第二部 プロローグ 電子の海の中で、「それ」は宛ら藻屑の様だった。
十分な形を形成する事も出来ないまま靄の如く周辺に散らばり、集まる事さえ出来ずに漂い続けていた。
「ュ調・a・絏O碾&a ・Wc・3夾・・ヌ・・・香ワ・e^チ・w・ Ch$碓・蟯rx・・」
時折、意味も成さないそんな言葉を吐きながら。
そんな「何か」に、一人の少女が目を向けていた。憐憫と、憐れみを感じさせる表情をしながらも、それでもそのまま通り過ぎようとした。
眼前の「何か」に対して、なにも出来ない訳ではなかった。ただそれは、他者の協力を得た場合に限った話だ。この少女は、他者に迷惑をかける事を嫌う性分であり、それがまた美徳であった。
しかし、そんな彼女の足を止めたのは––––
「俺って、なに? 俺、は––––」
藻屑と化していた残骸が、文字化けの中で唯一言葉にしたそんな言葉だった。
それは、少女に対する言葉ではなかった。
彼女自身、それはわかっていた。
だからと言って、無視する事はどうしても出来なかった。
あの日、口の中で転がした『ボクは、ボクなんだ』という言葉が、頭の中で重なった。
「あぁ、もう………」
自分でもお人好しだと思う。
「縺ゅ↑縺溘縺繧鯉シ溘九r縺励h縺→縺励※縺上l縺ヲ繧九」
「残骸。今から君を連れていく。もう一度、自分がわかる様にする。少し時間は掛かるけど、そこは我慢してよね」
けれど、動かずにはいられなかった。
動かなければ、必ず後悔すると思った。