愛犬の散歩の帰り道、天気が良かったからいつもより少し遠回りして帰っていると、彼は突然見慣れない路地裏に向かって駆け出した。何か楽しそうなものでも見つけてしまったのか、美味しそうな匂いでもするのか、リードを引く力は制止できないほどに強かったため俺は仕方なくその後に続いた。
陽の光の届かない細い路地はコンクリートの隙間から雑草が生えて石は苔け、寂れた看板や放置されたゴミであまり居心地のいい場所とは言えなかった。彼が何を求めてここへ走ったのか確認するため視線の先を探ると、小さなビニール袋が道の端に転がっている。……いや、あれは。
「ワンッ」
「なるほど、おまえはこの子を見つけたんだな。……まだ生きてる、な。おはようキティ、君を病院に連れて行ってもいいかな」
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