなければ、聞き込みやらなんやらでどうにかなる。
    そういうところも含めて、旅の醍醐味なのだから。
    時計を確認し、次の電車を確認して...
    昼はパンケーキでも食べようかな、などと思いながら電車を待つ。
    ―――――"今日の昼ごはんは何にしよっか~"などと聞こえる、
    キャピキャピ女子高校生が多い街の印象であるトリニティ。
    しかし実際にはそういうわけではなく、
    街はとても華やかで美しい。
    どこを見ても、絵になること間違いなしだろう。
    街中には流行りに乗ったスイーツやらが多く存在し、
    そこには長蛇の列があったりもした。
    しかし...その中でやはり私は浮くのだろうか、
    ちらりちらりとこちらへ目線が向けられていた。
    やはり明るい所は苦手だな...とため息をつきつつ、
    周りの目から逃れるようにして街中を探索する。
    ミレニアムのように路地裏などがない分、
    心を休められる場所がないというのが少しばかり辛いが。
    そうして迷っていると...
    どこからかキャーキャーという黄色い声が聞こえてきた。
    恐らくは...リク先生だろう。

    リク「あの、近くでこのような人を見かけなかったでしょうか」

    トリニティで特に人気の高い先生であり、
    裏ではファンクラブが存在しているとまで言われている人。
    "ハスミと組ませれば敵は一人もこない"だの、
    "一人でトラックを打ち返すほどの腕力を持つ"だのと、
    尾びれ背びれついた噂が流れるほど。
    ...実際は、いちゃついてるが故に近寄れないというだけなのだが。
    もう一つについては知らない。ただの化け物な気がするが。
    それくらい人気だからか、リク先生の周りは女子高校生でいっぱいだった。
    今色々と浮いている状態であの集団に会えば何が起きるかはわからない。
    変に不審者扱いされて戦闘が始まるのは非常に面倒だ。
    だからこそ、身を潜め人混みに紛れるようにして走る。
    そうしてその黄色い声から離れ、一息ついた時...

    あめ。「あ、黒帽子の人」

    ...そう言えば名乗ったことなかったな、と思いつつ...
    声のした方へと振り返る。
    そこには、眼鏡をかけた先生...
    異次元からスイーツを取り出したり、
    スイーツを複製したりすることのできるという、
    スイーツ関連の特殊な能力を持つ"あめ。"先生がいた。
    どうやら丸までが名前らしい。
    恐らくは本名ではないのだろうが。
    それを言えば、自分の名前も本名ではない。
    深くは聞かない方が良さそうだ。
    そのまま話を進めていくと...
    どうやら、新しいスイーツを探して回っていたようだ。
    最近はゲヘナで有名なところにも行きたいらしいが...
    如何せん治安の問題で無理なんだとか。
    スイーツ研究家?としては辛いだろうに。
    ...そんな時、あることを思い出した。
    そう、ヤコフ先生に渡すプリンだ。
    トリニティなら良いプリンがあるはず、だが...
    そんな場所を探すのは至難の業だ。
    そもそも、店に入ることもできない。
    ならば。

    旅骨「...あめ先生、少し取引があるんだが」

    内容はこうだ。
    おいしいプリンを買ってきてもらう代わりに、
    ゲヘナにあるスイーツ店で何かしらのスイーツを買ってくる。
    ...といっても、おいしいプリンなど能力ですぐに生み出せそうではあるが。
    そう伝えてみると、あめ。先生は少しだけ唸ってから...こくりと頷いた。

    あめ。「ゲヘナの方で買ってほしいものがあるから、助かる」

    どうやら、ゲヘナに唯一存在するお店があるらしく、
    常に人が並んでいるうえに横取りなどで大騒ぎらしい。
    最近はとある人が入ってから暴動が起きなくなったらしいが...
    それでもやはり先入観というのは拭えないらしい。
    そこで売っているスイーツ...中でも人気な物を一つ買ってきてほしいそうだ。
    いくら風紀委員会が動いていたとしても、治安は悪い。
    それなら、ある程度動ける自分が行くのが安全だろう。
    取引成立ということで、そのまま別れた。
    ...さて。まだ旅の途中。
    それどころか、トリニティのスイーツなどを味わえていない。
    どうせならあの時に秘境を聞いておくべきだったなと後悔するも、時すでに遅し。
    仕方ない。スイーツが楽しめないならば、観光と行こう。
    さっきは大通りだった。ならば、今度は人の少ない通りの方に行けばよい。
    多少チンピラに会っても、どうにでもなるだろう。多分。
    そうして洗練されたデザインを眺め歩いていると...

    チンピラα『おっと?こんなところに人が来るとはなぁ』

    チンピラβ『お前も運がわりぃなあ!』

    ...本当にチンピラと遭遇した。
    トリニティにも存在したことに驚きだ。
    いや、もしかしたら違う学校からなのかもしれないが。
    それはそれで、だ。
    正直言えば、変に騒ぎなど起こしたくないのだ。
    警察に同行をお願いされて時間を潰されたことなんかいくつあったことか。
    原因は自分がやり過ぎたことなのだが...
    手加減が上手でない以上、変にやり過ぎてしまう。
    だからこそ、さっさと逃げて旅の続きをしたいのだが...

    チンピラγ『おうおうどうした?ビビってんのか?』

    チンピラΩ『顔見せろよお前、撃たれてえのか?』

    数は...4体。
    殴って気絶ぐらいならどうにかなりそうだが、
    謎の効果で武器自体が弱化してしまっているのだ。
    気絶できるほどの威力が出せるか...
    そう思案していた時だった。
    乾いた発砲音と共に、一人のチンピラが悲鳴と共に倒れた。

    チンピラβ『ぐああっ!?』

    チンピラγ『なっ!?誰だ!?』

    新たな敵襲か?
    左手の指輪に手を添え、いつでも武器を取り出せるようにして、
    その影が来るのを待った。
    ...そして、その影は意外にも先ほど見た顔だった。

    リク「正義実現委員会だ!抵抗をやめて大人しくしろ!」

    角から出てきたその人は、女子高校生に囲まれていたリク先生だった。
    恐らくはパトロールで見つけたのだろうが、良いタイミングだ。
    リク先生はこちらをちらりと見た後、少し目を開き...
    それと共に、3人の銃が火を噴いた。

    チンピラΩ『隙ありだ!』

    チンピラα『バケモンか知らねーが集中砲火すりゃどうにでもなんだよ!』

    しかし当の本人に当たることはなく、
    姿勢を低くして回避し、二人を同時に斬り伏せた。
    そして、その隙を狙おうとしたもう一人を...
    変化させておいたバットで殴った。

    旅骨「隙あり」

    チンピラγ『でっ...!?』

    普通であれば死ぬはずだが、
    そいつは倒れてうずくまっているくらいだった。
    化け物なのは一体どっちなのか...
    そうして鎮圧が終了し、バットを指輪へと戻していると...
    他の正義実現委員会の人たちが集まり、チンピラたちを拘束していった。

    リク「ご無事ですか、菓変先生!?」

    それを見届けていると、息を切らしてこちらにリク先生が駆け寄ってきた。
    身の安否を伝えると、安心した様子となり...こちらに頭を下げてきた。
    どうやら、自分のパトロール不足だ、と思っているらしい。
    普通こんなバカ広い場所をパトロールしきるなんて無謀だと思うのだが。

    リク「謝罪と言っては何ですが...これを。つまらないものですが」

    そうリク先生は言うと、紙を渡してきた。
    よく見てみると...百鬼夜行で使える割引券らしい。
    お土産で買いに行った時にもらったらしいが、
    当分行くことはない...とのことだった。
    そういえば百鬼夜行にはまだ旅に行っていないな、とふと思い、
    ありがたく受け取ることにした。
    そうして、ピッと敬礼するとそのままどこかまたパトロールしに行ってしまった。
    ...すでに多少疲れているように見えたが、言わないでおいた。
    そうして、空の色が少し変わり始めていることに気づいて。

    旅骨「...今日はもう終わりにするか」

    次は百鬼夜行にでも行こうかな、なんて思いながら。
    赤く染まりつつある空を見ながら元来た道を引き返し、
    街の中に紛れるように塗装された駅へと足を進めた。



    <5日目>
    ...気づけば腕にいたあの子...セイアは居なくなっていて、
    代わりとして存在するのは自分にかけたタオルの一部だった。
    ノノミと一緒に寝ない時は大体ろくでもない夢なのだが...
    今日はツイてるらしい。
    もしくは、昨日の夢が悪かったからだろうか。
    ふと思い返せば、あのふわふわした耳や子供特有の高い体温が腕に残っている気がした。
    "私は君のぬいぐるみではないのだぞ"と言っていたが、満更でもなさそうだった。
    次会った時はいっぱい頭を撫でてやるか...と思いつつ、窓の外を見る。
    ...空の明るさからして...午前3時くらいだろうか。
    空がほんの少し明るく、紫色に染まっていた。
    今からどこかに行くとして...
    ...朝ぐらいに到着するだろう。
    それなら...今から間に合えば、の話で...山海経が良さそうだ。
    思い立ったらすぐ行動。
    帽子を被り、いつもの服に着替えて走り出す。
    今の世界は自分の世界。
    すぐさま魔法で"扉"に飛び、そこをくぐって山海経行の電車へと向かう...

    ――――山海経。
    凝補がよくお世話になっている学園のひとつであり、
    商業がとても盛んな場所だ。
    百鬼夜行のような落ち着いた賑やかさではなく、
    和気あいあいとしたにぎやかさを持っている。
    人とのつながりを重視していると言えばいいのだろうか。
    その山海経の中でも派閥が存在し、
    2つに分かれて争っているだとかなんとか...
    切磋琢磨という言葉があるように、戦う相手がいると互いに高め合うということが多い。
    それは戦闘に限らず商売でもそうらしく、それぞれの魅力を出し合って客を引き寄せんと努力している。
    ...そして、それはいつでも見ることが出来る。
    たとえそれが朝だとしても。

    始発の電車に乗り、空が明るくなっていくのを見ていること約1時間。
    黎明の時も近づく中、電車がブレーキをかけて停止する。
    駅から出ると、荷物を抱えた人や車がせっせとあちこちを走り回っていた。
    周りをよく見てみれば、なるほど、どうやらイベントがあるらしい。
    今回のイベントは...甘味。
    トリニティや百鬼夜行、最近急成長しているゲヘナに負けないように、
    こうして催し物が起きているらしい。
    道を少し進むと、そこでは看板を設置して絵を描いている犬の店主や、
    荷物を受け取って運んでいるアンドロイドがいた。
    その中には...ある時にお世話になった、団子屋の犬店主がいた。

    旅骨「お?こんなところでどうしたんだ?」

    店主「おや...?旅骨先生か」

    こちらを振り向く百鬼夜行の店主。
    どうやらこういう催し物の時は協力を依頼されることもあるらしく、
    少し遠くからやって来たらしい。
    そのリターンとしてはやはり商品の情報や新技術、アイデアなどだと。

    店主「こちらの技術も良いものが多くてね。珍しいのもあってね、新鮮だ」

    旅骨「商売ってのは大変だな...そんで?何を提供してるんだ?」

    店主「それならこれを...と、思ったが...少しだけ協力してくれるか」

    旅骨「お?いいぞ」

    そうして店内に案内され、奥へと進むと...
    ああでもないこうでもないと試行錯誤している犬猫が数人...いや数匹?いた。
    その中心にあるテーブルを見ると...様々な和菓子が置いてあった。
    話を聞いてみれば、現在新メニューの開発中らしく、
    こうして試行錯誤しているとのことだった。
    その開発中のメニューに参加してほしいとのこと。
    シズコに一度頼まれたことを思い出しつつ、それを了承した。
    最初に出されたのはごく普通の串白団子。
    しかも何もつけないらしく、そのまま一つ口に入れてみる。
    すると...中からトロッとしたものが出てくる。
    少し甘じょっぱい...

    店主「みたらしのたれが服を汚さないようにするために、団子の中に入れてみたんだ」

    旅骨「はー、なるほどな...味も良い、が...一つ問題があるな。団子が多少固い」

    店主「...やはりか」

    恐らくはその場で作ったものではない。工場か何かで作ったのだろう。
    しかしながら、団子というのは突きたてが一番良い。
    時間がたてばたつほど、団子は固くなり弾力もなくなっていく。
    お持ち帰りなどなら良いとは思うのだが。またはお土産。
    そんなことを思っていると、次の菓子が渡された。
    透き通った青の琥珀糖だった。

    店主「それはとある方に依頼して作ってもらった。数は少ないが...私のお気に入りだ」

    旅骨「...へえ。お気に入り、ねえ...」

    そうして一つ口に放り込み、中で転がしてみる。
    味としては...なんら変わりのない、普通の琥珀糖だ。
    見た目も普通だった。いったい何を気に入ったというのか。
    未だ変化のないそれを少し咀嚼をしてみる...と。
    途端にその琥珀糖がしゅわしゅわとガスを噴き出し始めた。

    旅骨「...!」

    店主「どうだ。これは良いだろ?」

    旅骨「...確かにな」

    これなら気に入る理由も良くわかる。
    透き通る青色に炭酸。とても良い。
    ぜひとも他のも知りたいという気持ちが湧いてきた、その時だった。
    奥の扉が開き、中から一人...別の色をした琥珀糖をもってやって来た。

    凝補「次の琥珀糖です」

    旅骨「おめーかよ」

    そう。その琥珀糖の制作者は...自分の身内の片翼だった。
    どうやらまた色々と依頼を請け負っているらしく、この菓子制作もそのうちの一つらしい。
    そうして得たお金で研究材料などを買っているとか。

    凝補「まだまだ分からないことは山ほどありますからね。ふふふ」

    旅骨「お前が研究バカなのは既に知ってるよ...」

    そもそも趣味が研究だ。
    それにこいつとはもう数年近い付き合いだ。
    研究のためなら各地を奔走し仕事の合間にも研究を進めるほどだ。
    ましてや寝る間を惜しんで...といっても寝る必要はないが。

    凝補「それで、その琥珀糖が余程気に入ったそうですね?」

    旅骨「...ああ、そうだよ...それで、何が必要だ」

    凝補「ヴォルフスエック鋼鉄と...マンドレイクをお願いします」

    旅骨「あいよ...ったく...」

    例え取引とはいえ、また面倒な物を頼まれた...
    オーパーツはそもそも手に入りにくい代物だというのに。
    しかし、ここは諦めるしかあるまい。琥珀糖にしては高い気がするが。
    そうして取引を終わらせ、その場所から去ることとなった。
    凝補はまだ菓子制作やらが残っているらしい。そんなに仕事を受け持つ必要はあるのだろうか...
    一息つき、ふと空を見上げる。
    いつの間にか空はすっかり明るくなっており、周りを見渡せばせわしなく動いていた人たちもいなくなっていた。
    このまま山海経を調べまわるというのも手、だが...
    ...コーヒーがないせいか、もうすでに体が疲弊していた。
    何処かで補充できれば良いのだが...生憎、そんなところはなさそうだ。
    仕方ない...また別の機会にでも訪れるとしよう。
    そうして、来た道を戻り...サンクトゥムタワー行の電車へと向かった。



    <6日目>
    ...目を開ければ、未だそこは暗闇のまま。
    まだあの夢にでもいるのかと考えたが、自分の体にかかってる毛布で現実だと理解する。
    ...この世界...キヴォトスに来てから一年くらいが経過した。
    今までは何か見えぬものから逃げ続け、必死に生に縋りついていた。
    人を殺した罪で、自分が殺されることを恐れて。
    それは...不死の体を得てしても、意地汚くこびりついて取れない。
    あいつ...風変りというべきか、胡散臭いというべきか。
    黒服とやらに操られたのがそうだ。
    あの時、記憶や思考、感情が全て何かに塗りつぶされていくような感覚がした。
    あれは、もしかすれば死ぬよりもおぞましいかもしれない。
    ...自分の手で、凝補を、ノノミを、殺してしまうかもしれないから。
    ...凝補は...まあ、復活はするし、何度も殺しているから大丈夫だろうが。
    だが、幸いにも先生達のおかげで助かった。黒服とやらの足跡がつかめなかったのは残念だが。
    ...いや、もとはと言えば私の失態だ。安全を急ぐがあまり、油断したから。
    いつでも冷静でなければ、相手を見極めることすら不可能。
    元の世界ではいつも頭の中で何回も考えていたというのに。
    随分と鈍ってしまったらしい。
    ...この休日が終わったら、しばらくはVRとやらで戦闘訓練でもした方が良さそうだ。
    そうしてまた新たに予定を加えたところで...窓の外を見てみる。
    外は未だに暗闇に包まれており、星と光の輪が光り輝いている。
    遠くを見れば...光の塔が見える。あれはいったい何なんだろうか...
    ...この世界は謎が多い。あのようなものを調べに行くというのも旅の一つだろう。
    だが、生憎今はそのような時ではない。帽子を取り、"扉"へと向かう。
    そうして少し歩いてそれを開けば...そこに広がるのは、この世界と全く同じ風景。
    まるで鏡を見ているのかと錯覚を起こしそうなくらいに、変わらない。
    そんな瓜二つな世界に足を踏み入れ、目的地...百鬼夜行へと向かった。
    ―――――百鬼夜行。
    私が気に入っている学園であり、様々な思い出がある場所だ。
    凝補や犬...じゃなかった、虎太郎との思い出の地でもある。
    ちょうど時間としてもその時に近い。あの展望台に行くのもありだが...
    自分の足がそちらに行くことはない。
    電車が駅に到着し、それに乗り込む。
    この深夜だからだろうか、乗っている人はほとんどいない。
    それはアビドスの時を彷彿とさせる。もうちょっと人はいたが。
    そうして暗闇の中を少ない乗客を乗せた電車が走っている。
    窓からは...暗闇の中でも存在感を示している桜の巨木が見えた。
    そうして十数分。電車から降りて駅から抜けると、目の前にマップがあった。
    そこには展望台だけでなく、滝や池、神社や花見スポットなどと様々な物が事細かに書かれていた。
    実のところ、こうして観光マップをじっくりと眺めるのは初めてだ。
    そもそも、旅というよりは放浪の方が近く、行き当たりばったりなことが非常に多かった。
    だからこそ、今回のように目的をもってどこかに行く方が稀だ。
    ...マップをしばらく見ていると、マップの端に海があることに気づいた。
    しかもバスで行ける距離らしい。
    ならバスで...と思ったところで目が留まった。
    そこにはアクセサリー屋の文字。
    どうやら貝殻のアクセサリーを売っているらしい。
    普段であればこんなものなど気にもしないのだが...今日はやけに気になった。
    ちょうどバスの終点近くでもある。このバスで行くとしよう。
    そしてそのバスの停留所を探していると...ちょうど一台のバスがやってきた。
    行先は...どうやら自分の行くところらしい。
    タイミングが良い、乗っていくとしようか。
    扉が開いたバスに乗って料金を支払うと、座席を一瞥する。
    乗客は誰もいないらしい。
    せっかくなので、前にある妙に高い席に座った。
    ここからなら、もうちょっと周りをよく見れるはず。

    車掌「えー、それでは発車いたします...」

    老いた犬の車掌が扉を閉めると共に、未だに暗い道を進み始めた。
    しばらくバスに揺られ、ふと景色の事を思い出した。
    窓を見てみると、そこにはうっすらと自分の顔が見えた。
    その奥は...緑が大量にあった。どうやら、いつの間にか森の中らしい。
    閑静な森の中で、ただバスの走る音と葉の擦れる音だけが周りを漂っている。
    またしばらくバスに揺られていると、車掌のアナウンスが耳に入ってきた。

    車掌「次は、水樹神社前...水樹神社前...」

    神社。そういえば、先ほどのマップにそんなところが書かれていたのを思い出した。
    降りてもいいが...今降りた場合、次のバスがいつ来るのかわからない。
    仕方ない、ここは諦めるとして、終点まで待つとしよう。
    寄り道をして本来の目的を忘れてしまっては本末転倒なのだから。
    ...そうして、いつの間にかやって来た眠気に揺られ、
    気が付けば森は抜けて海が見えるようになっていた。
    空は紫がかっていて、夜明けが近いことを知らせている。
    まあ、あの時まではまだ時間がある。おそらくは間に合うだろう。
    そう考えていた時、車掌の声が聞こえた。

    車掌「次は、主点、アルディム海岸...アルディム海岸...お忘れ物のないようご注意ください」

    どうやら、もう終点に近いらしい。早いものだ...
    ここまでは大体20分かかっているはずだが、気持ち的には5分程度だった。
    それほどに眠かったのか、それとも...
    バスがゆっくりとブレーキをかけて停止する。
    椅子から降り、車掌に会釈をしてバスから外へと足を出した。
    周りは閉まっている建物と線路があるだけだった。
    そして...それはあのアクセサリー屋も例外ではなかった。
    開店時間まではあと30分くらいある。
    その間に海でも見るとしようか...
    アルディム海岸へと歩を進めていると、先客が一人いることに気づいた。
    その人物は、腕を組んで先に広がる海をただじっと眺めていた。
    が、こちらに気づいたのだろう、後ろに振り返った。

    コン「菓変先生でしたか。ここで何を?」

    旅骨「ただの旅だ。そっちこそ何してんだ」

    コン「私もまあ、旅ですね」

    そうして会話はすぐに幕を閉じ、コン先生と同様に地平線を見つめる。
    ザザーン、ザザーンと静かな空間に波の音だけが響き渡る。
    空を見れば、その色は紫から赤へと変わり、
    海を見れば、黒からその赤へと染まっていくのが見えた。
    波と共にやってくる潮風は、体温を少しずつ削り取っていく。
    でも、それでいい。上がりつつある興奮を抑えるためには、ちょうどいいから。
    やがて地平線が輝き始め...一つの光が、現れた。

    黎明の時だ。

    その光は周りの空を自分の色に染め上げ、世界を照らしていく。
    太陽に起こされたように、シャッターや車の音が聞こえ始める。
    こうして夜は終わりを告げ、朝がやってきた。
    ...その光景を見終え、踵を返して先ほどの道に戻る。
    少し歩いていくと、さっきまではシャッターが閉まっていたアクセサリー屋が開いている。
    その自動ドアを抜けると、奥で老犬がせっせと荷物を運んでいるのが見えた。
    しかしドアの音に気づいたのか、こちらに振り向いた。

    老犬「あらあら...こんなお店にいらっしゃい。ゆっくり見ていってねぇ...」

    ぺこりと頭を下げると、また荷物を運び始めた。
    あの老け具合に対し、店内は真っ白でとても綺麗だ。
    最近始めたのだろうか...
    壁やテーブルに綺麗にアクセサリーが並べられており、
    クローバーを模したイヤリングや、星の形をしたキーホルダーなどがある。
    そして、書かれていたあの貝のアクセサリーは...壁に飾られていた。
    虹色に光る貝や真っ黒な貝、巻貝など種類は豊富だ。
    それらを眺めていると...近くの張り紙に気づいた。
    どうやら...この世界には、貝殻言葉なるものがあるらしい。
    花言葉と似ているらしく、その貝の見た目や特性でそれぞれ変わるとか。
    虹色に輝く貝は"幸福"
    真っ黒な貝は"確固たる決意"
    巻貝は"あなたを守ります"
    ...なんだ、ピンとこない。
    だが、その言葉を除けばどれも綺麗だ。
    といっても、贈る相手は...ノノミぐらいだが。

    コン「何してるかと思ったら...アクセサリーですか」

    旅骨「なんだお前、ストーカーかよ」

    コン「違いますよ...」

    そうため息をつくコン先生は、しばらく壁にあるアクセサリーを眺めると...
    一つの白い貝のイヤリングを手に取った。
    張り紙を見直してみると...長寿の貝らしい。
    そこから"いつまでも健康に"という貝殻言葉を持つ...と書かれていた。
    ...ノノミに...か。
    ノノミはそもそもこの世界の住人。
    化粧品などに詳しいノノミなら、こういうアクセサリーにも詳しいはず。
    そうなると、変な物を贈った場合絶対に碌な目に合わない。
    そうして探していると...ふと、黄緑色のガラスでできた貝のネックレスを見つけた。
    よく見て見れば、その貝の中には黄色のビー玉のようなものがある。
    説明は...何もない。一体何なのだろうか。
    しかし、なんだかそれに妙に惹かれる。ノノミには似合うだろう。
    それを手に取り、レジへ向かう。
    コン先生はすでに支払いを終わらせたらしく、白い袋を持っていた。
    老犬は割引券と一緒に出したネックレスを見ると、目を丸くした。

    老犬「あら、それは...」

    旅骨「...どうした?」

    老犬「いえ、何も...ふふ」

    そう老犬は微笑むと、それを袋で包んでくれた。
    そのまま支払いを終わらせ、その袋を手に外に出た。

    旅骨「...なんだったんだか」

    コン「...知らない方がいいと思いますよ」

    もう少し貝殻の張り紙を確認しておけばよかったな...と後悔していると、
    コン先生は腕時計を確認して...声を上げた。

    コン「っと、そろそろ時間ですね...私はこれで」

    旅骨「じゃあな」

    コン先生は頭を下げると、忙しそうに駅の方へと走っていった。
    どうやら、リアのデザートを買いに行くらしい。
    なんとも忙しい奴だ。

    旅骨「...私もそろそろ帰るとするか...あー、ねみ...」

    そう思い、謎に包まれた白い袋をもって駅へと向かった。



    "あなたは私の宝物"の、貝殻言葉を知らずに。
    <七日目>
    時が流れるというのはあまりにも早いもので、とうとう最終日となってしまった。といっても、すでに行くところは決まっている。そのために、いつもの帽子をより深く被り、服もラフなものから黒の仕事服へと着替えて外に出る。あの地域はいくら風紀委員会が頑張っているとはいえ、お世辞にも治安が良いとは言えない。だからこそ、なるべく周りが寄り付かない...問題に巻き込まれないように、身を潜めて探索をすることにした。無理して行くのは...治安の悪さを省いても良いところがあるからだ。

    ―――――ゲヘナ学園。自由と混沌を謳う学園であるがゆえに、どの学園よりも圧倒的に治安が悪い。銃声は絶えず、どこかしらで爆発が起き、そこらを風紀委員会が走り回っている。まさに混沌としている、そんな場所だ。とはいえ、それもまた魅力としての一つだろう。耳にする音は、それだけではないのだから。

    ゲヘナ学園方面の駅で、ぽつぽつと人がいる中電車を待つ。とうに日は暮れ、辺りは徐々に暗くなりつつある中、近くの自販機でコーヒー缶を買う。微妙にしっくりとこない味に少しのため息をつくと、今更になって周りに気が付いた。そう、周りにいるのは...ほとんどがゲヘナ生であり、犬や猫といったものは誰一人いなかったのだ。まあ、そもそも人自体が少ないのだから気のせいだとは思うのだが。
    こくり、とその液体を口に含むと同時に、きゃいきゃいと騒ぐ声だけが響いていたホームにアナウンスが流れる。少しの風と共に停止した電車から、幾人が流れてくる。それを避けて中へと入れば、どうやらほとんど降りたらしい、席はほとんどがら空きだった。
    扉がばたんと閉まれば、少しの揺れの後に周りの景色が動き始める。外はもう赤すら見えなくて、あるとするならば、この時間まで働いているであろう会社の白ぐらいだろうか。その中には、おそらくあのワーカーホリックな先生も。大変な奴だ、と独り言を零し、スクロールのように流れる風景にただ目を向けていた。
    ...それから、何分経っただろうか。ぱちりと目が覚めれば、あと一分もしないうちに目的地に到着といったところだった。なんとか寝過ごさずに済んだな、と思いながら体を動かし...扉が開くと同時に、駆け足でその駅を後にした。
    その勢いのままに街道を走り続けつつも周りを見れば、学校終わりで遊んでいる生徒が多いのか、会社員というよりも学生の方が多くみられる。誰もがゲヘナ生であるのは言わなくてもわかるだろう。いくつかの生徒はこちらに気づいたようだが、流石に追いはしないだろう。それこそ、変に絡みたがるような生徒出なければ...だが。
    そうして比較的静かである路地裏に逃げ込み、あの先生に頼まれた場所はどこだったかな、と思っていると...突然、後ろから声がかけられた。

    ヘルメットA『ようよう、お前。ここで何してんだ?』

    ヘルメットB『ここらはあたしらの縄張りだぜ?通るってんなら通行料払ってもらわねーとな』

    どうやら、絡みに行こうが行くまいが変わらないらしい。そちらを見れば、ヘルメットをかぶった生徒が二人...いや、三人。面倒だな、と思いながらポケットを探るふりをする。ただやはりゲヘナ生、何度も悪事を働いているせいかこの動きが武器を取り出すように見えたらしい、即座に銃を構えてきた。

    ヘルメットC『大人しく手を上げな。命よりかは安いだろ?』

    旅骨「...へいへい。流石、慣れてるな」

    ヘルメットB『黙ってろ。大声出して助けを求めようとしたら即座に撃つからな。ま、こんなところじゃ助けどころか野次馬が集まるぐらいか!あはははっ!』

    そうして笑いながらやってきた一人のゲヘナ生を...思いっきり跳び蹴りする。予測すらできていなかったのだろう、その生徒は奥へと吹っ飛び、話しかけてきた生徒に激突した。

    ヘルメットB『うぐぁっ...!?』

    ヘルメットC『お前っ!!!』

    指輪に手をかけて武器に変化させつつその弾丸を横に避け、後ろの生徒をバットで殴る。痛みで悶絶するその肉壁を盾にしつつ話しかけた方へと歩みよれば、そのヘルメットの奥には怒りがかすかににじみ出ていた。

    旅骨「...面倒事は嫌いなんでね。見逃してはくれねえか」

    ヘルメットA『...てめぇ...!』

    ただ、この時間も刹那の間だった。どたどたと複数の足音が聞こえれば、その生徒の後ろから...一番に会いたくない、風紀委員会が現れた。

    風紀委員『風紀委員だ!お前らここで何をして―――』

    流石に増援を呼ばれたら不味い。今の状況を見て、こちらが被害者だと説得すればことは治まるかもしれないが、そんな悠長に時間は使っていられない。ようやく痛みが治まったのだろう生徒から手を放し、外へと駆け抜ける。

    風紀委員『おい!逃げるなっ!』

    銃声が聞こえるよりも早く路地裏から脱出し、全速力で逃げる。右に曲がり、左に曲がり、店の中に入り、地下に入って、階段を駆け上がって、ビルとビルを跳んで。そうしてようやく撒いて、また路地裏でため息をつく。そんな時、その奥から一人、団子片手に姿を現す者がいた。

    白角「おっ、黒帽子の先生!何してんだ?」

    旅骨「...なんだ、お前か」

    白角「は?」

    困惑半分怒り半分の表情である...ゲヘナ生の一人、白角ロリに今までのことを説明する。すると、白角はわざとらしくため息をついた。なんとも、最近は騒ぐ人が格段に増えたらしく、それでパトロールがかなり厳しいんだとか。便利屋68の活動もできやしないんだー、と嘆いていた。

    旅骨「...なるほど、道理ですぐに来たわけだ」

    白角「ほんっとーに...やることなくて...お金もカツカツなんだよ」

    そうぶつぶつ呟く白角を見ながら、ようやく今になってあることを思い出した。そう、あめ先生からのお使いだ。とある有名なスイーツ店のものを買ってきてほしいというものなのだが、その店が今の状態だとさっぱりわからなかった。

    旅骨「それじゃあ、ちょっと案内してほしいんだが」

    白角「じゃあなんか奢れ」

    旅骨「あいよ、この店なんだけど」

    白角「っしゃーーーーッ!!!」

    喜ぶ白角にその店の名前を見せると、ふんふんと少し考えてからああ!と思い出したかのように話しながら案内を始めた。最近になってゲヘナに出来たパティシエのお店らしく、毎日行列が絶えないとのこと。値段も値の張る物が多く、それでも売り切れ続出だから一度は食べたかったと、そう白角は言った。

    白角「でもさー...そもそも家賃で食費もままならない状態だから、それ食うほどのお小遣いもないんだよあたし...よく食べ歩きとかするから、それでダブルプッシュ」

    旅骨「アルバイトでもしねえの?」

    白角「先生、碌なバイトがここに在るとでも思ってんの?」

    旅骨「そう...」

    だろうとは思った。ゲヘナのバイトと言われて思いつくものは大体安全ではない。もしあったとしても白角が出来るかどうか怪しいであろう警備のバイトぐらいだ。そうなるのも仕方がない。
    そんなことを話していると、ようやく店が見えてきた。しかし、白角の言う通り、深夜にもかかわらずそこには長蛇の列に加え、何やら割り込みとやらでぎゃいぎゃいと騒いでいた。並べるかどうかもわからぬ状態にどうするかと悩んでいると、突然目の前で大爆発が起きた。そこを見れば、どうやら店を乗っ取るつもりらしい、複数のチンピラが周りの客と交戦していた。

    白角「...あ」

    旅骨「なんだ」

    白角「...今なら入れんじゃね?入口がら空きだぞ」

    言われて気が付く。チンピラたちも客も戦いに夢中で、入口には誰も人がいない。流れ弾の危険はあるが、今なら簡単に待つ必要はないだろう。問題は売り切れていないかどうか、の話だが。

    旅骨「頭良いな」

    白角「売り切れないと良いんだけどな」

    そう言うと同時に、入口に一直線に走り出す。いくつかの客やチンピラはこちらに気づいたものの、交戦中で手が回らないらしくこちらに意図的に弾丸を飛ばすようなことはしてこなかった。
    外はあれだけ大騒ぎしているのに対して、店の中は閑静だった。このようなことは慣れているのだろう、皆楽しそうに会話をしながらスイーツを食べている。店員も外の様子には我関せずといった様子でいらっしゃいませと話しかけてきた。

    白角「フルーツ入ってないスイーツって何がある?」

    旅骨「チーズケーキだとか、ショコラケーキとかそんなんじゃねえかな」

    白角「それじゃあ...このブラックナイトケーキにしちゃおっと!」

    旅骨「...じゃあ私もそれでいいか」

    それを注文して、数千の代金と引き換えに二切れのケーキを購入する。相変わらず外は騒がしく、ケーキが巻き込まれぬように、そして形が崩れぬようにその場を駆け抜けた。どこで食うか、と白角に聞けば、便利屋のオフィスに行こうぜと言ってきた。
    そこから数分。ようやく到着したオフィスには、今日はみんなお出かけなんだと言っていた通りに誰もいなかった。テーブルにそのケーキの箱を置いて中を開けば、黒と白を基調としたケーキに赤い剣が刺さったものが二切れ見えた。奥から皿を出してもらい、それぞれ個別に分けて食べる。
    その味はまさにブラックと言うように苦みが非常に強い。ただ、その中のカカオの香りが鼻を通り抜け、後からクリームの甘さが苦みを和らげてくれる。赤い剣を口に含めば、サクッとした音と共に砕けて、チョコレートの味がまた広がった。これがゲヘナのパティシエのケーキ...中々に面白いな、と思いながら前の方を向けば...

    白角「....にっがぁーっ!?なんだこれ!?炭か!?」

    旅骨「見た目から分かるだろ...」

    ぎゃいぎゃいと喚く白角に甘い飴をぽいと投げると、不機嫌そうにその飴を口に含んだ。子ども扱いをするな、といった顔で。

    白角「...苦いのはそもそも嫌いなんだって...先生、このことはナシにして...」

    旅骨「...ったく。その皿寄越せ、代わりに3000やるよ。それでいいだろ」

    白角「えっ、先生そういう趣味が」

    旅骨「ぶっ飛ばすぞ」

    食べかけの部分は削ってケーキをすべて食べ終え、それじゃ、と声をかけて便利屋のオフィスから出ていった。あたりを見れば、それはアビドスを思わせるような静けさで、便利屋も相当苦労してるんだろうな...と思いながらポストに数千を追加で入れておく。
    ふと端末の電源を入れて時刻を見れば、いつの間にか午前0時を回っていた。これだけ時が早いと思ってしまうのは、自分の時間間隔が狂っているからなのか、、それとも...楽しかったとでも思っているのか。
    そんなことはないか、と思いながら飴を口に放り込み...月光だけが照らす街道を歩き、その姿を闇夜に消す。今から乗れる電車はあるのだろうか、と眠気に揺られながら、ぼんやりと思考していた。
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