付き合ってないけど周りにはそうだと思われているnakiモブ視点
ミュンヘンの街には魚の噴水という定番の待ち合わせ場所がある。
日曜日ということもあり、ごった返している広場の噴水には幾人もの人が立って待ち合わせ相手を待っていた。
「ん……?」
ベンチに座ってその噴水の周辺に立っている人々をふと眺めていたら、特徴的な青が見えた気がして目を凝らす。
まてまて、そんなはずはない。
自分を嗜めるかのように言い聞かせていたそれは、その人物を確かに視認した瞬間に手のひらを返した。
そんなはずがあったのだから。
黒のキャップに黒のマスク、紺のパーカーのフードで首元を隠したその男。
特徴的な髪型をキャップで隠していようとも、華やかな顔立ちをマスクで覆っていようとも。大衆に晒されたその雰囲気は彼を彼だと確信するには十分だった。
1797