「『プライマスの意思』と言っていたな…彼は。」
「そもそもプライマスなら…っ!?いでぇ!」
テンがスワーブを嗜める様に軽くはたく。優しさでいくばか力加減はされている様だったが痛いものは痛い。スワーブが文句を言ってやろうと口を開いたのを手で遮り、ラングがぽつりと呟く。
「何はともあれ、まず情報を集めるのが先です。技術チームの皆さんには早く起きてもらわねば…」
「そんな流暢なことしてる暇あるのかよ!!!もう連れ去られてどれだけ時間が経ってるのかわかってるのか!?!」
「……闇雲に探すのが一体どれ程愚かな行為なのかわかっていない様だな。それともその身をもって試してみるか、スキッズよ。」
「仲間割れはやめてよぉ…」
誰にでも気さくなスキッズの焦り切った様子にあのメガトロンが苛立ちを隠せずにいる。その横で右往左往しているテイルゲートは震えながら自分の拳を強く握りしめていた。今にもロストライトから飛び出しそうな自分自身をここに繋ぎ止めているかの様だった。
「あ?じゃあなんだ。ただ待つだけでその情報とやらが出てくんのかよ。こうしてる間に俺らの、この船の、もう1人の船長がどうなってもいいってことかよ!!」
「そう言うことではないわ!!!」
激昂したホワールが今にもメガトロンに掴み掛かりそうになった時………落下音がした。
メディカルベイが一気に静かになる、いや静かにならざるおえなかった。
先程までロディマスと呻き続けていたドリフト声すら止まっている。
見たくない、否、圧迫感のある威圧で見れないのだが、見ないとこちらの命はないという確信が、一行をオイルが足りていないネジの様に硬く首を回した。
矢張りと言うべきか、落下音がしたリチャージスラブのベットの下、銀色に鈍く輝く誰かのパーツ。そのすぐ横に立っている白い足を目線で辿るとその部品を落としたであろう張本人、ラチェットが工具一式片手にこちらを見ていた。フェイスパーツは口角が上がり、にこやかな笑顔を作っているのだが、目が笑っていない。
「随分良く回る口だな、重症患者供。」
「情報を集めるにしても、あの若造を探すにしても、若造のドッペルゲンガーを倒すにしても、傷一つ治せない様な奴らに何が出来ると言うんだね。」
まるで小さな子供に諭すかのように優しい口調だが、聞いている者達の顔は恐怖で引き攣っている。機械生命体の筈が背中が粟立つ、ひんやりとした冷却水がたらりとながれ…
「そんな早く動きたいのなら、お望み通りやってやるさ。」
逃げ出そうとした者たちの数歩手前で無常にも、メディカルベイの部屋の扉にロックが掛かった音がした。視界の横でファーストエイドが地球でいう所の十字を切っている。
「治療(リペア)を始める。」