願望 某所での手配と探ってきてくれと頼まれた使いの帰り道。街と街を結ぶ「道」として整えられた、ただ踏み固めただけの道を足をはやめて門倉は歩いていた。
見渡す限り人の姿はなく、ちょっと外れれば大自然しかない道。周囲は何もないに等しい。あるがない。
民家らしき影と小さな明かりが遠目に数戸。集落から外れているということは村八分扱いか、自ら離れて暮らしている物好きか。物好きだとしたら何か特別な地位か、普段は群れなくても村の行事には参加できる、共同体へ溶け込むのが上手な一族か、流れ者か。
いいとこ取りできるかその逆か
そんな正反対の立ち位置の人間がご近所さんで住むわけねぇか
そんなことを門倉がぼんやり考えている間に黄昏時になっていた。早くしないと足元が暗くなる。
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