すなおミント(ボツ視点供養)「クチナシさーん、これあげるっス!」
酔っ払っているのか何なのかやけにハイなスカル団の下っ端が、開口一番にそう言うや俺の手にミントを握らせた。
「はぁ? お前これガラル地方の……貴重品じゃねぇの?」
「そうなんスけど、それバトルじゃ使えないすなおミントなんスカら! バトルツリーの人達がいらねぇって捨ててくんス!」
「じゃあ俺に渡すんじゃなくてゴミ箱に捨てろよ……」
スカル団は交番をゴミ箱と勘違いしてんのか? 呆れて突っ返そうとすると下っ端はニヤニヤ笑いながらチッチッチ、と小癪に指を振った。
「それ、人間にも効くんスよ!」
「は?」
「葉っぱを鼻に近付けて、深呼吸みたいにスゥーって吸うと性格変わりまスカら! 人間だと大体半日くらいで効果切れまスけど」
「お前……ポケモンの道具を人間に使うんじゃねぇよ……」
「大丈夫っス! みんなで色々試したけど無害だったスカら!」
若い連中ってのは本当に馬鹿で命知らずだ。だがミントでポケモンに健康被害が出たという報告は聞いていないし、まあ人間が吸っても問題はないだろう。
「すなおミントで上手くいくカップル多いんスよ! 喧嘩中の奴らにちょっと吸わせるとすーぐ仲直りできるっスカら!」
「……」
世の中に無駄なものってねぇんだな、と感心してしまった。
「……あんまりやり過ぎるなよ。あとお前、今ようきミント吸ってんな?」
「へへ、バレました?」
下っ端はヘラヘラ笑いながら肩をすくめた。
昼間のことを思い出して思わず笑ってしまった。
(喧嘩中のカップルに使う、ねぇ)
全く、スカル団のガキ共は可愛いというか何というか。傍で報告書に目を通すハンサムの横顔にちらりと視線を送り、また笑ってしまった。
普段なら時間をかけて散々焦らしたあとにぐちゃぐちゃに犯してようやく一言二言素直になる程度のこいつが、初っ端から素直になる。そう考えると随分いい貰い物をしたかもしれない。
「なぁ、クチナシ……お前、何か今日……妙に機嫌がいいな……?」
「んん? まあな」
ハンサムは何か嫌な予感がしたのか、報告書を机に置いた。