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    松降1106二時間勝負に参加させていただいたものです。
    お題:「秘密」「家」「ネクタイ」
    おそらく全部入っているかなと思います。
    生存ifでそしかい後に同棲しているというゆるっと設定の雰囲気文です。

     長年追いかけていた組織が壊滅し後始末などが落ち着いてきた頃、くっついて離れてを繰り返してきた松田から、一緒に住まないかという誘いがあった。勢いに圧倒され流されるままに部屋が決まり、今に至る。
     突然始まった同棲生活だが、お互いに多忙ですれ違うことも少なくはない。扉を開けると自分のものではない靴が玄関にあるということに初めこそくすぐったさを感じていたが、それももう慣れるくらいには時間が流れていた。
     松田は割と決まった時間に出勤のため、時間が合うときには朝食を一緒に摂っている。これまでは作りすぎてしまった試作を自分で食べるか部下の風見に差し入れするかしかできなかったが、今では松田が全て残さず食べてくれている。あまりに美味しそうに食べてくれるので、嬉しくなってつい作りすぎてしまう日も少なくない。一人で作って食べる食事と味付けは変わらないはずなのに、松田と一緒だとどこか温かい味がするから不思議だ。

     朝食を終え本日は時間に余裕のある降谷がお皿を洗っていると、カッターシャツのボタンを上まで止めずにネクタイをぶら下げジャケットを手に持った、だらしない格好をした松田がリビングに戻ってきた。

    「零〜ネクタイやって〜」
    「ったく、今日もか?僕がいない日はちゃんと自分でやっているんだろう?」
    「んーでも零がやった方が綺麗だし」

     ん、と降谷の前に立つので、仕方ないなぁと濡れた手を拭いて襟に回っただけのネクタイを手に取る。自分のネクタイもほぼ毎日結んでいるし、これももう朝のお決まりになったため手慣れたものだ。だからといって手早く済ませてしまうのはなんだか惜しくて、その時間が宝物だとでもいうようにひとつひとつの工程を丁寧に仕上げていく。最後にキュッとネクタイを締めて今日も完璧だなと降谷は満足そうに微笑む。松田も結び終わったネクタイを見てサンキュと告げ歯を見せて笑った。

    「今日も街の平和を頼むぞ、刑事さん」
    「ったく、もう刑事じゃないっての」

     からかった仕返しだとでもいうように降谷の髪をぐしゃぐしゃと撫でる。やめろと言いつつその顔は嬉しそうなのでしばらくじゃれ合いを続けた。
     ふと目に入ったネクタイを見て降谷の顔が綻ぶ。松田のネクタイを結んでやれるのは自分だけの特権だと思うとにやけを抑えることができない。松田が警視庁で密かに女性に人気があるのは耳に入ってくる。何人の女性が松田のネクタイを結ぶことを夢見ているだろうか。松田の恋人は僕だと声を上げることはできないが、自分の結んだネクタイをその女性たちが目にするのだと考えるだけで優越感を感じずにはいられないのだ。

     少々長引いてしまったじゃれ合いを終え、降谷に見送られて松田は部屋を出る。扉が閉まったことを確認すると、松田はプッと吹き出した。

    「かわい~奴」

     一見、松田が駄々をこねて降谷が世話を焼いているように見えるが、実は降谷が喜ぶからわがままを言う振りをしているというのは降谷には秘密の話。




    fin.


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