1森の小さなお家(pixiv再掲)むかしむかしあるところにデュースとエースという男の子がいました
二人は恋人で、森の中にある小さなお家に住んでいます。
デュースは力仕事が得意なのできこり
エースは手先が器用なのでデュースが切ってきた木で小物などを作って街へ売りに行って生活をしています。
ある日デュースを仕事へ送り出した後エースが洗濯物を干そうと外に出ると、一羽の真っ白なうさぎが家の前に倒れていました
「うさぎさん、大丈夫!?」
「お腹が減って動けないんだ…」
「それは大変!少し待っていてね」
朝食用に焼いたパンが残っていたので、うさぎに渡しました
「自分で作ったから口に合うかわからないけど、良かったらどうぞ」
「ありがとう、いただきます」
「あ、チェリージャムもあるよ」
「パンもジャムも君が作ったの!?どっちも凄く美味しいよ!親切にしてくれたお礼をさせてね」
うさぎが白いふわふわの毛にふっと息を吹きかけると、なんとエースにもうさぎとお揃いの真っ白な耳と尻尾が生えているではありませんか
「えっ!?オレ、どうしちゃったの!?」
「変身魔法だよ、効果は三日間
うさぎの耳は遠くの音もよく聞こえるし、足は早くてジャンプも得意
じゃあ、うさぎの生活を楽しんで、また会えたら良いね~」
うさぎは説明を終えるとエースが質問をする間もなくビュンッと走っていってしまいました
「なんだったんだろう…三日間で効果は消えるって言ってたし、まぁいいか」
洗濯物を干し終え、夕御飯の支度をしようとした時、身体がなんだかおかしいことに気がつきました
「熱いし、なんだかムズムズする、風邪かなぁ?」
エースは少し眠ることにしました
「ただいま、エースいないのか?」
夕方デュースが帰ってきても部屋の明かりはついていません
するとベッドの布団がモゾモゾと動いたのでめくってみると、うさぎの耳と尻尾が生えたエースが顔を真っ赤にして苦しそうにしています
エースは昼間あったうさぎとの出来事を話しました
「なんか身体熱くて変なの、デュース助けて…」
エースのチェリーレッドの瞳は泣き腫らしていつもに増して赤く、うるうるしています
なんとエースの身体はうさぎの発情期を迎えていたのです
「エース、耳触っても良いか…?」
ここから色々あって、エースにうさぎの耳と尻尾が生えていた三日間、発情期の身体を落ち着かせるようにたっぷりとデュースに愛され
やっと身体が戻ったものの、全身が悲鳴を上げ次は三日間寝込んでしまいました
その間デュース一人で仕事、家事、身の回りの世話などをしてくれたのでエースは申し訳なく思いましたが
手加減出来なかった僕が悪いんだと言って、デュースの方がもっと申し訳なさそうにしていました
それからまた何日かしてようやく普段通りの生活に戻った頃
あの時のうさぎが訪ねてきたのです
「エースくーん!」
「あ、うさぎさん!もう、この間は大変だったんだからね!」
「ごめん、ごめん、少し魔法を失敗しちゃったみたい
今度こそちゃんとお礼をさせてね」
そう言うとうさぎは抱えていたカゴをエースに手渡しました
中にはラズベリーやチェリーなどのフルーツが入っています
「ありがとう、凄く美味しそう!」
「今度美味しいフルーツがある場所を案内するよ!
これでまたパンやジャムを作ってもらえないかな?
帰って森の仲間達に話をしたら皆もエースくんの手作りパンを食べてみたいって!」
「いつも作ってるし構わないけど、オレ達の食事用だから皆に振る舞う程上手じゃないよ」
「凄く美味しかったもん!きっと皆も大喜びさ!」
数日後うさぎとの約束の日
前日の夜からデュースにも手伝ってもらい、色々な種類のパンとジャムを作って準備しました
翌朝エース達が外に出るとうさぎとその仲間のくまやキツネ、鳥、ネズミなど沢山の動物達が家の前に大行列を作っていました
「こんなに沢山集まるなんて!多目に用意しといて良かった」
「皆、順番に渡すからもう少し待っててくれ」
エースとデュースで手分けをして、やっと動物達全員にパンを配りました
「ふぅ~、これで最後」
「エースくん、デュースくん、凄く美味しいよ!」
「今日だけなんてもったいない!お店を開いた方が良い!」
「そうだよ!もっと沢山の人にエースくん達のパンを知ってもらいたい!」
動物達が口々に沢山の感謝と褒め言葉を伝えてくれました
「いやいや、そんなお店だなんて」
「ビビデバビデブー!」
小鳥が呪文を唱えると、エースとデュースの服が可愛らしいパン屋さんのユニフォームに変わりました
「わぁ!凄い!」
「どうなってるんだ!?」
「これは一時的な変身魔法だけど、二人がパン屋さんを開くならちゃんとしたものを皆で作るわ!」
動物達のすすめでエースとデュースは森で小さなパン屋さんを営むことにしました
最初はお客さんが来てくれるか不安でしたが、動物達の評判が街の人達にも伝わり
今では連日大賑わい、中でもチェリーデニッシュとたまごサンドが人気です。
エースがパンを作り、デュースはきこりの仕事で切ってきた薪を窯にくべて火の番をしてくれます
閉店した後もエースはパンの仕込みで大忙し
「なぁ、エース」
「なぁに?デュース」
最近はパン屋さんの他に、森まで来れない人達のために街に薪を売りに行く時にパンも一緒に持っていって移動販売をしています
「最近働き過ぎで疲れてるんじゃないか?少し休んだ方が良い」
デュースはクマが出来てしまったエースの目元を優しく撫でました
白くてピンクがかった綺麗なエースの肌がデュースは大好きで、それがくすんでしまったのが悲しいのです
「疲れてないって言ったら嘘になるけど、これは達成感のある良い疲労感て言うのかな
動物さん達や街の人達がオレ達のパンを嬉しそうに食べてくれる姿を見るのが大好き
それにパン屋を開いてから皆が沢山買いに来てくれるおかげで、前よりもデュースに栄養ある物を食べさせてあげられるようになったのが何より嬉しいんだ!」
「…いつも本当にありがとう、エースの料理はどれも最高に美味しいけど、今も昔もエースの作ってくれるパンが一番好きなんだ
これからはエースばかりに苦労かけないように僕も、もっときこりの仕事を頑張るし、パン屋のことも今より沢山手伝う
一番側でこれからもずっと支え続けたいんだ
だから、僕と結婚してくれませんか?」
エースは驚きで目をぱちくりさせて声が出ません
不安になったデュースが聞きました
「やっぱり…僕じゃダメか…?」
「ダメな訳ない!嬉しいのとびっくりしたので言葉にならなくて…ふつつかものですがよろしくお願いします」
「僕こそよろしくお願いします!」
デュースはエースをぎゅっと力強く抱きしめます
するとどこからかやってきた小鳥達が言いました
「エースくん、デュースくん結婚おめでとう!」
「皆!二人が遂に結婚するぞ!」
「こんなにめでたいことはない!そうと決まれば皆に知らせなくちゃ!」
「も~、小鳥さん達たらいつから聞いてたの?」
「参ったな、恥ずかしい…」
小鳥達の知らせはすぐ森の仲間達に届き
動物達は二人に手作りの結婚式をプレゼントすることに決め、森の奥にある小さな教会を飾り付け
ドレスとタキシードを心を込めて作ってくれました。
「ねぇ、やっぱりオレもタキシードの方が良かったんじゃない?」
「何を言ってるんだいエースくん、凄く似合ってるよ!」
「私達とデュースくんで多数決を取ったら満場一致でエースくんにはウェディングドレスが良いって決まったんだから!」
「エース、凄く綺麗だ」
「デュースも本当にかっこいい」
その時うさぎが言いました
「それじゃあ次は誓いのキスをお願いします!」
「き、キス!?」
二人は恥ずかしそうにやめてくれと言いましたが
動物達からの熱烈なコールが鳴り止みません
デュースがエースのベールをめくり、ちゅっと口づけました
「エースくん、デュースくん、本当に結婚おめでとう!」
動物達の暖かい祝福に包まれて幸せな結婚式となりました
「エース愛してる、こんな可愛い奥さんをもらえるなんて僕は世界一幸せ者だ」
「オレも愛してるよ、今凄く幸せ」
二人は森の動物達と一緒に、いつまでもいつまでも仲良く幸せに暮らしましたとさ
めでたし、めでたし