「高熱で動けなくておもらししちゃう話」またエースが体調を崩した、39℃を越える高熱が続き、校医が解熱剤を処方してくれたので現在は様子を見ている
熱が下がるまで絶対安静学校もしばらく休み
一人では立ち上がることもままならないので、僕にも看病する為の特別休暇が許可されたが迷惑をかけたくないとエースが付き添いを強く断ったので、後ろ髪を引かれる思いで学校へ向かう
「いってくるな、何かあったら連絡してくれ」
昨日から声を出すこともほとんど出来なくなってしまい、エースは潤んだ瞳で頷いた
毎回のことだけど本当に辛い、熱で全身が痛いし、まとまった時間眠れない、話すのも動くのも難しくて、ご飯もほとんど食べられない
後何日続くんだろうと考えただけで涙が出る
本当はデュースに一緒にいてほしい、許可は出ているけど、申し訳なさが勝ってしまって素直に言えなかった
朝デュースを見送ってから一睡も出来ていない、眠れたら多少は楽なのにそれも叶わず、時間ばかりが経ち、高熱とは違う下腹部の痛みがチクチクと主張してくる
数時間前からずっと尿意を我慢している、最後に行ったのはデュースが登校前に連れて行ってくれたので、朝8時頃、現在はお昼の12時を回ろうとしている
普段睡眠時はトイレに起きることはないが、昼間学校に行っている時はこんなに長い時間トイレに行かないことはあまり無い
デュースは何かあったら連絡してと言っていたが、まさかトイレに連れて行ってほしいなんて理由で呼び出すことは出来ない
体に動け、動けと信号を送るがピクリともせず、指先を動かす動作すらも出来なくて、スマホも握れるか怪しい
そんな時昼休みであろうデュースから着信が入った、なんとかスワイプして出たまでは良かったが、体の辛さと朝から何も飲んでいなかったせいで声が出ない
「エース、大丈夫か?」
「あっ…う」
恥を忍んでトイレに連れて行ってほしいと頼みたいのに話そうとしても空気ばかりで言葉にならない
「話せないんだよな、今そっち向かうから」
デュースの言葉に安心し、何を勘違いしたのか膀胱が緩んでしまう
【お腹痛い、おしっこしたい、もう我慢出来ない、デュース早く来て
あっ!?やっ、何で?出る、出ちゃう、やだ、ヤダ!漏らしたくない!】
今回も安心したくてデュースのベッドを借りているので、このままでは汚してしまう、それだけは避けたくて体を起こそうと何度も体に力を入れるが、そのせいで腹部が圧迫され、遂にエースの膀胱は決壊した
「うっ!?うーっ!」
電話越しのエースが声にならない叫びを上げる
「大丈夫か!?もう少しで着くからな!」
一人でトイレに行くことが難しいので、飲み物を一度も飲んでいないせいで喉はヒリヒリして余計に声が出せなかった、水分を摂っていなかったのに、長時間溜めていた尿はじゃあじゃあと溢れ出し量も多く、中々止まらない、高熱で熱い体よりも更に熱い尿が早く出たがって、下腹部の辺りをぐるぐるしている感覚、なんとか止めたくても力の入らない両手では何の効果も持たない、頑張りも虚しく、全部出しきると放心状態になり泣き出してしまった
トイレに間に合わなかったのだから今更デュースに来てもらっても意味がない、せめて一人で片付けたい、こんな情けない姿見せられない、でも相変わらず言葉を発することが出来ず、わんわんと泣くしか出来なかった
しばらくしてデュースが部屋に着くとエースはベッドに潜り顔を見せようとしない、必死に布団を握る姿を見るに、何かあるのだろうとデュースは察した
「エース、苦しいだろ、大丈夫だから出ておいで」
エースは泣きながら必死に声を絞り出す
「ひぐっ、ぐすっ、ごめ…なさい、デュ、スのベッドに…おし、っこ…うぅ、漏らしちゃった、トイレ行け…なかった」
「体辛くて動けなかったんだよな、一人で我慢してえらかったな」
「ごめ…なさ…い、ごめん、な…さい」
トイレに間に合わなかった羞恥心と高熱でパニックを起こしたエースは泣きながらごめんなさいと繰り返し、過呼吸になってしまった
「はぁっ、はぁっ、ひゅっ」
「気にしなくて良い、エースは何も悪くない」
「やっ…汚いから、自分で…片付け…なきゃ」
無理矢理ベッドから降りるとバランスを崩し床に倒れ込んでしまう
「ごめ、なさ…はっ、うっ…」
「もう謝らなくて良いよ、水飲んで落ち着こう?」
デュースはベッド脇にあるペットボトルを見ると全く減っていないことに気がついた
恐らくトイレに行けないので飲まなかったんだろう、このままでは脱水状態を起こしてしまう
「ひっ、水は…飲んじゃダメ、また、おし…こ漏らしちゃう…やだぁ!」
ペットボトルを口元に寄せてやるとエースは拒否して、また漏らしてしまうと怖がった
「僕が側に着いてるから大丈夫だ、お願いだから、少しで良いから飲んでほしい、このままじゃエースの体が危ないんだ」
デュースの説得で何とか数口水を飲ませることが出来た
「ちゃんと飲めてえらいぞ、もう大丈夫、着替えようか」
エースは何も言わず、デュースにされるがままだった、体をキレイに拭かれ、ベッドは清掃魔法で元通りになってもエースの心は傷ついたままだった
体調のせいで声を出すのが辛いのもあるが、子どもの様に粗相をして世話をされているのが情けなくて何も言えなかった
「…デュース」
「無理に話さなくて良いよ、さっきも言ったが、エースは悪くない、体調のせいなんだ」
「ふ、うっ、うぅ」
デュースはエースの涙を拭いて優しく頭を撫でながら寝かしつけた
「まだ熱が下がらないから明日は僕も学校を休む
僕がエースの側にいたいんだ」
「ありが…とう」
デュースの言葉に安心しエースは眠りについた