水面には月と星が煌めいていた。風はそよぎ、髪を撫でつける。青臭い匂いがいっぱいに広がるのは夏が近づいている証拠なのだろう。もうすぐ、隣にいる男がもっとも活発になる季節が始まる。生命が活気に溢れ、賑やかになる時節。久々知兵助は夏が少し憎かった。
池のほとりで兵助と、兵助の想い人である竹谷八左ヱ門は二人水面を眺めてぼんやりと話をしていた。今日あったこと、委員長代理で苦労をしていること、将来やりたいこと。二人で集まると話すことと言えば大体がこういった内容であった。組が違うからこそ情報共有は重要だ、なんてのは建前で一緒にいる間の時間を埋めるのはどうしてもこういった話が多くなってしまう。話下手なのかもしれないと落ち込むことは何度かあったが、今のところ八左ヱ門は楽しそうにしてくれているので救われている。
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