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    @t_utumiiiii

    @t_utumiiiii

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    ※謎時空探偵パロ(1990年代を想定)Mr.ミステリーが男やもめのレオ・ベイカーの依頼を受けて失踪した娘の行方を探す二次妄想です(還…パロ)

    リサ一歳の誕生日パーティーの頃の話です

    🕯 その日々は未だ、レオの頭の中に残っていた。その記憶を手に取るように思い出し、愛おしむように撫でることができなくなってしまっても、薪をくべ続けた暖炉の下に灰の積もるように、彼の頭の中には、確かに、その日々は残っていて、決して彼方へ消え去ったと言う訳ではない。

     リサが生まれた冬の日。その日は雪が降っていて、道路が酷く混んでいた。彼は速度の超過も構わず病院の地下に乗りつけ、エレベーターを待つ時間ももどかしく階段を駆け上がって、その間に力んでいた手の平でつい、病室の白い引き戸を、そのまま軋んで外れかねない程の勢いで開け放って、本当ならば一時間前には辿り着いていた筈の、その病室に飛び込んだ。
     その時、レオの目に移ったのは、衛生的な印象のある薄青の病衣に身を包み、病床に座って、心なしかやつれたようにほっそりとした愛しい妻。そして、彼女の胸元に横抱きにされている、ピンクの布に包まれた赤ん坊だった。
    「████」
     彼はまず、愛しい妻の名前を呼んだ。男ならアーサー、女ならリサ。元より赤子の名前を決めてはいたが、その時はまだ、妻の名前の方が遥かに呼び慣れていた。
    「リサよ」
     ベッドの回りを天蓋のように覆っている、白いカーテンが良く似合う妻――彼女は白がよく似合った。曇りのない白――が、轟音と言って差し支えない程の入室音を物ともせずに眠り続けている赤ん坊に気を遣ってか、囁くように微笑んで言った。


     一年後のその日も雪が降っていて、彼の車は渋滞に巻き込まれた。
     リサにとって生まれて初めての誕生日パーティーの飾りつけがすっかり済んだ家に戻ると、彼の妻は卓上に楚々とした雰囲気のある白い花を生けながら「おかえりなさい」と微笑んだ。
     パーティーに招待されていた彼のビジネスパートナーであり、良き友人でもある男は既に席に着いており、「そろそろだと思ったよ」と、日頃ビジネスマンとして完璧な立ち回りをする分、かえって親しみを感じさせる白々しい素っ気なさで言った。

    「パパ一年目ね、お疲れ様」
     工具油の染みたシャツを着替えてきたところで、彼の妻は小さな箱を取り出してきて、リビングに戻ってきたところのレオに手渡した。中身は新品のジッポライターだ。眩い銀色に思わず目を細める。その無骨な佇まいと確かな実用性は、職人肌のレオが好むところだった。
    「ありがとう」
     レオは意外だ、という気分を隠さず、しかし心からの気持ちでそう言う。
    「それにしても、その、意外だな……君にしては、」
     彼の妻は可愛らしく、そして何より女性らしい、優しい心持ちの人だった。繊細で夢見がちなその気立てはレオを惹き付けるとともに、時折彼を困惑させる代物でもあったが、この贈り物は彼女の心配りの産物というには、少々無骨である。聞けば選定にあたって、彼の友人にも助言を仰いだらしい。
    「それならお前も使いやすいだろう、汚れることもない。お前はすぐ汚すから……」
     この場にも招かれている彼の友人――フレディは、そう言ってやや斜に構えた笑い方をした後、「俺は横から口を挟んだだけさ、選んだのは彼女だよ」と、よそよそしい程に折り目正しい発音で、きっぱりとそう続けていた。

    「火を付けましょうか」
     彼はその時に初めて、そのジッポライターを使い、蝋燭に火を灯した。それ以来、リサが誕生日を迎える度、バースデーケーキの蝋燭に火を灯すのはレオのジッポライターの役目であった(し、そうあり続けるはずだった。)。
     子供用のダイニングチェアに座らされている一歳のリサは、ケーキどころか、今日のために準備された祝いの食事を口にする年齢でもないのに、卓を囲む大人の方ががはしゃいで買ったホールケーキ(ケーキを食べられる年でもない子供にわざわざケーキを買う行為にレオは若干辟易したが、彼の妻が言うには、こうしたお祝い事は重要なのだという。――当時のレオは、その判断に従った。「家のこと」は妻に従うべきだろうし、頭のいい彼の友人も、「祝い事は重要だろう」というマーシャの意見に賛同したからだ。)に刺さった一本の蝋燭を、促されるままにふぅと吹き消し、何が何だかわからないだろうに、楽し気にきゃらきゃらと笑った。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE公共マップ泥庭

    ※日記のないキャラクターの言動を背景推理等から捏造
    ※捏造荘園設定
    一曲分(泥庭) 大勢の招待客(サバイバー)を招待し、顔も見せずに長らく荘園に閉じ込めている張本人であるのだが、その荘園主の計らいとして時折門戸を開く公共マップと言う場所は、所謂試合のためのマップを流用した娯楽用のマップであり、そのマップの中にもハンターは現れるが、それらと遭遇したところで、普段の試合のように、氷でできた手で心臓をきつく握られるような不愉快な緊張が走ることもないし、向こうは向こうで、例のような攻撃を加えてくることはない。
     日々試合の再現と荘園との往復ばかりで、およそ気晴らしらしいものに飢えているサバイバーは、思い思いにそのマップを利用していた――期間中頻繁に繰り出して、支度されている様々な娯楽を熱狂的に楽しむものもいれば、電飾で彩られたそれを一頻り見回してから、もう十分とそれきり全く足を運ばないものもいる。荘園に囚われたサバイバーの一人であるピアソンは、公共マップの利用に伴うタスク報酬と、そこで提供される無料の飲食を目当てに時折足を運ぶ程度だった。無論気が向けば、そのマップで提供される他の娯楽に興じることもあったが、公共マップ内に設けられた大きな目玉の一つであるダンスホールに、彼が敢えて足を踏み入れることは殆どなかった。当然二人一組になって踊る社交ダンスのエリアは、二人一組でなければ立ち入ることもできないからである。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE※日記のないキャラクターの言動を背景推理等から捏造
    ※捏造荘園設定

    マーサが香水使ってたらエブリンさん超怒りそう みたいな
    嫌いなもの:全ての香水の匂い(広義のウィラマサでエブマサ) チェス盤から逃れることを望んだ駒であった彼女は、空を飛び立つことを夢見た鷹の姿に身を包んでこの荘園を訪れ、その結果、煉獄のようなこの荘園に囚われることとなった。そこにあったのは、天国というにはあまりに苦痛が多く、しかし地獄というにはどうにも生ぬるい生活の繰り返しである。命を懸けた試合の末に絶命しようとも、次の瞬間には、荘園に用意された、自分の部屋の中に戻される――繰り返される試合の再現、訪れ続ける招待客(サバイバー)、未だに姿を見せない荘園主、荘園主からの通知を時折伝えに来る仮面の〝女〟(ナイチンゲールと名乗る〝それ〟は、一見して、特に上半身は女性の形を取ってはいるものの、鳥籠を模したスカートの骨組みの下には猛禽類の脚があり、常に嘴の付いた仮面で顔を隠している。招待客の殆どは、彼女のそれを「悪趣味な仮装」だと思って真剣に見ていなかったが、彼女には、それがメイクの類等ではないことがわかっていた。)――彼女はその内に、現状について生真面目に考えることを止め、考え方を変えることにした。考えてみれば、この荘園に囚われていることで、少なくとも、あのチェス盤の上から逃げおおせることには成功している。
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    @t_utumiiiii

    DOODLEクリスマスシーズンだけど寮に残ってる傭兵とオフェンスの象牙衣装学パロ二次妄想ですが、デモリー学院イベントの設定に準じたものではないです。
    the Holdover's Party(傭兵とオフェンス ※学パロ) 冬休み期間を迎えた学園構内は火が消えたように静かで、小鳥が枝から飛び立つ時のささやかな羽ばたきが、窓の外からその木が見える寮の自室で、所持品の整理をしている――大事に持っている小刀で、丁寧に鉛筆を削って揃えていた。彼はあまり真面目に授業に出る性質ではなく、これらの尖った鉛筆はもっぱら、不良生徒に絡まれた時の飛び道具として活用される――ナワーブの耳にも、はっきりと聞こえてくる程だった。この時期になると、クリスマスや年越しの期間を家族と過ごすために、ほとんどの生徒が各々荷物をまとめて、学園から引き払う。普段は外泊のために届け出が必要な寮も、逆に「寮に残るための申請」を提出する必要がある。
     それほどまでに人数が減り、時に耳鳴りがするほど静まり返っている構内に対して、ナワーブはこれといった感慨を持たなかった――「帝国版図を広く視野に入れた学生を育成するため」というお題目から、毎年ごく少数入学を許可される「保護国からの留学生」である彼には、故郷に戻るための軍資金がなかった。それはナワーブにとっての悲劇でも何でもない。ありふれた事実としての貧乏である。それに、この時期にありがちな孤独というのも、彼にとっては大した問題でもなかった。毎年彼の先輩や、或いは優秀であった同輩、後輩といった留学生が、ここの“風潮”に押し潰され、ある時は素行の悪い生徒に搾取されるなどして、ひとり一人、廃人のようにされて戻されてくる様を目の当たりにしていた彼は、自分が「留学生」の枠としてこの学園に送り込まれることを知ったとき、ここでの「学友」と一定の距離を置くことを、戒律として己に課していたからだ。あらゆる人付き合いをフードを被ってやり過ごしていた彼にとって、学園での孤独はすっかり慣れっこだった。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE象牙衣装泥庭二人とも怪我してるみたいで可愛いね🎶という趣旨の象牙衣装学パロ二次妄想(デモリー学院イベントの設定ではない)です
    可哀想な人(泥庭医 ※学パロ) 施設育ちのピアソンが、少なくとも両親の揃った中流階級以上の生徒が多いその学園に入学することになった経緯は、ある種“お恵み”のようなものであった。
     そこには施設へ多額の寄付したとある富豪の意向があり、また、学園側にもその富豪の意向と、「生徒たちの社会学習と寛容さを養う機会として」(露悪的な言い方になるが、要はひとつの「社会的な教材」として)という題目があり、かくして国内でも有数の貧困問題地区に位置するバイシャストリートの孤児院から、何人かの孤児の身柄を「特別給費生」として学園に預けることになったのだ。
     当然、そこには選抜が必須であり、学園側からの要求は「幼児教育の場ではない」のでつまりはハイティーン、少なくとも10代の、ある程度は文章を読み書きできるもの(学園には「アルファベットから教える余裕はない」のだ)であり、その時点で相当対象者が絞れてしまった――自活できる年齢になると、設備の悪い孤児院に子供がわざわざ留まる理由もない。彼らは勝手に出ていくか、そうでなければ大人に目をつけられ、誘惑ないしだまし討ちのようにして屋根の下から連れ出されるものだ。あとに残るのは自分の下の世話もおぼつかないウスノロか、自分の名前のスペルだけようやっと覚えた子供ばかり――兎も角、そういうわけでそもそも数少ない対象者の中で、学園側が課した小論文試験を通ったものの内の一人がピアソンだった。
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    recommended works

    @t_utumiiiii

    DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(2).「お肉」(傭オフェ)
    ※あんまり気持ちよくない描写
    (傭オフェ) ウィリアム・ウェッブ・エリスは、同じく試合の招待客であるナワーブと共に、荘園の屋敷で試合開始の案内を待っていた。
     ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
     果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。
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