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    有吉ヒナコ

    @arihina_2go

    MHRise/20↑/ウツハン♂・ハンウツ・他ハン♂受け/基本小説たまに絵/

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    有吉ヒナコ

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    ウナハン習作。二人の始まりのお話。

     はじめにあったのは、強い対抗心だった。
     英雄なんて言われてるが、見れば俺とそう歳も変わらない。エルガドでの生活が長い自分が劣る道理は、どこにもないと。
     けれど向こうは瞬く間に実績を積み上げていき、重要なクエストも次々と任されるようになって、小さなクエストしか任されないオレの事など軽く追い抜いていき。
     正直、悔しかった。実力なら、オレだって負けてるはずないのに。英雄という肩書きがついている、ただそれだけで。
     だから、オレは——。


    「オレと勝負してくれ!」
    「え?」

     オレがそう言うと、ソイツは、カムラの里の『猛き炎』は目を丸くした。

    「何だよ、急に」
    「君は確かに、カムラの里を救ったかもしれない。でも、だからって、オレが君に劣ってるなんてどうしても納得出来ない」
    「……確かにそうだな。アンタの言う通りだ」

     意外にも、『猛き炎』はすんなりとオレの意見に賛同した。その素直な反応に、オレの方が思わず怯んでしまう。
     ……解ってる。エルガドのみんなから、コイツが偉ぶってるみたいな評判なんて聞いた事がないって事。
     それでも、オレもオレのしてきた事の誇りに賭けて、何もせずにコイツを認めるなんてしたくないんだ。

    「で、どうするんだ? 一緒のクエストに行くのか?」
    「いや、君には俺と同じモンスターの、でも別々のクエストを受けてもらう。で、先に狩猟を完了させてエルガドに戻って報告した方が勝ち。……どうだい?」
    「なるほどな。……いいぜ、乗った」

     オレの提案に、『猛き炎』は不敵に笑って頷いた。その余裕たっぷりの仕草が、更にオレの反骨心を煽る。

    「……そうやって笑ってられるのも今のうちだぜ。オレだって君に少しも劣ってなんかないんだって事を、この手で証明してみせる!」
    「俺も負けるつもりはねえ。……勝敗が決まるのが楽しみだ」

     そう言った『猛き炎』は、何故だか……とても楽しそうに見えた。


     勝負は、結果から言ってしまえばオレの完敗だった。
     相手に選んだのはお互い狩り慣れてるアオアシラだったのだが、勝敗を気にする余りオレはいつものようには動けず。それどころか、一度力尽きまでして。
     当然、やっとの事でオレが狩猟を終えて戻ってきた時には、『猛き炎』はとっくに狩猟を済ませて茶を啜っていたのだった。


    「……ハァ……」

     その夜。俺は茶屋で、一人ヤケ酒を飲んでいた。
     みっともないにも程がある。あれだけイキって勝負を挑んで、いい勝負に持ち込む事すら出来なかった。
     こんなの、口だけの若造だ何だとバカにされても仕方ない。満足な結果一つ、オレは残す事が出来なかったんだから。

    「……隣、いいか?」
    「!!」

     その時、背後から声がかかった。……出来れば今一番、聞きたくなかった声。

    「……ダメだって言ったら」
    「勝手に座る」
    「オレに聞く意味あった? ソレ」

     思わず口を突いて出た嫌味も軽く受け流し、ソイツ——『猛き炎』はオレの隣の席に着く。今日負けたばかりの相手がすぐ隣にいるその状況がいたたまれなくて、オレはさっさと席を立とうとする。

    「待てよ」

     けれどそんなオレの手を、『猛き炎』は掴んで引き止めた。止めてくれ。これ以上、オレを惨めにさせないでくれ。

    「……ありがとな」
    「……え?」

     思考が、動きが止まった。告げられた言葉が、あまりにも予想外すぎて。

    「初めてだったんだ、俺。同じくらいの歳のハンターと、何かを競うの。……里にいたハンターはみんな先輩で、年上だったから」
    「……そうなのか?」
    「ああ。で、こっち来たらこっち来たで方々で里を救った英雄扱い。……だから、嬉しかったよ。アンタだけが、俺を対等な存在として扱ってくれた」

     そう少し嬉しそうにする表情に、翳りはなく。本心からそう言っているのだと、嫌でも伝わった。

    「今日、納得いく狩りじゃなかったんだろ?」
    「!!」

     続いた言葉に、肩が震える。何で、どうして、その事を——。

    「……何で」
    「帰ってきた時のアンタの顔見てたら、何となく解った。……なら、今日の勝負は、本当の勝ちなんて言えねえ」

     そう言うと、『猛き炎』は笑った。それはきっと『猛き炎』の、初めて目にする素直な笑顔だった。

    「だから、またやろうぜ。アンタの実力、まだまだこんなもんじゃねえだろ?」
    「——っ!!」

     目の奥から、熱いものが込み上げてきた。だって、だってそうだろ?
     どこに行っても若造だと侮られて。流れ着いたここでも、満足な成果を残せなくて。

     ——そんなオレの価値を、会って間もないコイツだけが信じてくれるだなんて。

    「っ!? お、俺、何か悪い事言ったか!?」

     こらえきれずに泣き出したオレに、『猛き炎』はすっかり慌てふためいた様子になった。それが普段の無愛想な様子からはミスマッチに見えて、何だかおかしくなってきてしまう。

    「……っ、なあ! そう言えば俺、君の名前ちゃんと知らなかった!」
    「お、俺か? ……サクヤ、だけど」
    「そっか、サクヤ。なあ、サクヤ——」

     ——ありがとう。

     そう伝えた時の『猛き炎』の、いやサクヤの照れて戸惑った顔は、きっと一生忘れる事はないと思う。


     以来、サクヤへのわだかまりはキレイサッパリなくなった。ハンターとしての腕前以上に、あれだけ人間としての器の違いを見せつけられたら、もう認めるしかない。
     けどオレも、諦めた訳じゃない。今は届かなくても、いつか、サクヤに並ぶくらいのハンターになる。
     その時は——。

    (……ん? その時はって、何だ?)

     胸に芽生えた、友情とも尊敬とも違う新たな感情の名前を、今のオレはまだ知らない。
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