Fallen突然変異や何かしらの魔法、またはポーションなどといったものによって種族が変わってしまった者を指す。
旅骨もその一人であり、元々は人間であったが何かよって骸骨となってしまった。今のところ原因不明であり、凝補もお手上げだという。
元々眠っていなかったからか、常に眠いらしい。徹夜すら厳しいらしく、一日起きていると思考どころか体の能力すら低下するだとか。
凝補に人間に一時的に戻る魔法を組んでもらい、それによって昼寝したりコーヒーを飲んだりして生活しているが、人間の時に戻ると今よりも力が弱まるらしい。なので、基本的には骸骨の姿が一番だとか...
Fallenになった者は皆今までとは違った体になったことで苦労が絶えないらしいが、そう考えると旅骨はまだ優しい方なのだろう。
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元々眠ることが出来ない状況を自分から強いていた旅骨は、生まれ持った身体能力があったとしても、満足に体を休めることもできず徐々に力は落ちていた。肉体的、精神的なダメージをコーヒーやポーションでどうにか抑え込んでいたというだけで、実際の所彼の体はかなりボロボロだった。当然、そんな状態では長く続くことはなかった。
ある日、いつものように体を傷だらけにして旅骨が帰ってきた。傷を治そうと凝補が近寄ると、旅骨は有無も言わず突然倒れてしまった。死んだという訳ではなく、ただの気絶というだけだった。しばらくは休養させながら様子見していたが、その間も目を覚ますことなかった。
もし仮に目を覚ましたとしても、また同じようにして外に飛び出して、ボロボロになって倒れるだろう。いくらぶっきらぼうに相手をしてきて、不親切な彼であったとしても、血だらけ傷だらけで帰ってくるのを何度も見るのは心が痛んだ。だからこそ、もうそれを見ないためにも...その痛々しい姿を見ないためにも、種族を書き換えよう、と思った。
拘束したり、永遠に眠るようにすれば傷つくことはない。しかし、それと同時に、彼の自由を奪ってしまう。そんなことはしたくなかった。そのために、今できること。それが、種族を書き換えることだった。
当然、種族を書き換えるなんて言うものは普通ではできない。普通では。凝補は吸血鬼だ。相手に強い影響を与えられる、血液魔法を使える。そこには、相手の骨格や体力、精神的な影響をも与えることが出来る。種族すらも、書き換えることが可能だ。ただ、問題として相手の種族を書き換えるためには、自身の血液と相手の血液、両方を使わねばならなかった。自身の血液は、魔法の詠唱のために。相手の血液は、情報を書き換えるために。術式も単純ではない。かなり複雑であるため、長い時間を要する。そんな大きなことをすれば、彼に怒られる可能性というのも高かった。ただ、それでも、これ以上はもう嫌だった。せめて、苦しさから解放してあげたい、それが自分なりの恩返しのつもりだった。
詠唱が始まり、自身の血液と彼の血液が魔方陣へと吸収されていく。少しずつ、自身の力が、意識が、思考が削り取られていくのを感じながら、それでも強く決意を抱いて詠唱を続けた。当然失敗すれば、自分も彼もほぼ確実に死ぬ。吸血鬼であったり、彼の身体能力が高いとはいえ、この代償はとんでもなく高い。次やることはもうできない。しかし、術式は親や教師などから断片的に聞いたものだ。それを、自分なりに組み立てている。当然ながら、効率は非常に悪い。かなりのコストを用いて、行う。失敗のリスクも高い。それでも、絶対に成功させる、そう思って詠唱を続けていた。
...やがて、数十時間にもわたる詠唱が終わった。うっすらとした視界に、骸骨が映し出されている。大丈夫だ、そう思うと共に...全てが抜け落ちてしまったように、意識がなくなった。
それから数日が経過してから、ようやく起き上がれた。その骸骨はもうすでに起きていたらしく、姿がなかった。周りを見れば、どうやら姿の変化関係なしに行ったらしい。これで多少は、大丈夫だろうか。そう思いながら、依頼の片づけを始めた。
その夜のことだった。彼が帰ってきて、またあの時と同じように倒れた。今度は気絶ではなく眠っているらしかった。どうやら、気絶しているときに種族を書き換えてしまったからか、眠気が抜けないままになってしまったらしい。どれだけ寝ようとも、ずっと眠いのだと。ただ、それと同時に、骸骨になったからか少し吹っ切れたらしく、昔ほど死に執着することはなくなった。それによって、外に行く頻度も少しずつ落ちていき、その分を睡眠に充てるようになった。
ただ、やはり骸骨のままでは多少の問題があった。それもあって、一時的に肉付けする魔法...つまり、少しだけ人間に戻れる魔法を新しく生み出した。しかし、人間になって睡眠をしても、眠気は取れることはなかった。種族を書き換えているわけではないため力は弱まり、強いて良いとするならば食事ができるぐらいだろうか。助けになると思っていたものは、逆に彼の鎖となっていたのだ。
種族を元に戻そうにも、戻せるだけの力も血液もない。悲しいことに、自身の血液が完全に回復するのはかなり長い時間が必要なのだ。これが、凝補の「失敗」だった。それを想うと、今もなお顔が暗くなる。周りには隠すしかなかった。伝えようにも、そんな勇気はなかった。
今も、彼女の心には鎖がつけられている。その鎖を隠しながら、静かに許しを渇望している。