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    minami373juju

    @minami373juju

    七海建人推しの20↑です。
    七夢、灰七、五七、七猪、七虎など、いろんなCPを楽しんでいます。左右も特にこだわりはないです。地雷もとくになし。

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    minami373juju

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    寛七のリクをいただいて書いた作品です。
    両想いからの同棲スタート時期の初々しい二人💛

    #日車寛見
    japaneseCarKanzumi
    #七海建人
    sevenSeasBuilders
    #寛七
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    不器用な男「うわっ、これ見てくださいよ!」
    パラリーガルの清水が、日車と日車の元上司である高木に女性雑誌の特集記事を向けてくる。


    【口下手男は昭和まで】


    「食事中、奥さんに『美味しい?』って聞かれて『ああ』だけって、なんなんですかね。絶対無理!あと、なにこれ?結婚して以来、奥さんに『好き』とか『愛している』とか言わなくなる男。釣った魚には餌をやらないってやつですか?」

    日車は耳が痛かった。七海と同棲を始めたのは2週間前。同棲もなんとなく始まったという感じで、日車は七海に何一つ気持ちを伝えられていない。

    食事も『お口に合いましたか』と尋ねる七海に、先ほどの雑誌の男のように『ああ』としか答えていない。思い当たる節がありすぎて、背中に汗が流れる。日車の心中なんて何も知らない清水の軽快なトークは続く。

    「こういう男は最後捨てられるのがオチですよね。ほんと、いつの時代だよって感じ。高木さんもそう思いません?」
    「んー、まあ仕事ではよくしゃべるのに、家に帰ると寡黙な男は多いだろうね。でも、ここまで会話が少ないのはなー。」
    「ですよね!日車さんも気を付けた方がいいですよ!」

    日車は心の中を読まれたのかと一瞬ドキリとした。日車の気持ちなんて知りもしない二人は、雑誌を読み進めながら、楽しそうに話を続けるのだった。



    日車はかなり焦っていた。どの文献を見れば『口に合ったか』と聞かれたときの正解を導き出せるのか。

    そもそも『同棲しよう』とも言ってない。日車たちの同棲は、日車があまりにも自分自身に無頓着なことを気にした七海が『身の回りのことを手伝わせてほしい』と、半ば押しかけ女房のように日車の家に来たことから始まった。これは同棲というよりお世話という方が正しいのもしれない。

    だとすれば、七海にいつか捨てられてしまうのかと日車の頭の中は混乱していた。


    今日に限って急ぎの案件はひとつもなく、早い時間に家に帰ってしまった。日車がただいまとドアを開ければ、非番だった七海がおかえりなさいと笑顔で出迎えてくれた。スーツの上着をかけ、ネクタイをほどきながら、日車は必至でシュミレーションをしていた。

    『お口に合いますか』の模範解答はなんだ、『好き』というタイミングはいつだ。そもそも十も年の離れた俺から、好きだの愛してるだの言われて七海は嬉しいのか。

    日車は難しい裁判にむけての調査の方がよほど易しいように思えてきた。ほどいたネクタイを両手で持って唸る日車に気づいた七海が声をかける。

    「どうしましたか?日車さん。」
    「え?あ、いや…」
    「もう夕食ができますから、着替えたら食べましょう。」

    何か言わなくてはと思ったが、結局何も出てこない。
    食卓につくと、目の前には美味しそうな料理が並んでいる。初めて七海の手料理を食べた日、日車は直感的に『綺麗だ』と思った。料理の色どりも、盛り付けも美しく、食べたいと思うものばかりだった。日車はこの記憶から答えにたどり着くことができた。

    「日車さん、今日はお仕事大変でしたか?」
    「キレイダ!」

    突然日車が大声で、しかも質問の答えになっていない返事をしたものだから、七海は驚いた。


    「考え事をされていたんですね。失礼しました。」

    日車は慌てた。このままでは七海に呆れられてしまう。しかし何かを伝えたい気持ちの大きさと日車の語彙力との関係は反比例している。
    何か言いたそうな日車に気づいた七海は、日車の手をそっと取った。


    「大丈夫ですよ。私はここにいますから。」
    「…っ…んん…。あの…その…七海のご飯はいつも美味しい。」

    一生懸命言葉を選んで伝えようとする不器用な日車を見て、七海は愛おしいと感じた。

    「ありがとうございます。日車さんの気持ち、いつも伝わっていますよ。」
    「伝わっている…のか?俺は君に何も伝えられていないのに…。」
    「どうしたんですか、急に。」
    「俺の部下が、ちゃんと気持ちを伝えられないのはダメだと話していたんだ。」


    ああ、それで日車の様子がおかしかったのかと七海は理解した。そして、七海は今度は日車の頬をそっと包んだ。

    「日車さんの気持ち、全部伝わっていますよ。美味しいという顔、嬉しそうな顔、悲しそうな顔、ちょっと怒った顔…見ていればわかります。だから心配そうな目をしないでください。」
    「俺は何を考えているかわからないとよく言われる。」
    「ほかの方にはわからないのかもしれないですね。もしくは…私にだけ見せているということかもしれません。どちらにしても、気分がいいですね。」

    日車は七海の言葉に救われたような気持ちになった。


    食事が終わると、日車が食器を運び、それを七海が洗った。あとは拭くだけ、となったときに、日車が後ろから七海をそっと抱きしめた。

    「俺は表情もわかりにくいし、しゃべりも苦手だ。……ただ、君を愛している。…これだけは今も…これからも変わらない。」

    七海は日車の方を向き、唇を重ねた。

    「これまで言葉なんて特に必要だと思ったことはありませんでしたが、貴方からの愛しているはこれからも聞きたい。…少しわがままですね。」
    「いや、これからもしてほしいことは言ってほしい。遠慮はしないでくれ。」
    「では、これから貴方を私にくれませんか。」
    「ああ、喜んで。」

    七海となら、きっと大丈夫。日車はそう思いながら、七海に熱い口づけを送るのだった。
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