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    CPP 修正済校正未

    第9話「賑やかな休日」「んー…いま何時…?ていうか頭いった…」
    重たい瞼を開け時計を見ると針は午前11時を指していた。カーテンの隙間から差し込む光が眩しい。
    (きのういつ寝たんだっけ)
    覚醒しきっていない頭で昨晩の記憶を辿る。わかめだにとって久々の連休。連日の労働で我慢していたアルコールを解禁し、浴びるように呑んだ結果、ほとんど気絶のような状態でベッドにダイブしたことを思い出す。
    (のみすぎた、さいあく)
    ズキズキと頭に響く痛みから逃げるため再び眠りにつこうと目を瞑った瞬間、リビングから聞き慣れた2つの声がする事に気づき、慌ててベッドを飛び降り寝室のドアを勢いよく開ける。そこには緑と黒を基調とした落ち着いた雰囲気の部屋に置かれたダイニングテーブルに向かい合って座り、談笑する2人の友人の姿があった。

    「おっ!やっと起きたな!おはよ〜わかめだ〜!」
    「あ、わかちゃん。おはよう」
    わかめだの姿を見て、飲み友達でありプリキュアとして共に戦う仲間であるなしな、そしてわかめだがプリキュアになってでも守りたいと願った大切な友人である時石 夕露(ときいし ゆうろ)が笑顔で寝ぼけ眼のわかめだに挨拶をする。
    「…おはよ。ゆーちゃんはともかくなんでなしなまでいんのよ」
    「なによう、その言い方〜!暇だったから来ちゃった!そしたら噂の"ゆーちゃん"と会えて超ラッキー!」
    拗ねたように口を尖らせた後バチンとウインクをしてウザったい笑顔を浮かべるなしなにわかめだは盛大な溜め息を吐く。その様子を困ったような笑顔で見ていたユーロは「よしっ」と呟くと席を立つ。

    「わかちゃんも起きてきたし、私お昼ご飯作ってきますね!わかちゃんにとっては朝ごはん?になっちゃうけど」
    「わあ〜い!!!」
    小さな子供のようにはしゃぐなしなの大きな声にわかめだは顔を顰めて頭を抑える。
    「なしなうるさい、あんたの声二日酔いの頭に響くのよ…」
    「あ、そうだ、それで思い出した」

    わかめだのその言葉にユーロは足元に置いていた袋を取るとわかめだの目の前に掲げニコリと微笑む。袋にたんまりと入った空き缶とユーロの顔に浮かべられた笑顔にほんの少し混じった怒りにわかめだがピタリと硬直する。
    「わかちゃんまたこんなにお酒飲んだの?」
    「あっ」
    「しかも片付けずに寝たの?」
    「えっと、」
    「飲み過ぎはダメって前も言ったよね?」
    「す、すみません...」
    笑顔で怒りを露わにするユーロとまるで母親に怒られる子供のように萎縮するわかめだ

    (心なしか双葉もしょんぼりしてる気がする)
    わかめだのトレードマーク、いつもぴょこんと跳ねている双葉のような触角もしおしおと枯れた草のように元気がない、ように見える。
    (面白いもん見れちゃったな〜)
    普段見ることの出来ない友人の姿になしなは笑いを堪えながらスマホをそっと構えシャッターを切った。

    ーーーー

    「ユーロさん、完全にわかめだのお母さんだね。いつもやってもらってるの?」
    キッチンに立ち手際よく調理するユーロの後ろ姿を眺めながらなしながわかめだに話しかける。
    「ゆーちゃんのお店が休みの時だけね。あとさ気になってたんだけど、なんでなしながゆーちゃんのこと知ってるの?」
    「なんでも何もいつも自分で喋ってるでしょ」
    「そんな記憶ないんだけど」
    「酔ったらいつも"ゆーちゃん"の話ばっかりしてるよ、覚えてないの?」
    なしなの問いにわかめだは答えることは無く「嘘でしょ…」と自分の失態を悔やむように言葉を漏らす。
    「会わせて〜って言ってもワタシには絶対会わせない!って聞かないしさ〜、だから今日ユーロさんに会えた時すっごいテンション上がっちゃった!ユーロさんステキな人だね〜!」
    ニコニコと楽しげに笑うなしなの肩にわかめだは腕を回し顔を寄せる。
    (いい?一応言っとくけどゆーちゃんの前ではぜっっったいプリキュアの話しないでよね!)
    (わかってるよ〜それくらい)

    「わかちゃん、なしなさん何コソコソ話してるの?ご飯の準備できたよー」
    「「はーい!」」
    「あれ?なんか量多くない?」
    不思議そうに首を傾げるわかめだの言う通り食卓には3人分とは思えない量の食事が並べられていた。すると「ピーンポーン」という軽快な音が来客を知らせる。
    「あ!来た来た!わかめだ座ってていーよ!」
    「は?ここ私の家なんだけど?!」
    わかめだの反論を聞かないままパタパタと玄関に駆けていくなしなに諦めのため息を吐きユーロの配膳の手伝いをする。
    「なしなに変な事されてない?」
    「普通にお話してだけだよ。なしなさん、なんていうか、こう、すごく賑やかな人だね!」
    「あのバカの相手いちいちしなくていいからね。ていうかゆーちゃんなんでこんなに沢山作ったの?」
    「なしなさんが他にもお友達呼ぶって言ってたから、ってあれ?わかちゃん知らないの?」

    「え?」

    「迷わずこれた?」
    「うん!くるっぽーちゃんと、それにフガもいたから!」
    「岩波方向音痴にも程があるネ。オマエよく1人で地球に来れたナ」

    ユーロの発言と同時に玄関から聞こえる賑やかな声にわかめだは皿を配る手を止め、玄関にダッシュする。そこにはセレナーデと共ポ、そしてセレナーデの腕に抱かれたポコとフガの姿があった。
    「は?!ちょっ、はぁ?!」
    「あ、おはよ〜!わかめちゃん!」
    「わかねだ、そんなに慌ててどうしたアルか」
    (ちょっと!なしな!なんでセレナーデと共ポまで連れてきてんのよ?!それにポコとフガまで!!)
    (だいじょーぶだいじょーぶ!ポコとフガにはぬいぐるみのフリしといてもらうから!)
    なしながポコとフガにバチんとウインクをすると妖精達はそれに応えるように目をパチパチと瞬きさせ、わかめだは本日2回目の大きなため息をついた。

    ーーーー

    「胃が痛い...」
    食事中何度か口を滑らせそうになったなしなと共ポを必死に誤魔化し、セレナーデに至っては誤魔化しきれず少し変わった子なのだとユーロを納得させ、部屋に漂う美味しい匂いに我慢ができずモゾモゾと動く妖精達に睨みを効かせ、正直食事どころではなかった。
    「わかちゃん大丈夫?食べ過ぎちゃった?」
    「酒の飲み過ぎでしょ〜」
    「…あんたはお気楽でいいわね」
    そんなわかめだの心労などお構い無しに呑気に目の前の食事を頬張り続けるなしなにツッコむ気すら起きず、雑誌を読むセレナーデと共ポジの元へと歩いていく。
    「これもわかめちゃんが編集したの〜?」
    「そうだよ」
    「へえ〜!!わかめちゃんカッコイイ!ねっ!くるっぽーちゃん!」
    セレナーデが宝石のような綺麗な瞳をキラキラと輝かせながらわかめだに向け、共ポジもセレナーデの言葉に賛同するように小さく頷く。わかめだは二人の素直な反応に笑顔を浮かべると、「ありがと」と少し照れくさそうに感謝を伝える。

    「わかちゃん、楽しそうでよかった。心配なんです。わかちゃんすっごく頑張り屋さんだからいつも無理してるんじゃないかって。」
    その様子を静かに見ていたユーロは小さな声でそう言うと前に座るなしなの顔を見、眉を下げ言葉を続ける。
    「私からこんなこと言うのもおかしなことかもしれませんがわかちゃんのことよろしくお願いします」
    「任せてください!わかめだが暗い気持ちになる暇もないくらいワタシ達が笑顔にしてみせます!だからユーロさん。これからもわかめだのお世話よろしくお願いします!」
    「…!はいっ!」
    目を合わせてお互い小さく笑い、どちらからともなく差し出した手で握手を交わした。


    (クレソン達がお喋りしてる今がチャンスフガ!)
    (ポコ!ゆっくりゆっくり慎重に行くポコ!)

    数分後、ユーロが「なんかあのぬいぐるみ動いてない?」と食卓に向かってモゾモゾと動く妖精達を指し、寿命が縮む思いをする事になるなどこの時のわかめだは知る由もなかった。
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