「ミスタ、諦めて」
やけににっこりと綺麗な笑顔で言われたことを覚えている。
どこに行くにも、「ミスタ」何をするにも、「ミスタ」離れようにも式神がどこからか現れて責めるように周りをふよふよ漂う。渋々帰れば満足げに「ミスタ」一人でヌく隙すらない。「ミスタ」メッセージだってひっきりなしだ。あいつも暇じゃないだろうに。
「諦めてって言ったじゃん」
「拒否権は?」
「無いよ。だから全部含めて諦めてってこと」
最終勧告だったわけだ。いつも掴み所がないシュウは一度執着心を持ったら最後だったらしい。
「重いなぁ~」
「んへへ」
まァ、全部全部面倒になりがちな、一定期間で人間関係をリセットしてしまう癖があるから、この重さが心地良くもある。式神の仕組みはわからないけど逃げられそうに無いし。
「逃さないよ。ずーっと見てる」
「怖えよ」
ミスタが突っぱねてもシュウはニコニコ笑いながら離れない。ミスタはそれに少し安堵をにじませる。
寂しがりやの狐と執着系呪術師は相性が随分と良かったらしい。