アバズレビッチ「カイザーが入院?」
ノアがその話しを聞いたのは偶然だった。こくりと相槌を打つネスは悲壮感を漂わせていて嘘をついているようには見えない。顔には疲れを滲ませて目元にはうっすらと隈が出来ている。唇も荒れていて前に見た時よりも随分とやつれているようだった。
こうしてノアとネスが顔を合わせたのは特に約束をしていたわけではなく、お互いにクラブハウスに別々の用事があり鉢合わせただけだった。クラブハウス内にある会議室近くのベンチでネスが暗い顔をしている所をノアが見つけて今に至る。
「このあいだ、、、僕達試合で負けたじゃないですか。それ以来カイザーが帰って来なくって、、」
ネスが語るには、先週行われた試合の後、「実家に帰る」と告げたカイザーがいつまで経っても練習に現れずに心配していたところ、今日になって病院に運び込まれたと連絡が入ったそうだ。同室であったネスはチームの運営陣に頼まれてカイザーの荷物をまとめて来たらしかった。
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