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    botomafly

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    【ジュナカル】帳が落ちたら2 $パロ つづき

     大学生になって生活に余裕ができ、普段あまり足を運ばない大きな街へ出掛けたときのことだ。夕方になると居酒屋の宣伝は勿論、ホストやバーのスタッフ募集を含めた勧誘があちこちで行われる。それらを断りながらアルジュナが歩いていると、明らかに理慣れていなさそうな青年がしつこくスカウトされているのが目に入った。
     周囲の人間は知らぬふりをして通り過ぎていく。関わると面倒だからだ。アルジュナもそのつもりだったが、スカウトされている青年がキャリーケースを手にツバのある帽子を被ると言う観光客の出で立ちで、更に言うなら声の質から歳が近いことも窺える。だから、見るに絶えず割って入った。
     無視をしたら一生後悔するような気がしたのだ。

    「礼を言う。助かった」
     夕飯時のファミリーレストランに入って落ち着くと、彼は帽子を取りながらそう言った。そこから現れた色は白。帽子の後ろから白のポニーテールが飛び出ていたので、アルジュナが髪色に驚くことはなかった。都会には色々な髪型、髪色の人が歩いているので見慣れているのも理由の一つだが、彼の場合は染めているのではなく地毛なのだろう。店内の明かりで髪に艶ができており、痛んでいるようには見えない。目の色も薄い緑がかった青で、身体の色素が薄い体質なのだ。
     なるほど、スカウトが中々退なかったわけである。かくいうアルジュナも、スカウトから名刺をもらってしまったのだが。
     アイドル事務所。友人たちが冗談でアイドルになれると言いながら、実際その世界は遠く足を踏み入れることはないと思っていた。驚くべきことにその機会が回ってきたらしい。
     アルジュナが助けた青年、カルナは受けるかどうかを少し悩んでいるようだった。
    「事務所、入るのですか? 貴方観光客でしょう」
    「観光ではない。引越というか……家も仕事もこれから探すのだが、大きな街に行けばいいというわけではないのか? 田舎から出てきたばかりで右も左も分からん」
    「…………家? これから?」
     信じられずアルジュナは思わず聞き返した。引越は家が決まってからするものである。彼一人のようだし、そういうのは夜逃げや家出に近い。
    「家が少し複雑なんだ。オレがいない方が円満に事が運ぶから出ることにした。都会なら、オレの容姿を深く気にする者もそういるまい」
     良くも悪くも都会の人は他人に無関心だ。容姿で何か言われたことがあるのだろうか。ここらでその容姿ならすぐ人気者になれる。田舎特有の目というやつだろう。
     それで合点がいった。スカウトでアイドルになって売れれば問題は解決する。あとは売れるまでの住む場所が解決すれば彼はスタートできるのだ。スカウトをはっきり断れなかったのはこれのせいだろう。
    「オレは暫くホテル生活になるから、どの道アルバイトはしなければな。事務所に入ったところですぐに金が貰えるわけではないだろう」
     むしろ活動資金で金が減るのでは。少し困ったような顔をしたカルナにアルジュナは黙り込んだ。アルジュナも都心で育ったわけではない。田舎というわけではないが、地方の都市から上京して大学に入った。住まいはマンションよろしく大きな寮の一人部屋。
     部屋が余っていたら他の大学からの入寮も認められているが、さて家出をしたカルナは学生ではなくなってしまったのではないだろうか。
    「カルナは歳幾つですか」
    「……十七」
    (最悪!)
     アルジュナは悪態を飲み込むと机に突っ伏した。衝撃で置いてあった空のコップがからりと氷の音を立てる。関わってしまった以上、じゃあがんばれと放り出す気にはなれない。
     とりあえず数日の間は面倒を見るつもりだが、まさか大学生どころか高校生とは。事情を話したら寮は部屋を与えてくれるだろうか。一週間程度であればアルジュナの部屋にたむろすることはできる。あとは交渉次第。
    「お前は幾つだ?」
     突っ伏したままアルジュナが答える。十九、医大生。
    「医者を目指すのか。凄いな、アイドルより難しいだろう」
    「アイドルも難しいと思いますよ。売れない人の方が多いとか聞きますし。それに私は……」
     言い淀んだ彼は顔を上げると座り直した。カルナから純粋な尊敬の眼差しを受けて、苦いものを吐きだすように溜息を吐く。
     親が決めた。いや、彼らがそうしろと言っただけで最終的に決めたのは自分だけれど、それをカルナに言うのが恥ずかしかった。カルナは親が決めたことから離れて己の道で歩むことにしたのだ。その彼に、自分は親に決められたから、なんて。
     仕方がないのだ。成りたいものがなかった。成りたくない大人の像ばかりが独り歩きして、成りたい自分もない。だからその道を歩んだ。本当は別のことをしたかったが、それ以外なら何でもいいのかというとそういう訳でもなく。
    「目指すんですか? 売れるアイドル」
    「そのつもりだ。やるからには天辺を目指す」
    「そう」
     迷いない目に、アルジュナは眩しそうに目を細めた。将来の夢に振り回される前は、自分もこうだったと思う。昔の将来の夢なんてちっとも覚えていないが、未知への挑戦に対する活力は確かにあったのだ。
     羨ましかった。そして自分は、それに手を伸ばすためのチケットが手元にある。
    「なら私も、やります」
     両親への罪悪感が湧かないわけではない。だがやらずに後悔する生活には飽き飽きしていたのだ。


     そう、お互いのことは誰よりも理解している。あれから数年だ。
     アルジュナが医大生でありながらアイドルの道を選んだ理由も、空気を読んで行うストレスな受け答えの本心もカルナは知っている。無自覚か故意か、彼はアルジュナを囲む檻を壊しに行く。壊されて、あぁよかったとアルジュナは安堵する。
     カルナもそうだ。その道を選んだ理由も、非公開にしている出自、誕生日、血液型。夜中に家族から連絡が来てはいないかと頻繁にスマートフォンを確認しているのもアルジュナは知っている。……流石に家庭の事情の詳細は知らないが、話したくなったら話すとカルナは言ってくれた。
     観客は、ファンはそんなことを知らない。彼らは偶像を愛しているだけだ。舞台にあるハリボテに夢を見る。テレビの中のマリオネットに憧れを抱く。
     だというのに真核とも言える自分たちは、その世界にいる間彼らを愛さなければならず、お互いに大きな感情を向けることはできない。全て終わったあと、感情を押し付け合い飲み込むことしか。

     ホテルの部屋の入口で壁をアルジュナの背にして口吻けを交わす。
    「ベッドまで我慢できなかったのか?」
     問うたのはアルジュナだ。直後水音と共に二人分の声が漏れ、荒い息と衣擦れの音が逸る衝動を追い立てる。床にある荷物は乱雑に置かれており、脱ぎ途中だった薄手の上着がその上に落ちた。
    「アルジュナが車の中でオレに触るから」
    「少し腿を撫でただけだろう」
    「楽屋であんなキスをしておいて何を言う」
     アルジュナは目を泳がせた。最初に我慢できなかったのは自分。ホテルへ送られる車の中で、どうせ暗くて見えないからと腿に手を這わせながら彼に凭れて寝たふりをしたのも自分。その間カルナは健気にも耐えるだけ。
     己より僅かに背の高いカルナが、早く触ってくれとでも言うように普段は鋭さのある目で甘えてきた。アルジュナの耳に唇を寄せ、けれど何も言わずにじれったく吐息で擽ってくる。
     アルジュナは誘われるままカルナの中心に手を伸ばした。耳にかかっていた吐息が震え、彼がアルジュナにしがみつくように抱き締める。
    「ぁ……」
     吐息に飲まれそうなくらいささやかな喘ぎ声がアルジュナの欲を駆り立てる。わざとらしく緩慢にそこを揉み込めば、神と同じ色の綺麗な眉がもどかしそうに寄った。目が合ったときにはままならない快楽のせいか青の目の端に涙が溜まっていたが、彼は「きもちいい」と小さく零しただけだ。焦らされるのが好きだと本人は気付いていない。あるいは、焦らされている実感がないのか。
     カルナのベルトに手をかけると、彼も荒い息を吐きながらアルジュナのものを外していく。少し動きが覚束ないのは身体に力が入らないからだろう。
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    botomafly

    DONE【ジュナカル】片割れ二つ ひらブーのあれだんだん慣れ親しんできたインターホンを褐色肌の指が押す。部屋主がいることは予め確認済みだが、応答の気配はない。
     寒い冬、日曜日の朝。とあるマンションを訪れていたアルジュナは嘆息してインターホンを睨むともう一度ボタンを押した。インターホンの音が廊下に静かに響く。が、応答はない。毎週この時間にアルジュナが訪ねているのだから家主は気付いているはず。電車に乗ってここまで来るのは距離があるわけではないが夏と冬とくれば楽ではない。相手は客人を待たせるタイプの人間ではないのでトイレで用でも済ませているのだろうか。
     腕を組んで呼吸を十数えたところで上着のポケットに入れていたスマートフォンが音を鳴らした。見れば家主からのメッセージで、鍵は開いてるから入ってくれという内容だった。インターホンの近くにはいないがスマートフォンを触れる環境にはいるようだ。
     しかし。
    「……お邪魔します」
     ドアの先へ踏み込めばキッチンのついた廊下があり、廊下を仕切るドアを潜ればそこにあるのはワンルームだ。あの部屋の広さでインターホンに手が届かないとはどんな状況だ。
     何となく予想がつきつつも鍵を締めて廊下を進む。途中のキ 2216

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