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    Crazy_Osaki

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    Crazy_Osaki

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    深夜のSS練①
    とある昼下がりのネルケ嬢の考えごと

    それは本当にふとした瞬間。
    捲った本のページの端が指の腹を掠めて、その小さな傷から零れ出す赤い血を見たとき。

    そういえば、私は人間なのだろうか、と思った。

    何故そんなことを考えたのか分からない。しかし今思えば、むしろそれまで考えなかったことの方が不自然なようである。なにしろ、物心ついた頃には___どういった経緯で伝えられたかは覚えていないが___私は自らがお母様によって「つくられた」存在であることを知っていたのだから。ただ、それでも私はその瞬間まで当然のように思っていたのだ。私は、ネルケ・エバーハートは、アイリス・エバーハートとアイゼンフート・エバーハートの血をひく「人間」であると。

    「人間」の定義とはなんだろうか。生物学的にヒトであると認められるものが人間か?例えそう仮定したとしても、やはり私は私が人間であると肯定できない。私はれっきとしたヒトのDNAを持っているが、成長速度で言えば恐らくヒトの範疇をいくらか凌駕しているだろう。そもそも、「つくられたもの」は生物と呼べるのか?そうでないとしたら、私は生きていながら生物でない何かだということになってしまう。

    流れた血が指を伝って滴り落ちる。白いブラウスに赤い染みが広がった。私の身体を巡り続ける赤い血。

    一つだけ言えることがある。それは、この身体には確かにお母様とお父様の血が流れていて、それがとても尊いものであるということだ。私が人間でなかったとしても、生物でなかったとしても、私の身体には2人の血が流れている。むしろ人間であることなどより、そちらのほうがよほど誇れる事実ではないか?

    私は束の間の思索から離れ、本に栞を挟んで、傍らを過ぎるメイドに声をかけた。
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    Crazy_Osaki

    TRAINING深夜のSS練①
    とある昼下がりのネルケ嬢の考えごと
    それは本当にふとした瞬間。
    捲った本のページの端が指の腹を掠めて、その小さな傷から零れ出す赤い血を見たとき。

    そういえば、私は人間なのだろうか、と思った。

    何故そんなことを考えたのか分からない。しかし今思えば、むしろそれまで考えなかったことの方が不自然なようである。なにしろ、物心ついた頃には___どういった経緯で伝えられたかは覚えていないが___私は自らがお母様によって「つくられた」存在であることを知っていたのだから。ただ、それでも私はその瞬間まで当然のように思っていたのだ。私は、ネルケ・エバーハートは、アイリス・エバーハートとアイゼンフート・エバーハートの血をひく「人間」であると。

    「人間」の定義とはなんだろうか。生物学的にヒトであると認められるものが人間か?例えそう仮定したとしても、やはり私は私が人間であると肯定できない。私はれっきとしたヒトのDNAを持っているが、成長速度で言えば恐らくヒトの範疇をいくらか凌駕しているだろう。そもそも、「つくられたもの」は生物と呼べるのか?そうでないとしたら、私は生きていながら生物でない何かだということになってしまう。
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