結局いつもこの流れヴォックスとミスタは博愛主義と愛されたがり、浮気性に寂しがり屋、どう考えても相性最悪であろうにお互いの見た目と内面に惚れてなんやかんやイザコザありつつラクシエム全員を巻き込んだ紆余曲折をどうにか乗り越え両思いのバカップルとして爆誕したのだが。
マァ相性は最悪であるがゆえに、問題が発生した。
わかりきった結果である。
きっかけといえばミスタが純粋なことになんとも初心なことにヴォックスとのデートの日を心待ちにしていた所から始まる。なんともいじらしいことに、ヴォックスとのデートの日が決まると、リビングに置いてあるカレンダーにハートマークの印をつけたのだ。赤いペンでグリグリと大きくマークを描いて、なんとも可愛いことにそれが目に入るたびににこにこ照れ照れしていた。
だのに、歳だけとってまったくのわからず屋であるヴォックスは「あれま、この子ったら今日楽しみな予定があったんじゃないか、ソッチを優先しなさい」とお家に来た瞬間踵を返して帰っていた。
お前じゃあるまいにミスタは一途な良い子なのでハートマークをつける相手はヴォックスだけなのである。そんで、ミスタはしばらく呆然としてその後寂しくなってちょいと泣いたあとにシュウにくすんくすん電話をかけた。ミスタは自分から追っかけるなんてことできないのである。ひどく臆病なので。
いつもだったらシュウに電話をかけることも出来ないはずだが、よほどショックだったらしい。
そんで哀れに思ったシュウがプライバシーガン無視で不思議な呪術パワーを使ってヴォックスの居場所を突き止めてくれた。
「君とのデートをすっごく楽しみにしてたんだよ、って好きな子から言われて喜ばない男なんて居ないよ」と後押しまでしてくれて、ミスタは少し赤くなった瞳を抱えてヴォックスのもとへとちまちま走っていった。
そこで見たものと言えば、バインバインのナイスバディを持つお姉さんとデートしているあの野郎であった。代わり見つけるのが早くないか?どう考えても。キープ多すぎるだろうが。
しょうがないのでショック通り過ぎてチベスナ顔になった狐くんはアイクに電話をした。
クラスの中で結託した女子よりも悪口で盛り上がったあと、死ぬほど男前な声で「OK任せてミスタ敵は僕が取ってあげる」といった。絶対にアイクを好きになったほうが幸せになれるな、コリャ。と思った。
アイクはさっさとルカに連絡を取ってチャーター機を用意してもらって爆速で飛ばしてもらってスウェーデンからイギリスへと降り立った。なんか知らんが三十分で着いた。マフィアってすごい。
そんでシュウのプライバシーガン無視呪術を使ってヴォックスの元へ行き、バインバインの美女をさっさと掠め取った。ヴォックスはアイクを見た瞬間花も綻ぶような笑顔になり、何度も話しかけていたが一瞥もくれずにアイクはおっぱいに夢中だった。当初の計画ではヴォックスにしなだれかかって路地裏に連れ込みタマを潰す筈だったのに。まあアイクもいっぱしの男の子なので仕方ない。
しかし顔もいいし英語もうまいし可愛いしカッコいい男なので美女も靡いた。不細工には一生出来ない所業である。
さてはてアイクに全く相手にされず、美女までとられたヴォックスは段々項垂れて、カッコいいお顔が台無しにしわくちゃの顔をした。ミスタはそれを見てかわゆく思ってしまったので惚れたほうが負けとはこのことだな、と思った。
しょうがないので、てちてちヴォックスに近づいて
「ダディ、俺ね、今日のデート一週間ずうっと楽しみにしてたんだよ。だからあんなにデッカイハートマークつけてたわけ。なのに何も聞かずに帰っちゃうなんてすっごく寂しかったんだけど、責任とってよ」
とぎうぎう抱きつきながらグリグリ頭を押し付けて言った。可愛さの致死量である。
ヴォックスは萎びていたところにあんまりにもかわいい健気な狐が来てくれたのでメロメロになっちまった。そんで二人で喜び勇んでお家に帰ってネットフリックス&チル、いわゆるベッドインで終了ってわけ。おしまい。