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    iori_uziyama

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    iori_uziyama

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    今突貫で書きました

      酔っ払いのドムに絡まれる。
    アイクはもとよりパーソナルスペースが広いタイプで仲のいい気のしれた同僚でも手を伸ばされることに拒否感を感じるレベル。
    なのに無遠慮に踏み入られて、抵抗もできない、ひたすらサブを貶める戯言を聞かされて、生理的にこぼれた涙で息が跳ねればうるさいと言われる、コマンドに従ってしまう本能で体は黙ろうとする、過呼吸寸前、泣ききれないから落ち着くこともできない、そのまま解除もされずに気が済んだのか立ち去っていく、しばらく経っても動けないし声も出せないし立ち上がれない、自分の身体なのに動かない、頭の中で喚き散らしても顔も固まって動かない。
    気が遠くなるほどの時間が経ってようやく指先からじわじわ感覚が戻る、悪寒がする。こわい、こわい、こわい、こわい、すれ違うすべての人が怖い、うつむきながら、頬の内側を噛んで、もつれる足を必死に動かして家に帰る。
    帰ればルカとヴォックスっていう強いドムが居てビリビリ落ち着かない、また怖くなる、話している内容もぐるぐるしてうまく理解できない、ほっといて!!と必死で叫んで手を叩いて部屋に閉じこもる、鍵をかけて、脱力したように部屋のど真ん中で崩れ落ちた。
    威嚇した猫の声みたいに息を薄く浅く吐く。視界がぐるぐる回る、胃の中がかき混ぜられたように気持ち悪くてみぞおちが痛い、唾液がぼたぼた出てきて、溺れそうになる、涙が滲んで霞む視界で、ベッドの下にホコリが積もってるのが気になった。
    丸まって、痛みをやり過ごそうにも痛くて、痛くて、のたうち回らずにいられなくて床に伏したまま寝返りを何度も打って、足をもぞもぞ動かす。痛みを逃すみたいに木製の床に爪を立てた、指先が削れるような痛みがはしる、はっはっはっ、と荒い呼吸が聞こえる、やけに高い「ぁ、」だとか「ぅ」だとかのうめき声が聞こえて少し経ってからその声が自分のものだと気付く。
    ドアが酷くうるさい音を立てている、うわ言のようにほっといて!入ってこないで!と叫んで、腕だけで体を引きずってドアから離れた。
    転がっていると胃液が逆流して気持ちが悪いから状態を起こして、近くに椅子があったからカラカラ引き寄せ、座面に抱きつくようにして体を支えた。キャスターが膝にぶつかって鈍い痛みを発する。
    耳に馴染まないうめき声が脳みそとは別の反射的に発せられている、グルグルと回る胃が気持ち悪い、痛い、つらい、起き上がっているのが辛くなってまた床に戻る、ひどく寒い気がしてベッドに手を伸ばしてシーツを無理やり引き寄せた、ベッド上のぬいぐるみたちがボトボト落下していた。
    ハロウィンのおばけみたいにシーツにくるまって息も声も抑え込む、声に出すから痛い気がした、ほら、大丈夫、痛くない、痛くない、痛くない、身体にがギシギシ言っている、力をゆっくりと抜く、またバカみたいなうめき声が聞こえて、諦めてまた床に爪を立てた、、あつい、さむい、あつい、さむい、バカみたいにシーツを蹴飛ばしたり引き寄せたりする。
    もう自分が何をやっているのかもわからなかった。
    胃が落ち着かなくて、吐いたほうが楽に慣れるかもとよろよろ状態を起こして床のゴミ箱を引き寄せて抱え込んだ、ぼたぼた唾液を垂らしても舌を伸ばしてもぐるぐる奥から出てこない、覚悟を決めて指を喉の奥に突っ込んだ、反射的に舌がグッと奥に引っ込んで、ビシャビシャと嘔吐した。胃液が喉を焼いていく、臭いが気持ち悪かった。
    服の端で汚れた指と口を乱暴に拭いて、ゴミ箱を適当な壁に押しやる。また床に転がって、痛みをやり過ごした。子供みたいにうーうー泣いた、輪郭があやふやになってる気分だった。自分の声が遠くに聞こえて、気絶のような浅い睡眠と嘔吐を短いスパンで繰り返して、窓を見ると明け方になっていた。
    朝になってしまったとおもった。ひゅうひゅうとガサガサに胃液で荒れた喉が音をたてる、部屋には嫌な匂いがこもっていた、床でじっと、ただジッと身じろぎをせずに視界の焦点も合わさずにぼんやりベッド下のホコリを見ていた。
    体が気だるく動かしたくなかった、腹部が薄く痙攣したようにはねていた、吐き出すものは何も残っていなかった。薄い薄い、意識の残った微睡みの中で控えめなノックが聞こえた。耳が少しずつ感覚を取り戻す。

    ミスタの声だった。

    「ねぇ、アイク。入ってもいい?おれ、サブドロップの止め方知ってるんだ。本当に最悪な方法だけど、自分だけで上がれる」

    反射的に答えていた。もう、開放されたかった。

    「、入って」

    ■■■

    「ほんとに、最悪な方法。ケアを受けるのが一番だと思う」

    でも、それを選べない時があるのわかるから。
    いつかケアを選べるようになるまでの最低な時間稼ぎなんだ。

    アイク、鏡を見て、自分の顔、目を合わせて。

    「配信でやってただろ、今のはナシ、忘れるビームって。あれに似てる」


    『昨日は何もなかった』『昨日はいつもと変わらない普通の日だった』

    薄れるまで、何回でも言うんだ。それで、原因が薄れて、ちょっと上がったらダメ押し。

    「あれ、俺なんで泣いてんのおかしーの」

    そんで何でもないみたいに笑って、終わり。

    出来れば、こんな方法使わずに、ヴォックスでも誰でもいい。頼ってほしいけど、コレを教えられるのは俺だけだと思うから。

    アイクが震えながら顔を上げて、鏡を見る。
    酷い顔色だった。

    「きのう、は、」

    フラッシュバックのように映像がループしている。脳みそに焼きつけられたみたいに。それを無視して声を絞り出す。

    「なにも、なかった」

    映像はアイクの声を無視してカラカラ回り続ける。
    でも、息が詰まる様な感覚が薄らいだ気がした。

    「昨日は、何もなかった」

    「なにもない、普段通りの一日だった」

    映像が薄れる、何もなかったみたいに。

    「キャビアトーストを食べて、配信して、散歩に行って、本屋に寄って。………帰ってきてみんなで夕飯を食べた。それで、お風呂に入って普通に寝た」

    いつもどおり、を思い浮かべて、何度も思ったこうであれば良かったのに、をそのまま事実にする。

    「普通の、なにもない、いつもどおりの日だった。」

    映像はぼやけて、いつも通りのアイクがいつも通り過ごした記憶がにわかに作られたように感じる。
    昨日が本当にそうであった気がする。あとひと押しで上りきれると確信があった。態とらしく鏡を見て、呟いた。

    「え、なんでこんなに顔色悪いの?風邪でもひいたかな……」

    サブドロップのせいだった体の震えは風邪のせいになって、体が元に戻っていく、そう、サブドロップなんて起こしてないんだから。だって何もなかったから。

    なんだか、ご機嫌な鼻歌も歌えそうだった。音程はひどく不安定で、震えていたけれどアイクは気付いていなかった。

    □□

    「おい、ミスタ。何をしたんだアレは。確かに上がっているが不安定すぎる」

    「なかったことにさせた。サブドロップの原因も、記憶も、サブドロップしたことも。だから、そうやって扱って。じゃないとまたドロップしちゃう」

    「それは、余りにも、」

    「じゃないとアイクが死んじゃうって思ったんだ、ケアを受けられない状態で、部屋から出られないってなったらどんどんトラウマに飲み込まれちゃう」

    これは一時凌ぎだけど、半年くらい経てば本当に過去になって、向き合えるようになる。体力も気力もないときにケア受ける元気もないんだ。

    ミスタは心細そうに右腕の肘をギュッと握っていた。
    ヴォックスは温度のない瞳をきろりと反らして思索に耽っている。
    ヴォックスは不思議でたまらなかった。本人が嫌がろうが、それは正しい処置ではない。治るかもしれないがあとを引く、猫が爪切りを嫌がったとて無理やり切るだろうに、猫が必死に怪我をなめていたらカラーをつけてその行為をやめさせてキズグスリを塗るだろうに、人間になると何故か止めさせない。
    しかし、この子達にはそれが重要なのだろうと納得はできずとも理解をして黙っていた。愛し子が苦しんでいるのに甚だ不満だが。

    「できたらわかりたくないんだけど俺のファミリーにもトラウマ持ちのサブが何人か居るから、わかるんだ。ドムのとのプレイが全くできなくなってて、めちゃくちゃ強い薬をずっと飲んでるやつとか。俺たちはそれを健康じゃないって思うけど、その子達にとってはそっちのがずっとずっといいんだ、プレイがほんとに苦痛だから。だからアイクにも、時間をおいてケアができるようになるなら、これが、今できる最大の処置だったと思う。」

    「僕も、いや、僕はノーマルだから完全には理解できないけど、あのままだったら、アイクは絶対に壊れてたと思うんだ、時間が傷を癒やすこともあるから、アイクが頼れる日が来たら全力で力になるよ、」

    ウンウンと仲間たちが不安そうにしながら受け入れていくその様子をヴォックスだけが白けた目で見ていた。どうしてヒトはこんなにも同族に甘いのかしら。重い溜息が溢れた。

    □□□

    アイクはさっきまでの不調がウソのように頭がスッキリした。視界はクリアだし、もうスッカリいつも通り動けそうだった。
    そう思っているのはアイク一人で、相変わらず顔色は酷いし、手足は冷え切っていて小さく震えている。しかし、本人はサブドロップを抜けたと本心から思い込んでいる。

    ミスタ達もアイクを気遣いながら"日常"を演じている。ヴォックスは到底そんなことをする気になれず、不機嫌に煙草をくゆらせていた。ジトリと重い視線を送ると、無意識に気付いているのであろう、震える手が服を握りしめる。
    ルカの声に一瞬跳ねる肩、キョロキョロと落ち着かない瞳、どもる話し声。
    ヴォックスは大きく煙を吐いた。
    これは、ダメだな。これはいけない。

    「アイク、随分顔色が悪いじゃないか、"何か"あったのか?」

    ミスタが目を見開くのが見える。アイクは目を合わせずに震えた声で言った。

    「実は昨日ちょっと夢見が悪かったんだ。今日はゆっくりするつもりだよ」

    暖簾に腕押し、あくまでも無かった事にするつもりだな。と確信を得て、不機嫌に目を細めた。

    「アイク。らしくないな、らしくない。雷に怯える子供が虚勢を張っているみたいだ。君の魅力は、アイデンティティは、その気の強さだ。それを失っちゃあいけないだろうに」

    低く唸るような声を出しながら、グレアをジワジワと浴びせる。アイクの手がガタガタと大きく震えて、もとより悪かった顔色は血の気が引いて真っ白になっていた。びゅうびゅうと喉がおかしな音を立てている。

    「ッッ何やってんだよ!!俺言ったじゃんか!!!」

    subであるミスタがヴォックスの視線を阻むようにアイクを背中に庇った。ヴォックスは意にも介さず、グレアを強めていく。

    「微笑ましい事だな、子猫が親猫を守ろうと必死になっているのは」

    「はァ?!」

    ミスタの額からはダラダラと脂汗が流れている。

    「私はアイクを傷つけようとしてる訳じゃない。救おうとしているんだよ、引っ込んでいなさい」

    ヴォックスは灰皿に煙草を押し付けてやっとこさ重い腰を上げた。コツコツ音を立てながらミスタに近寄って、肩を掴んで押し退ける。

    「やぁ、アイク。気分はどうだ?」

    睨みつけるアイク。

    「それでこそだ、場所を変えようか」

    □□□

    震える身体に力を入れて睨みつけるアイク、ヴォックスはグレアをジワジワと負荷をかけていく。昨日の蓋をした記憶が一気に蘇ってきてひゅっと呼吸が乱れる。じわじわと膝をついて項垂れてしまう、んで洗いざらいスピークで喋らされたところで舌を無理やり噛んで、止まる。
    「もううんざりだ!!!何でこんなことされなきゃいけないの!サブってだけでなんで踏みにじられなきゃいけないの!domってだけで僕を好き勝手するな!身体が、本能が、勝手に跪いても!心だけは従ってない!従ってたまるもんか!!」ってぼたぼた冷や汗かきながら吼えるアイク。
    それを聞いて3拍黙るヴォックス。
    目をすーーっと細めて、手をのばす。アイクはすわ殴られるって歯を食いしばって耐えようするが、予想とは真逆に頭がふんわりかき混ぜられるように撫でられた。
    「goodboy、アイク、そうだよ、いい子だな、」
    え?って驚いて顔を上げれば愛情百%の細められた目と、優しい手付きで混乱するアイク。
    「さすが私のスマートクッキーだ。きちんと抵抗出来たね。偉いよ。Excellent。いい子だ。」
    「セーフワードも決めずにプレイしてくるやつには従わなくていいんだ。無理やり従わされても、アイクは心は従ってないんだ、アイクの心は誰にも踏み荒らされてない。負けてないよ。しっかり抵抗できてたんだ」 
    って無遠慮なドムに逆らう成功体験を即上書きする。んでそこから引っ張り上げる。

    「なあ、アイク。私にケアをさせてくれないか。どうか勇敢な君を労らせてくれ」ってちゅっちゅしながら言う。んで、コクっと頷いたら「ありがとう、光栄だよ。セーフワードはいつも何を使ってる?」
    「ストップ、て、使ってる、」「わかった、ストップだね、私は君にストップと言われたら絶対にすぐに止める、君の嫌なことは一つもしない。それだけ信じてくれ」「、うん」

    「怖かったな、よく家まで帰ってこれた」
    「ソイツの前でドロップにならなかったんだ、よく耐えた」
    「好き勝手になんかされてないさ。アイクは耐えきったんだよ。抵抗してたんだ。素晴らしいことだ。誇らしいよ。」
    「アイクは本当に強い子だね」
    広くて安心する腕の中で落ち着く声がアイクを包む。ゆるゆる揺らされて、体からスルスルと力が抜けていく。んでスペース入って終わり。
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