金曜日金曜日、終業時間を一時間程過ぎた頃、月島は小さく息を吐いてキーボードを叩く指を止めた。
『そろそろか?』これから来るであろう男の事を想像していると想定通りに声がかかった。
「よぉ、お疲れさん。今日は行けそうか?」
人好きのする笑みを浮かべて菊田が声をかけてきたのだ、グラスを口元に傾けるジェスチャー付きで。
「ソレ、おっさんっぽいですよ」
「いいじゃねぇか、おっさんだもん」
月島が素っ気ない態度をとっても気にする様子は無く、菊田はおどけている。おっさんと自称するわりには少しも引け目を感じていないであろうその態度は自身が世間では所謂【イケオジ】である事を自覚しているからだ、と月島は思った。
「それよりどうなんだよ、行けそうか?」
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