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    mofumofunoBSD

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    太中オンプチ2 展示作品
    テーマ露天風呂です
    よろしくお願いいたします

    #太中
    dazanaka

    薄月夜「中也なに、その恰好」
     先に入ってるぞ、そう声を掛けた中也を見て、太宰が言う。
    「何って、これ、こういうモノなんだろ?ここにあったぞ」
    「ああ、うん。そうだね。そうか」
    「? なんだ?」
    「何でもないよ。私もすぐに入るから。お先にどうぞ」
    「何だよ。気持ち悪ぃな」
     そう言いながらも、中也は顔を引っ込めた。
     太宰はひとり、ほくそ笑む。
    「へぇ……?」



    「何で手前が此処にいる」
     中也の眉間に皺が寄ったのは、ほんの数時間前の事だった。
    久しぶりの休日だった。しかも連休。首領からもゆっくり休めと言われている。秋は深まり、冬の足音が聞こえている。すこし遠出するにはいい季節だ。目的地を決め、地下駐車場の愛車に向かうと、そこには如何にも待ち合わせしていたかのように、青鯖がいた。
    「え?愚問じゃない?犬の散歩に付いていくのは飼い主の当然の義務だと思うのだけれど」
     砂色の外套に手を突っ込みながら、飄々と言ってのける。
    「俺は手前の犬でも何でもねぇ……って、いい加減もう飽きねぇか?この会話」
     『君は僕の犬だろう!』太宰が中也に一番初めにそう宣言したのは十五の時だ。それから七年……いや、もう八年か。太宰は中也に飽きもせず『自分の犬』発言を続け、中也はその度に「俺は手前の犬じゃねぇ」と言い返し続けている。もはやルーティン、出会い頭の挨拶と化しているのではないかと思う程だ。
    中也は呆れつつ、愛車のバックドアを開け荷物を入れる。太宰は、と見ると手ぶらだ。
    「小さい帽子置き場くんはすぐに忘れてしまうから、何度でも思い出させてあげないと、という私の大きな親切心というものだよ」
     太宰はさっさと助手席のドアを開けて車に乗り込む。中也も運転席に座った。
    「そんな親切心は心からお断りなんだよ、糞鯖。手前、荷物は」
     中也の行先を太宰は当然知っている、という前提での会話。太宰は微笑む。両手を上げて見せた。
    「ナイヨ」
    「着の身着のままかよ、バガボンド」
     言いながら、中也はエンジンをかける。しゃあねぇなぁ。途中でコンビニ寄るか。そう思ってしまう自分に、小さく舌打ちをした。


     着いた場所は山奥にある一件の日本家屋だった。近隣には何もない。平屋建てのその建物の門前に車を停めると、中也は鍵を取り出し中に入る。
    「へぇ。こんなとこあったんだ?」
     太宰が物珍し気に訊ねた。
     ポートマフィアには、組織が持つ別荘が全国各地にいくつかある。主に組織要人が一時的に身を隠すためのものだが、空いてさえいれば幹部クラスは自由に使うことができた。管理人が常時使用できる状態にしてある為、食料品も買う必要がない。太宰もポートマフィア時代に利用した事はあったが、この場所は初めてだった。
    「俺が手配した。今日が初だよ」
    「なるほどね。へぇ」
     他の別荘同様、中は綺麗に整えられている。年代物らしく、戸や梁、欄間の造形も手が込んでいて美しい。中でも印象的なのは雪見障子だった。障子には色とりどりの和紙が細やかに使用され、硝子部分は切子になっている。
    「如何にもだ」
     家の中を見回りながら、太宰が満更でも無さそうに言う。
    「お、いいもの揃ってんじゃねぇか」
     台所で冷蔵庫の中を確認して、中也が早速取り出す。調理は自分でやる心算で、食材の調達だけを頼んでおいたのだ。
    「今日は蟹すきがいいな~。うわ、ねぇ中也、露天風呂があるよ!」
     家の奥から、太宰が大声で叫ぶ。
     見てもいないのに何で蟹があるって知ってんだよ。中也は蟹の足を切りつつ呆れた。
     露天風呂。そう。その露天風呂が気に入っての購入だった。和風庭園の中の岩風呂に、常時天然の熱い湯が沸き出している。
     キンと冷えた空気の中で、熱い湯に浸かるのはさぞ気持ちが良いことだろう。
     中也は我知らず笑みを浮かべながら、さっさと夕食を済まそうと、包丁を握る手に力を込めたのだった。


     新鮮な蟹を鍋で存分に味わった後、中也は後片付けをし、お楽しみの露天風呂へと向かった。太宰はその間縁側に出て晩酌をしている。満月が終わり、少し欠けた月が朧な雲に見え隠れしていた。
     風呂は露天と内風呂の二つある。まずは露天に入ろうと脱衣所で服を脱いだ中也は棚に用意されたそれに気付いて広げる。白く薄い生地の浴衣。湯浴み着だ。最近は、露天風呂に入る時にはこういうものを着るところも増えていると聞く。湯上り用の浴衣は別に用意されている。
     さらさらとした肌触りの良い薄い生地のそれを着て、中也は太宰に声をかけてから風呂に入った。
     庭園灯からは橙色の優しい灯りが広がっている。微かな風が周囲の竹林を揺らしていた。立ち上る湯気に逸る気持ちで、中也は軽くかけ湯をしてから足をつけた。
    「~~~っくーーーーっ」
     中也は思わず声を上げる。
     足裏に当たる岩肌のざらりとした感触が心地いい。氷のように冷えた足が爪先からゆっくりと湯の熱さを吸収していく。
    「とけそーーー」
     腹の底から吐息が漏れる。岩に頭を付けて寝そべった。温泉の微かな硫黄の匂いと、周囲の植物が放つ静謐な緑の香りが混じり合って、何とも言えない癒しの空気を生んでいた。
     中也は目を閉じてゆったりと湯が流れる音に耳を澄ます。そこへ、カラリと音がして太宰が入って来た。中也と同じく白い湯着を着て、片手には銚子とお猪口の入った桶を持っていた。
    「お、手前にしちゃ気が利くじゃねぇか」
     中也が起き上がって桶を受け取る。
    「露天風呂で月見酒も、いいものだと思ってね」
     空では真っ白な月が翳んだ雲で見え隠れしている。太宰は中也の横に浸かると、手を伸ばして二人分の猪口に酒を注いだ。一つを中也に手渡し、自分も手に取り口をつけた。
    「はぁ~。外で飲む酒は最高だな。これで相手が手前じゃなかったらもーーっと良かったんだが」
     猪口の中を一息に飲み干した中也が、早くも火照った顔でにっと笑う。
    「蟹と桃缶が好きな誰かかい?中也の近くにそんな人いたっけ?」
     私のほかに。太宰の目が笑っている。
     だから何で見ていないはずなのに、此奴は棚の中にある桃缶の存在を知っているのだろう。中也は太宰を見る。湯気で湿った髪が邪魔だと、太宰は横髪を耳に掛けていた。
    「……何?」
     中也の視線に、太宰が緩やかに問う。濡れた前髪も鬱陶しそうにかきあげた。普段は隠れている太宰の形の良い額が露わになる。
    「………なんでもねぇよ」
     ずっと飲んでいる所為か、それとも風呂の熱さの所為か、太宰の頬もいつもより心なしか上気している。桃色だ。中也はふっと目を逸らすと湯に浮いている桶を引き寄せもう一杯酒を注ぐ。今度も一気に飲み干した。酒精が食道を通り胃の腑をカっと熱くする。
    「はぁ。うめぇ」
     熱い息を吐く。葡萄酒が好きだが、日本酒が嫌いという訳ではない。だが日本酒の方が酔うのは早かった。量は飲めない。しかも湯の中だ。中也はぼんやりと太宰の方に目をやる。
     飲み干したお猪口を桶に戻し、太宰は湯の中で両手両足を伸ばしていた。悔しいが客観的に見て長い手足が、湯の中で白い湯着を揺らめかせている。湯から出た胸元から上が、橙色の明かりに照らされていた。日頃顔にかかっているぼさぼさの蓬髪がすっかり撫であげられて、くっきり整った目鼻立ちがはっきりと見える。涼やかで切れ長の瞳。高い鼻梁。艶やかに朱い薄い唇。各々のパーツも良いが、何よりそのバランスが美しい。灯りと、湯気が、その美しさを更に妖艶にしているようだった。匂い立つ、酷いような艶を滴らせている。
    十五の時から見知っている筈の顔なのに、中也は思わず見惚れる。
     ふ、と上がった視線が絡む。太宰が口元で笑った。
    「……さっきから、何?」
    「……なんでも、ねぇって。……いってんだろ」
     中也は今度も視線を外して俯いた。『手前はほんと、顔だけはいいよな』なんていつもの軽口さえ出て来ない。
    「――酔ったかな」
     ………太宰の、その唇にキスを落としてみたいと思うなんて。
     中也はふるりと首を振る。おかしい。確かに自分と太宰は夜の褥を共にしたりもする仲ではあるが。している時以外に、太宰に接吻したいと思った事なんてない。快感が欲しい、以外の理由でキスするなんて、そんな普通の恋人同士みたいな。そんな付き合いではないはずだ。自分と、太宰は。
     ならどんな付き合いなのかと言われると、中也は黙るしかない。セフレというには距離は近く。恋人というには甘さはない。互いを知り過ぎているのだ。自分と太宰の間に、今更愛だの恋だのいう感情が差し挟まる余地はない。それなのに、躰の欲だけは人一倍ある。
     触れれば興奮するし、触れられればなお高まる。
     太宰の秀麗な顔が、欲望で歪む瞬間が好きだ。この頭のいい男が、生き物の本能のままに、快感に身を委ねて腰を振る。それをさせているのが自分だという悦楽。突かれ身悶え、快楽に堕ちていく自分を見る太宰の視線。愉悦に浸ったその視線すらも、中也の中に得も言われぬ甘美な満足感を与える。堕ちろ、堕ちろ。互いに背中を押し合い、喜悦の沼に沈め合う。
     思い返せば腹の奥が熱く疼き、中心に熱が集まりかける。
     はぁ、と大きく息を吐き、上がろうかと顔を上げた瞬間、中也の腕が引かれて大きな影が被さって来た。
    「………ん」
     音も立てずに湯が揺れる。互いに酒精で火照った舌が絡まり合った。
    「何だよ、突然」
     中也が言う。
    「誘われたと思ったけど、違った?」
     太宰が、唇の先が触れ合う距離で答えた。
    「誘ってたでしょう?視線とそれから……」
     太宰の指先が中也の胸にあてられる。
    「ここ」
     中也は下を見る。白い湯着がぺっとりと自分の肌に張り付いているのが見えた。太宰の指先は、湯着の下からツン、と存在を主張している赤い胸の尖りに触れた。
    「んぁっ……」
     中也が思わず声を出す。
    「さっきからずっと、物欲しそうな目で私の事見ながら、首元まで赤くして、ここをこんな風にして」
     言いながら、太宰は指の先でゆっくりと中也の胸を撫でる。湯の中で、湯着の濡れた布の触感が、中也に焦れたような快感をもたらした。
    「そんなにしたかった?」
    「ちが」
    「違わない。でしょう?」
     はあ、と中也は大きく息を吐く。目を上げれば、太宰の面白がるような瞳が見えた。その中に、自分が先刻感じていたような劣情の昏い光を見つけて、中也は微笑む。
    「欲しいのは手前だろ?」
     湯の中で手を伸ばし、湯着の上から太宰の中心を撫で上げる。そこは緩くたち上がり、布を押し上げていた。中也が触れると、さらに存在を主張してくる。
     唇を、付けては放し、付けて、放す。繰り返したのち、太宰の唇は中也の頬や耳朶に移動する。中也は首を逸らして大きく息を吸った。露天なので、冷えた空気が肺に気持ちいい。
     手はそのまま、太宰自身を刺激し続けた。太宰の手は、中也の胸におかれたままだ。
    「んっ……」
     酔いと、熱さと、快感と。
     太宰が自分の足を中也の足に擦り付けてきた。思わず中也の腰が揺れる。
    「このままここでしてもいいけど、どうする?」
     太宰が熱い息で囁く。太宰の手は下に降り、中也の双丘を柔らかく撫でる。
     中也は首を振った。
    「部屋に行こうぜ……いくら外でも、逆上せちまう」
     目の前には、額を曝した太宰の顔がある。中也は目を眇めてその顔を眺めた。
     太宰がくすりと笑う。
    「いいよ」
     湯の中を滑るように太宰が退き、立ち上がる。中也も立ち上がった。
     濡れた上半身が外気に触れるが、しっかりと温まっているので寒さは感じなかった。
    「ふふ」
     太宰が笑う。
    「何だよ」
    「いや、入ったときから思ってたけど、湯着っていいよね」
    「は?」
    「隠しているようで、返って際立たせてる」
     言われて太宰を見れば、包帯の上からとはいえ、ぴったりと肌に張り付いた白い布が、太宰の躰の線をくっきりと浮かび上がらせている。細くて、綺麗に筋肉ののった均整のとれた躰。
    「莫迦言ってんな」
     またもや見惚れそうになるのを押しとどめて、中也は湯の中をざぶざぶと歩いて部屋の方に向かう。
     背中に、痛いほどの太宰の視線を感じながら。
     自分が太宰を見たように、太宰が自分の躰をどんな風に見ているのかと思うと、いたたまれなくなる。
     互いの躰にじっくりと見入るような、そんな関係じゃなかったはずなのに。
     まるで異世界のような、この空間のせいだろうか。
     深秋の冷えた空気と、緑の匂い、岩から立ち上る湯気と、朧の月。
     開かれてるようで、閉じている。
    「中也」
     立ち止まって月を見上げた中也の腕を、太宰が引いた。顔を寄せられたので、顎を上げてそれに応える。
    「ねぇ、桃缶食べたい。終わった後でいいから」
    「今すぐでもいいぞ」
    「それはやだ。とりあえず一回しよう」
     太宰が中也の腕を引いたまま風呂から上がった。中也も続く。
    「一回で終われよ?」
    「えぇ~いつも終わらせてくれないのは中也の方でしょ」
    「あれは手前が……」

     久しぶりの長い休暇は、始まったばかりだった。


    えみんこっぺさんのとても気持ち良さそうな露天風呂を眺めながら書いたら、
    入浴描写だけでえらい文字数いってしまいました。
    本当に気持ち良さそうなお風呂でしたね!
    お読み頂き誠にありがとうございました。
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