その温度冬の朝、空気は澄んで冷たい。
吐く息が白く浮かんでは、リュウジの歩く速度に合わせて後ろに流れてゆく。
見慣れたカフェの看板が見えて来る。
近づいてみると店内は明るく、席は既に半分以上使用されているように見える。
彼は振り返り、道路を挟んで反対側の駅前広場を見やる。
そこにあるのは待ち合わせ場所に指定している時計塔。
約束の時間にはだいぶ早いことを確認すると、彼はカフェに入って行った。
焼き菓子の並んだカウンターで店員と言葉を交わすと、程なくして蓋が付いた高さ 10cm程のカップを受け取り、時計塔が見える窓際のカウンター席に着いた。
冷えた手にカップの温かさがじんわりと伝わってくる。
一口目は温度を確かめるように少量をゆっくりと飲む。
1992