Georgy Porgyピンキー×アステル
ポツリ、ポツリと、地面に落ちた雫がバケツをひっくり返したような豪雨に変わったのは
アステルとピンキーが今晩の宿を見つけるために町に入った直後であった。
「はあ……ちょうど最後の一部屋だったみたいで、ラッキーでしたね」
「ほんとほんと、こんな雨の中で野宿だなんて考えただけでもゾッとしちゃうわ」
宿の廊下を濡らす事を申し訳なく思う程、髪から服からポタポタと水を滴らせる二人は正に”ぬれねずみ”と言う言葉がぴったりだった。
「ちょっとアステル、まだ髪が濡れてるじゃない! こっちに来て!」
服の水気を取ることに手間取って髪から雫を垂らすアステルの頭からバスタオルを被せてピンキーはワシワシと頭を撫でるようにして拭いてやる。
「わ、わ、すみませんピンキーさん!」
「女の子なんだから、体は冷やしちゃ駄目よ……もう少しでお風呂も沸くから早く体を温めなさい」
「ふふ、ありがとうございます」
口を尖らせながらも甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるピンキーに、アステルは思わず顔を綻ばせる。
異性の距離を感じさせないさばけた言動と、細やかな気遣いはスレイヤーと言うよりはむしろ姉のようであり、アステルはその居心地の良さに思わず背中の力を抜いて自分の体をピンキーに預けた。
「あら、随分積極的じゃない」
「すみません……なんだかピンキーさんと一緒にいると、つい甘えたくなっちゃって」
「それってどう言う意味かしら?」
「え、」
するりと、長い腕がアステルの体を包み込むと、手入れの行き届いた白くて長い指が
ツゥっと首筋をなぞり、顎を持ち上げる。
「ねえ、それってアタシがこんな格好だからアンタに手を出さないって信用してるの?
……だったら、残念だけど見込み違いねアステル」
「ひゃッ」
腰を強く抱き寄せられて、高い位置にあるピンキーの顔が近づいたと思うと耳の後ろに息を吹きかけられてアステルは思わず上擦った声を漏らした。
「アタシは、アンタのこと、ずっとこう言う目で見てるから」
まるで肌を撫でられるような、艶のあるその声にアステルの体はビクリと震える。
怯えたようなその様子に、やりすぎたとピンキーが腕を放そうとすると、それより前にアステルの手がピンキーの腕をそっと握った。
「男って単純なんだから、そう言う可愛いことされたら勘違いしちゃうわよ?」
「ち、違います……私、ピンキーさんとならその……」
「ったく……そんな殺し文句、どこで覚えて来たんだか」
「あの、」
アステルが言葉を続けるより前に、開いた口をピンキーの唇が塞ぐ。
ぬるりと侵入する舌に、アステルは体を強張らせる。
「……まずは、お風呂で温まりましょうか、二人でね」
にこりと笑って頬を撫でるピンキーに、アステルは蕩けそうな瞳でこくりと頷いた。
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