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    長谷高
    かんちゃんが長谷高を目撃するお話

    ※大学時代から付き合ってた2人
    ※全て幻覚で捏造
    ※なんでも許せる方向け

    #長谷高

    *



     野辺山天文台での事件から一週間経ち、ようやく仕事が落ち着き早く帰る目処がたったため、仕事終わりに高明の病院へ見舞いに行くことにした。
     急な入院で足りない物も多いだろうから、『なにか必要なものあるか?』と連絡したら、『持ってきていただいたので大丈夫です』と返事が来た。親戚の人でも来てくれたのだろうか?と思ったが、特段気にせず了解とだけ返事をする。
     由衣も一緒にどうかと思い誘ってみたが、今日はどうしても外せない用事があるとかで、残念がっていた。『これお見舞いに渡して』と、どう見ても自分用の夜食にでも買ったのだろうというお菓子を受け取り、タクシーに乗り込んだ。

     病院に着くと、平日ということもあり人はまばらで、早々に受付を済ませて高明の病室に向かい、扉を3度叩いた。相手は良く知る男なわけだし、ノックなしに入っても良いんじゃないかとは思うが、後からチクチク言われる姿が目に浮かぶため、大人しく返事を待つことにする。
     しかしいつまでも返事はなくもう一度ノックするが、中から高明の声は聞こえてこない。

    (寝てんのか……?)

     それならば見舞いの品だけ置いて帰ろうと思い、高明入るぞ、と心の中で呟き静かに扉を開ける。音を立てないように杖をつき中に入ると、目に飛び込んできた光景に思考が停止した。

     きちっとしたスーツを着た体格の良い男の背中。その向こうに見えるのは、目を瞑った高明だ。2人の手は重なり、男は少し前のめり気味で、これは恐らく……

     やばい、と思って引き返そうとすると、由衣から渡されたビニール袋がカサッと音を立てた。小さな音に気付いた高明が目を開き俺がいることに気付くと、相手の肩を叩き顔を離し、相手に何かを告げる。相手は弾かれたように高明から離れると、こちらを振り向き罰が悪そうな顔をした。
     俺はというと、その人物が自分の知っている男だったことに心底驚いている。彼は確か、先日の事件で東都から調査に来たと言っていた…名前は確か長谷部といったはず………

    「ちょっと高明くん!今日は誰も来ないって言ってたじゃん」
    「そう思っていたのですが、違ったようですね」
    「絶対知ってたでしょ」
    「さぁ、どうでしょう」

     遠慮のない親しげなやり取りが目の前で繰り広げられているが、俺はまだ状況を飲み込めないでいる。長谷部さんは俺を見ると視線を泳がせて、パイプ椅子の横に置いてあった鞄を手に取り立ち上がった。

    「あー……じゃあ大和警部も来たことだし、俺帰るね」
    「えぇ、ありがとうございます」
    「うん、じゃあまた来るね」

     そう言って高明の方に手を伸ばしたが、俺を気にしてかサッと手を引っこめてしまった。

    「では、大和警部、失礼いたします」
    「え、あ、ああ……」

     長谷部さんが部屋を出てもなお状況を把握できずに立ち尽くしている俺に、こちらに来ないんですか?などと高明が呑気に声をかけてくる。

    「あーおぉ……あ、これ由衣から。見舞いだと」
    「おや、ありがとうございます。後でお礼を言っておきますね」

     出しっぱなしにされているパイプ椅子は先ほどまであの人が座っていたもので、自分が座っても良いのかとなぜか一瞬迷ってしまう。しかしパイプ椅子なんかで悩むのも変な話だなと思い、気にしてない素振りをしてそこに腰掛けた。
     高明のベッドのそばには大きめの鞄が置いてあり、それはいつも荷物が多い日に高明が使っている物だった。中身の着替え類も新品ではなく使い古された物が入っていて、高明の部屋から持ってきた物だとわかる。

    「あの人…長谷部さん?あの人がお前の着替えとか持ってきてくれたのか?知り合いなのか?」
    「知り合い……そうですね」
    「その…なんだ……そういう関係なのか?」
    「えぇ、まぁ……」
    「言えよ!」
    「事件でそれどころではなかったでしょう」
    「いや、それはそうなんだが…。いつからの付き合いなんだ?まさかこの前出会ってこの短い期間でとか言わねぇよな…?」
    「大学時代に出会いましたので、それからですね」
    「そんなに前からか!?聞いてねぇよ!」
    「聞かれておりませんので」

     高明にそういう相手がいたことにも驚いたが、付き合いがそれだけ長いことにも驚きを隠せない。俺は別行動が多かったため関わることはなかったが、自分の記憶に残る長谷部という人物はあまりにも強烈で……

    「あの人、大丈夫か……?」
    「……と、言いますと?」
    「いや、なんつーの…高飛車っていうか傲慢っていうか…上から目線な人じゃなかったか?お前、虐げられたりとかしてねぇか?」

     友人の恋愛に関してあれこれ口を出すつもりはないが、相手が悪い奴なのでは?と思ったら気にはなる。それは相手が男だからとかではなく、女であっても高明が傷付いてないかと心配にもなる。
     内調の人間だと言っていたし、先程高明といたときの姿は自分の知る長谷部さんとは別人ではあるのだが、どうにもあの検事の長谷部ですと言っていた姿が忘れられない。事件を解決するのに必死で彼を気にしていなかったというのもあり、人物像が最初のまま止まってしまっている。強引に捜査に入り込み、偉そうな態度で指揮を執る、俺の中ではそういう男なのだが……


    「……ふっ」

     考えを巡らせていると、高明が突然吹き出し、肩を震わせて笑っている。俺はそんなに変なことを言ったか…?

    「大丈夫ですよ。あれは捜査のためで、普段はあんな人ではありませんので」
    「そうなのか?」
    「えぇ、きちんと私を大事にしてくださる方ですよ」
    「……ちゃんと、良い人なのか?」
    「えぇ。こんなにも長い間私を甘やかしてくれる、とても良い人です」
    「……そうか…ならいいわ」

     お前がそう言うならそうなんだろ、なんて、訳のわからない返答をする。

    「ふふっ、なんだか娘を持つ父親みたいですね。まぁあなたのような強面な父親、相手が驚くので勘弁していただきたいですが」
    「俺だってお前の父親とかごめんだけどな。でもまぁお前にも頼れる相手がいたってわかって、安心したよ。お前、いつもどこか危なっかしいからな」
    「それをあなたに言われたくありませんが……ですが、いつも心配してくださっているのは、感謝していますよ。ありがとうございます」

     子どもの頃からの付き合いだが、こんなふうに優しく穏やな笑みを浮かべる高明を見るのは初めてで、相手と良い関係を築けているのだなというのが見て取れる。あまり自分のことを話さず内に秘める高明だが、あの人には自分のことを曝け出すことができているのだろうか。
     そう思うと嬉しい半面、昔から高明を知っている身としては少しだけ寂しいと思わないこともない。絶対にこいつには言わないが。

    「まぁなんだ、恋愛相談なんかには乗ってやれないが、何かあったら言えよ。話聞くくらいはしてやるからよ」
    「そうですね、そういう方面あなたは鈍感ですから…」
    「あ?」
    「いえ、なんでも。頼りにしております」



    *



     東都の自宅に着き、身の回りのことを片付ける。事件の後も仕事で何度か長野に足を運んでいたが、自由な時間を取る暇はなく、本日ようやく有給を取り高明くんに会いに行くことができた。まだ傷も治っておらず入院しているものの、最後に見たときよりも顔色が良くなった高明くんを見て安堵した。
     だから気が緩んでいたのか、いつ誰が来て誰に見られるかわからないからと拒んだにも関わらず、今日は誰も来ないからと唆され堪らずキスしたのを、まさか大和警部に見られるとは……
     居た堪れずそそくさと出てきてしまったが、あの後2人にしても大丈夫だったのだろうかと今になって心配になる。

     幼い頃から知る友人のそういうところなんて見たくなかっただろうし、相手が男だなんて変なふうに思われてはいないだろうか…。自分はどう思われても良いが、自分と付き合っていることで彼が軽蔑されて2人の仲が拗れてしまうなんてことになったらと思うと、落ち着いていられない。
     どうしても気になってしまい、『都合が良いときに電話ちょうだい』と連絡を入れると、暫くして着信が入った。

    「もしもし、高明くん?」
    『えぇ、長谷部さん、今日は来てくださってありがとうございました。もうご自宅ですか?』
    「うん、少し前に着いたよ」
    『どうかされましたか?忘れ物でもありました?』
    「いや、そういうわけではなくて……ちょっと聞きたいことがあって」
    『聞きたいこと、ですか?』
    「………あの後、大和警部は大丈夫だった?」
    『あぁ、あの人は大丈夫かと言われました』
    「え!?」
    『傲慢そうな人だったけど大丈夫か、と。長谷部さん、迫真の演技でしたからね。ふふっ』
    「ちょっと、ちゃんとフォロー入れてくれたんだよね?」
    『さぁ、どうでしょう』
    「ねぇ、大和警部を敵に回すとか嫌だよ!?勘弁してよ」

     電話の向こうの高明くんが楽しそうに笑っていて、それは大いに結構だけど、大和警部に睨まれるのは遠慮願いたい。なんせ子どもの頃から高明くんのことを知っていて、今高明くんの1番近い場所にいる人なんだから……。もし大和警部が俺を良く思わないとなれば、これからの高明くんとの付き合いすら危うくなるのでは…という怖さもある。敢助くんに拒絶されたので別れます、なんて言いかねない。

    『ふふっ、大丈夫ですよ。驚いてはいましたが、男同士だから咎められるなんてことは全く』
    「そっか、良かった…」
    『えぇ、話したらわかってくださいました。ですが、私は元々そういう心配はしていませんでしたよ。あんな見た目ですが、人情に厚くて、案外優しいんです』

     電話越しでもわかる優しい声色に、あぁ今大和警部のことを考えているんだな、なんて胸がざわつく。

    「彼のこと、良くわかってるんだね」
    『それは、まぁ……長い付き合いですので』

     2人の仲が拗れてしまったらなんて思っていたのに、今では2人の関係に黒い感情が渦巻く。
     そもそも、今回入院しているのだってその『敢助くん』を庇ったからだし、少し前に異動になったのも大和警部絡みだし、とにかく高明くんの行動は大和警部に関連するものが多い。
     高明くんに先に出会ったのも大和警部で、先に仲良くなったのも大和警部で……わかってはいたけど、高明くんの中で彼はとても大きな存在なんだろうな……
     高明くんが1番に優先するのは大和警部なのだとこれまでの付き合いで理解はしていたつもりだけど、実際大和警部に会って、あんなに無茶をする高明くんを目の当たりにして、勝ち目がないなぁと悟ってしまい、気持ちが落ち込んでしまう。もちろん、2人の関係は恋愛とかそういうものではないのだけれど……

    『長谷部さん?』
    「なぁに?」
    『嫉妬しますか?』
    「……しないよ。俺は器が大きい人間だからね」
    『僕はあなたにそんな人がいたら、嫉妬しますけどね』
    「……え?」
    『それでは、また』
    「え、ちょっと待っ…」

     聞き間違いかと問い返そうとしたが、既に通話は切られてしまい、画面には通話終了の文字が広がる。
     もう付き合いも長く落ち着いてきて、付き合い始めのような初々しさはなくなって久しい。それでも、たまにこうして突拍子もないことを言ってくるから、いつまで経っても俺は高明くんに振り回され続けている。だからこそ飽きないし、好きだなぁ、可愛いなぁ、なんて思うわけだが……

     とりあえず、次に会ったら力一杯抱き締めよう、なんて、思った。





    fin.


    ここまで読んでくださってありがとうございました。
    かんちゃん視点もりくお視点も難しい…



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    usmlk_ii

    MOURNING長谷高
    長野で再会した2人のお話
    ※長谷高が同じ大学の先輩後輩
    ※大学時代と現在
    ※まだ付き合ってない
    ※映画のネタバレ含みます
    ※捏造しかありません

    少しでも楽しんでいただけると幸いです。
    手を繋ぐから始めませんか?*


     長谷部陸夫が諸伏高明と初めて出会ったのは、東都大学のキャンパス内にある図書館だった。人がまばらな時間帯に訪れたそこで、彼を見つけた。

     窓から光が差し込む端の席で、背筋を伸ばし静かに本を読む凛とした姿に、目を奪われた。
     彼の周りだけ輝いていて、時が止まっているのではと錯覚してしまいそうなほど美しく、まるで絵画のようだった。他を寄せつけないその様が、絵になって綺麗だと思った…

     中性的な顔立ちに透き通るような白い肌、綺麗な黒髪と長身だけど線の細い身体。儚げで、触れると消えてしまいそう、それが諸伏高明に抱いた最初の印象だった。

     彼に興味を持った長谷部は、すぐに声をかけた。突然初対面の男に話しかけられ、最初は不審に思われ避けられていたが、毎日彼を探し繰り返し声をかけるうちに、徐々に心を開いて様々なことを話してくれるようになった。彼のことを「高明くん」と呼べば、いきなり下の名前で呼ぶのかと怪訝な顔をされたことを覚えている。
    5854

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