月明りが、死者の席を白く照らした。墓石は整然と立ち並ぶ。見渡す限りに闇が広がっていて、いつかは現人が死の世界への境界線を踏み越えてしまいそうだ。
その静かな世界にぽうっと橙色が浮かび上がった。
石畳に転がる砂利を宇髄天元は踏みつけた。手にはぶら提灯を揺らしている。
空は闇が埋め尽くし、星が点々と輝いている。月もまたそのひとつだ。ただでさえ灰色の石らも月光に照らされると輪郭を薄ぼんやりと浮かび上がらせるだけで、冷たい空気を漂わせている。雑木林が密集する闇にぽっかりと開いたような空間に建てられた墓苑は訪れるひとも少なく、所々草が生い茂っている。あたりを微かに漂う藤の花の香りは一年中、眠る彼らを見守っていた。
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