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    botomafly

    よくしゃべるバブ

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    botomafly

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    ハロウィン ジュナくんとカルナくん 特にCPは意識してない

    こんこん、とドアがノックされる。また菓子を貰いに来た子供か酔っ払いが来たのだろう。アルジュナは図書館から借りていた本にしおりを挟んで閉じるとベッドから立ち上がった。今日はハロウィンなのだ。授かりの英雄たるアルジュナも今日ばかりはあげる側なのである。いや、勿論貰いもしたのだが、あくまで今日はあげる側である。
     テーブルの上にあるオレンジのカラーが目立つ円筒の缶を手に取り開けてみればたちまちお菓子の匂いが広がる。チョコやクッキー、キャンディーなどがカボチャやコウモリの絵が描かれた包装に包まれていて「らしさ」を感じるが、中身は普段から購買で購入できるものだ。違うのは包装の柄とアソートになっているかどうかくらいだろうか。
     ドアを開けると同じくらいの背丈をした白い布が目の前に立っていた。目がある部分と思われるところに穴が開いている。
    「菓子を配りに来た」
    「…………トリック・オア・トリート……」
     アルジュナは目の前の白い布が誰なのかすぐに判断が付いた。なんなら彼が配りに来たと言う前に分かった。おばけの恰好をするのなら第三再臨の姿にしておけばいいのに、本人は特に気にしておらず誰も突っ込まないから赤い毛玉が布から出たまま彼はカルデアを徘徊する。それに菓子を配るのなら仮装は要らないはずだ。おばけ役は菓子を貰う側である。
     いつも妙にズレているんだよな、と思いながらカルナが持っている菓子の沢山入ったバスケットからお菓子をいくつか手掴みする。といってもあまり量は残っていなさそうだ。彼のことだから部屋にストックがあるか毛玉にストックを入れているだろう。少しばかり残すと全部取れと言われたので、アルジュナは遠慮なく貰うことにした。
    「他はもう回ったのか? ……もう一人の私とか」
     この菓子配りおばけは、真なるアルジュナとアルジュナの別側面どちらを先に回ったのだろう。嫉妬や勝負などではなく、純粋な疑問だ。
     部屋に入れて貰った菓子をテーブルに置いておばけを振り返ると、彼は布の中で伸びでもしたのか布が歪な形になっていた。
    「ここが最後だ。あちらのお前はハロウィン用の菓子を用意していないと思ったのでマスターの次に訪ねて沢山菓子を渡しておいた」
    「貴様らしいといえばらしいな」
     では、アルジュナが貰った菓子は彼の最後の菓子だったのだろう。購買で見ないものだからまたどこかにレイシフトして材料調達から始めたのかもしれない。
     食べ歩きが好きなのに菓子を余すことなく配り歩くなどご苦労なことだ。少しは自分の分くらい残しておけばいいのに、彼の自己満足というやつはどうも彼自身を救ってくれたりはしないのだ。よくある現象といえばそうなのだが。
     ちょっとした思い付きでアルジュナは自分が持っている缶に手を突っ込んだ。今日の自分は菓子をあげる側だ。例え相手が勘違いおばけだろうと宿敵だろうと、あげる日なのだ。
    「アルジュナは仮装しないのか? 前にトナカイの仮装をしていただろう」
    「あれはトナカイ。クリスマスのだ。それに菓子を配る側は別に仮装など……」
    「ハロウィンは徘徊する魔性の類に襲われないよう魔性の者の恰好をし始めたのが始まりだと聞いた。お前もしたほうがいいのでは?」
    「昔の話だろう」
     ほら、と空になったカルナのバスケットに次々と菓子を入れてやる。おばけの相手は大分したので訪問者も恐らくカルナが最後のはずだ。全部渡しても支障はないだろう。
     一度は何もなくなったそこに菓子が敷き詰められた。おばけはそれを大事そうに抱えると小さく、だがはっきり「ありがとう」と告げて身を翻していく。仕方のないおばけだ。誰にもあの菓子を配らず部屋に着けるといいのだが。
     一息ついて何となくカルナから貰った菓子の個包装を開ける。普通のクッキーだ。包装に描かれた絵の通りのクッキー。チョコチップのクッキーやチョコレートの生地のクッキーの絵もあるので、何種類か持ってきたのだろう。口に含むと塩気のあるバターの味が広がり紅茶が欲しくなった。
     暫しの沈黙ののち、アルジュナは彼を呼び戻すべく部屋を出た。
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    botomafly

    DONE【ジュナカル】片割れ二つ ひらブーのあれだんだん慣れ親しんできたインターホンを褐色肌の指が押す。部屋主がいることは予め確認済みだが、応答の気配はない。
     寒い冬、日曜日の朝。とあるマンションを訪れていたアルジュナは嘆息してインターホンを睨むともう一度ボタンを押した。インターホンの音が廊下に静かに響く。が、応答はない。毎週この時間にアルジュナが訪ねているのだから家主は気付いているはず。電車に乗ってここまで来るのは距離があるわけではないが夏と冬とくれば楽ではない。相手は客人を待たせるタイプの人間ではないのでトイレで用でも済ませているのだろうか。
     腕を組んで呼吸を十数えたところで上着のポケットに入れていたスマートフォンが音を鳴らした。見れば家主からのメッセージで、鍵は開いてるから入ってくれという内容だった。インターホンの近くにはいないがスマートフォンを触れる環境にはいるようだ。
     しかし。
    「……お邪魔します」
     ドアの先へ踏み込めばキッチンのついた廊下があり、廊下を仕切るドアを潜ればそこにあるのはワンルームだ。あの部屋の広さでインターホンに手が届かないとはどんな状況だ。
     何となく予想がつきつつも鍵を締めて廊下を進む。途中のキ 2216

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    Lemon

    DONE🎏お誕生日おめでとうございます。
    現パロ鯉月の小説。全年齢。

    初めて現パロを書きました。
    いとはじイベント参加記念の小説です。
    どうしても12月23日の早いうちにアップしたかった(🎏ちゃんの誕生日を当日に思いっきり祝いたい)のでイベント前ですがアップします。
    お誕生日おめでとう!!!
    あなたの恋人がSEX以外に考えているたくさんのこと。鯉登音之進さんと月島基さんとが恋人としてお付き合いを始めたのは、夏の終わりのことでした。
    一回りほどある年齢の差、鹿児島と新潟という出身地の違い、暮らしている地域も異なり、バイトをせずに親の仕送りで生活を送っている大学生と、配送業のドライバーで生活を立てている社会人の間に、出会う接点など一つもなさそうなものですが、鯉登さんは月島さんをどこかで見初めたらしく、朝一番の飲食店への配送を終え、トラックを戻して営業所から出てきた月島さんに向かって、こう言い放ちました。


    「好きだ、月島。私と付き合ってほしい。」


    初対面の人間に何を言ってるんだ、と、月島さんの口は呆れたように少し開きました。目の前に立つ青年は、すらりと背が高く、浅黒い肌が健康的で、つややかな黒髪が夏の高い空のてっぺんに昇ったお日様からの日差しを受けて輝いています。その豊かな黒髪がさらりと流れる前髪の下にはびっくりするくらいに美しく整った小さな顔があり、ただ立っているだけでーーたとえ排ガスで煤けた営業所の壁や運動靴とカートのタイヤの跡だらけの地面が背景であってもーーまるで美術館に飾られる一枚の絵のような気品に満ちておりました。姿形が美しいのはもちろん、意志の強そうな瞳が人目を惹きつけ、特徴的な眉毛ですら魅力に変えてしまう青年でした。
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